『漂流老人ホームレス社会』 森川すいめい
一番残った一文 ・ しかし、身体が悪い人が、腹がぱんぱんに膨れ上がった女性が、ぼろぼろになった高齢者が、「福祉事務所に行ってもね、追い返されるだけだから」と言って、死んだ。
Mさん激推しの精神科医の方が書かれた本、ということでオススメして頂いて…。
とても整った文章を書く方だな、というのが第一印象です。小説でいう美文とも違う整い方、数式的な?
簡潔で清潔で、端的に事実を述べる文章、その中に著者の隠れ熱血気質が見え隠れする。(Mさんがこの著者の方を激推ししているの、とても理由がわかる気がしました。芯が強くて、他者を見る眼差しが中々独特な方ですよね…)
「相手の話を良く聞く」という対話において至極当たり前のことが、(例えば病人だったり、ホームレスの方であったりと)特定の属性の相手の前になると途端にできなくなる。支援や医療に携わる場であっても、そんな当たり前のことができる人の少なさ…。文章から伝わる著者のもどかしさ、やりきれなさ。
それでも、制度や社会からも、良識的な人々の目線からも摺り抜けてしまう人々と、こうして一対一で接することができる人がいるということ。それだけで大きな救いになる人は沢山いるんだろうと感じました。理想としてはそういうあり方の人がもっと多いと救いも増えるわけですが、世の中そう簡単にもいかず…。
著者の方、途上国を旅するのがお好きだとのことですが、オマケみたいに描かれていた旅のエピソードも中々凄い…。人との接し方の独特さによって、稀有な経験を多く手に入れる。アンダードッグにいやに肩入れ共感しがちな性質…とも、はじめは見えたのですが、違うんですよね、誰に対しても同じように接している、そんな当たり前のことを、考えるまでもなくできている。良くも悪くも社会的な偏見が身についていない。
こういう人、時々いるよな…。としみじみしました。私は大好きな性質の一つです。レアキャラなんですけど、出会って沼ると人生変わりがち…。こういう人にアレルギー反応持つ人もたまにいますよね………。
この本を手に取る前に、Mさんから森川先生のお人柄の話をたくさん聞いていて、それがとても腑に落ちました。
本の感想よりも、Mさん宛ての森川先生の解釈が多めな文章になりました笑 すみません…。