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【部下を推す話】[31] Trick or Treat? -Part.B & C-

10月31日。ハロウィン当日。
わたしはいつもより少し早めに出勤していた。

可愛い可愛い部下BとCへのハロウィン準備の為だ。

先に行ったAへのハロウィンは仕事終わりに行った結果、Aを引き止める形になってしまった。
推しの帰宅を妨げた上に、余韻も楽しめなかった。非常によろしくない。
そんな訳で、朝イチからのTrick or Treatに切り替えた次第である。
その為に早く出勤したの?と思われそうだが、きっとわたしをよく知る人たちからは「ああ、間違いない。ねこのならやる」と言われると確信している。
わたしはイベントも仕事も趣味も基本的に全力投球なのだ。

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部下BとCが出勤する前にお菓子のボックスを用意する。そして、頃合いを見計らってもふもふパーカーを装着した。Cの前で猫パーカーはネタバレしてしまっているので、今回はパンダだ。
昨年も着ていたパンダパーカーはもふもふで暖かい。一枚着ているだけで防寒になる。
…とは言っても、屋外に着ていくのは流石のわたしも躊躇う。下手したら不審者として通報されかねない。どれだけ推し可愛さに狂っていても、そこはまだ一線を保っているつもりだ。
よくよく考えれば、会社で着用している時点で若干手遅れな気もするが、屋内なのでセーフだと思っている。

「あーっ、ねこのさんがパンダ着てるー!」

出勤してきた同フロア・別職種のお姉様がニコニコと叫んだ。好意的な叫びだけで済むのだから、弊社の職員は非常に優しい。

「ハロウィンなので。」

とフードまですっぽり被ってみせたところで、部下BとCも出勤してきた。

「おはよう! Happy Halloween♪」

BとCに声を掛け、ラスクのハロウィンパッケージを渡す。

「ねこのさん! パンダ! 可愛い!!」
「わたし、ねこのさんが用意してるの知ってたのに、こんなのしか持ってないー!」

オレンジ色の小箱を受け取ったBとCがそれぞれ叫び、キャンディを差し出してきた。

─可愛いのは君たちだし、推したちからそれぞれキャンディいただけるとか、幸せ以外の何物でも無いです。

ほわほわと和やかな空気が漂う。朝からこんなに幸せな気分で良いのだろうか。
BもCも可愛い。本当に可愛い。


それにしても。

─Aのときはそこはかとなくハロウィンにかこつけたカツアゲ感が出てしまったのに、こんなに雰囲気が違うのは何故なのだろうか。

Aには「Trick or treat?」って言いながら渡したからだろうか。もしかして…あの時も今回のように「Happy Halloween♪」と言っていたら、また違ったのだろうか。

─面白かったからまぁ良いか。

パンダパーカーを脱ぎながら、わたしは途中で考えるのを辞めた。
Aが聞いたら盛大に拗ねそうなので、本人には絶対に言えない感想だ。

「ところで、Aさんのハロウィンはどうだったんですか?」

目をキラキラさせるBに、Aのハロウィンの様子を話して聞かせる。
話を聞いたBは「流石のAさんも、上長のハロウィンには逆らえなかったんですね」と笑って言った。



尚、3人がラスクを喜んでくれたのかを心の底から心配していたのだが、ひょんなことからそれぞれの手に渡ったラスクの運命が判明したので記載しておく。


Cは渡したその日の昼休憩後に

「ねこのさんから貰ったの、開けたら好きなの入ってたのー! ホワイトチョコ掛かってるやつ! 早速食べちゃった、美味しかったー!」

と言ってくれた。─んんんん可愛いなぁもう!


Bは、後日Aも混じえた会話の中で

「わたしまだ食べてないです。可愛いし勿体無くて。ラスクだからまだ大丈夫ですよね?」

とニコニコと言ってきた。─大事にしてくれてる感が可愛い。ずっと推す。


そして。当日の反応および後から甘いものをあまり食べない疑惑が生じたが故に、一番心配していたAは。
Bのラスクの生存が判明したのと同じ会話の中でこう言った。

「ねこのさんからいただいたラスク、速攻で全ていただきました。」

─ああああああああ!

可愛さの極地過ぎて最早言葉も出ない。
あんなに、眉間に皺を寄せながら「何かぇかなぁ」と言っていたというのに。
そこからのこの台詞は狡過ぎる。
あまりに高度なツンデレに、どうして良いのかわからなくなってしまった。


贈ったラスク以上に幸せな気分をいただいてしまった。
本当にどうしてくれようか。3人ともずっと推すしかあるまい。

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