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ブランド戦略をデザインに落とし込む
デザインだけではブランディングにはならない
ブランディングとは、商品・サービス・企業の価値を整理し、ターゲットの心理を理解した上でビジネス上の理想の認知を獲得するための戦略をつくり、それに沿った戦術を実行していく活動です。デザインはブランド戦術の重要な要素ですが、デザインしただけでブランディングをしたことにはなりません。
企業のロゴや会社案内、商品案内のパンフレットを作ることで「ブランディングしました」とうたってるデザイン会社が結構あります。ホームページを見ると、この商品のブランディングをやりました、という記事はありますが、どんな戦略を立てたかを説明しているものは、ほぼありません。
コンセプトは戦略とは違います。コンセプトは通常のデザイナーなら、誰でも考えることです。コンセプトを立ててデザインを起こすのは、デザイン業務の一環であり、ブランディングではありません。デザインコンセプトを立ててデザインを行い、これをブランディングしたと勘違いして「売り上げが上がらない」と言っている企業が結構多いのです。
テレビに出るような著名なデザイナーは、独自の方法論で戦略に近いものを出しつつ、デザインに昇華させています。それはコンセプトワークというよりも、戦略策定に近いものだと考えます。ただ、そんな著名なデザイナーの手掛けた商品でも、テレビ放映時点から数年すると、市場からはほぼ消えているのが現実です。NHKのプロフェッショナルなどのアーカイブを見るとよくわかります。戦略が曖昧だからです。
例えば商品のパンフレットを作る前に商品の特性やUSP(Unique Selling Proposition:独自の売りの提案)、開発背景、理想のターゲット像、利用シーン、利用後の満足感、スペックなどをクライアントから情報をもらい作成に入ります。そして、どのように見せて、どのキャッチコピーをつけて売るのか、クリエイティブを考えます。しかし、これはブランディングとはいえません。デザインに必要な要素をまとめただけです。
戦略とデザインの関係
デザインはブランディングの重要な手段の一つであり、デザインがブランドの多くの課題を解決してくれることもあります。しかし、デザインだけでは不十分です。商品や企業の情報をきれいに視覚化するだけではビジネスは前進しません。効果的なブランディングは、戦略的思考とクリエイティブを融合させることで生まれます。
戦略先行の重要性
多くの企業は、ネーミング、ロゴ、ウェブサイトのデザイン制作を急ぎますが、これは危険です。戦略なしにクリエイティブを進めると、後で修正が必要になる可能性が高くなります。そのため、まずブランド戦略を策定し、その後でクリエイティブに入ることをお勧めします。特にネーミングは最前線でブランド価値をコミュニケーションしてくれるツールなので、慎重に検討する必要があります。
合意形成型ブランディングの利点
私たちはワークショップで合意形成型ブランディングを行っています。この方法には以下の利点があります。
やり直しがない。合意しながら、戦略をつくり、その上で、デザインをはじめ戦術提案するので、クライアントとの大きな齟齬がなくなる
クリエイティブをはじめとした戦術の方向性が明確になる
やり直しや、考え直しがなくなるので、制作プロセスが効率化され、時間とコストが削減される
ブランドパーソナリティの確立
戦略策定後、ブランドパーソナリティを確定します。これはブランドを人格化し、持つべき性格を規定する作業です。このブランドパーソナリティに基づき、クリエイティブやコミュニケーションのトーン&マナーを規定します。ブランドを一人の人間としてとらえ、外見、色、ロゴタイプ、口調などブランドを伝えるすべての要素を統一します。われわれが進めるブランディングでは、このブランド・パーソナリティーが確定しない限り、デザインには入りません。
ブランドブックの活用
戦略策定の過程、ブランド・パーソナリティ、細かい戦術案をブランド・ブックにまとめます。このブランドブックをデザイナーや関係者と共有することで、クリエイティブ制作時の意思統一が容易になります。結果として、ブランドの一貫性が保たれます。ロゴタイプやシンボルやマークのデザインを行う場合はもちろん、マニュアルを作成し、トーン・オブ・ボイスの作成も行います。
さらに厳密に言うと、必要があれば、ブランド戦略⇒クリエイティブ・アイデアを出します。クリエイティブ・アイデアは広告表現や外部へのコミュニケーションの方向性を示すクリエイティブの戦略になり、キーイメージやキービジュアルにも置き換えて考えることができます。
開発初期からブランディングする
新商品開発では、開発の初期段階からブランディングの視点を取り入れることが重要です。商品名や提供価値を戦略的に検討することで、開発側のやるべきことも明確になり、プロジェクトが加速します。結果的にターゲット市場への訴求力を最大化できます。前述しましたが、特に商品名は売り上げを左右するので、安易にノリでつけてはいけません。
効果的なブランディングは、戦略的思考とクリエイティブ表現を緊密に連携させることから生まれます。
われわれの中では、デザインは最終的な2割ぐらいの部分しか占めないとデザイナーもそう理解して仕事をしています。デザイナーはブランド戦略そのものを最重要視しています。このクリエイティブのアプローチを採用することで、企業は市場での差別化を図り、持続的な競争優位を獲得することができます。