お客さまに「誰も見ていませんよ」と言ってしまった話💦

お客様が洋服を選んでいるところを見るのが好きです。どちらがいいかしらと聞かれれば喜んでお答えします。違う商品も提案します。お手伝いできるのが楽しい♡

「どっちの色が似合うかしら」

そう聞いて下さったのが始まりです。

背筋のすっとしたショートヘアの方です。背が低いのとウエスト周りにボリュームがあるのがお悩みだと察しました。お持ちになったのは紺とカーキの二色。リネン混のワイドパンツです。上には白のドレープブラウス襟付きをお持ちでした。

試着して頂くと紺もカーキもお似合いでした。カチッとするというか白の襟付きブラウスと合わせたのでビジネスライクな感じはします。けれど全体的に○です。下にむかって重たく見える印象ですが無難に言うと○なのです。

紺かカーキを選ぶのは簡単です。どちらも似合いますから。
カーキだと一見若作りにも見えるので紺を推そうかと思いました。

そして一言お声かけしたのです。
「お好きな色はどちらですか?」
「う~ん。」
お客さまは考えてしまいました。

私は出来るなら好きな色を着て頂きたい。ドレープパンツのような柔らかい素材なら大人らしく着られるのでもしカーキがお好きと仰ったら、そちらもご案内してみようかと思っていました。

「好きな色はないのよ」
「そうですか>^_^<じゃあ紺でよろしいかと・・」
と言おうとしたときに
「あんまり色があると変でしょう」
と仰るのです。色がある?フムフム
もしや本当は
どちらの色も
望んで選んでいないと?

チッカッチッカッチッカ・・・・

(それはいけません!)
私のスイッチが反応しました。
「少々お待ち頂けますか」
と言って急ぎ足で同じリネンパンツの白を持って戻りました。
ほんのわずか薄いベージュが織り交ぜてあるような柔らかい白です。
私はリネンのパンツをお持ちの時点で、お客さまにはこちらの白が似合うかもしれないと思っていたのです。

「よろしければこちら・・・」
ご覧になったお客さまの瞳が光りました☄
「この色は気になってはいたんだけどね。私には無理と思って」
「ではぜひっ」
お客さまのコンプレックスが白のパンツを拒否しています。
「白は無理よ。ココが太いから」
「はいてみるだけでも。。ぜひお試し下さい」

・・・・   ・・・   ・・・・・

試着して出てきたお客さま。
「いいわねえ!」
とってもステキでした☺
「とってもステキです!」
「なんだか全然変わったわ👀」

始めは下が濃い系上が白系
今回は下が白系なので上にはお客さまの着ていらした黒のカットソーです。

配色を転回することで初夏らしくスッキリとして
リネンの大人な雰囲気がよりお客さまに似合うようになりました。

「お背が低いので濃い色のワイドだと下が重たくなってしまうんですよ。」
選択肢がある場合にはこの説明が出来ます。
それしかない場合には敢えて言いませんが😂
「あら、そうね。白だと膨張するかと思ったけれど。スッキリね」

お客さまの場合は上に濃い色を着た方が上半身が締まって見えて、しっかりした生地の白がはきやすくなります。背が低い方は濃い色を上に持っていくのがオススメです。腰回りもスッキリして羽織で隠さなくても良いくらい格好良くなりました。

白のパンツへの抵抗もすっかり取れたところで
「柔らかい色のトップスが映えますよ。何色にされますか?」
きっとここで色味への好奇心が湧き出たのだと思います。
「本当はピンクが好きだけれど・・・」
もじもじするお客さま。

そこで私は言いました。

そうです。

前置きが長くなりましたがタイトルの一言を申し上げたのです。

「誰も見ていませんからね」

ぽろっとです😭


その方は目を大きくして私を見ました。

はい。もちろん。

「あなたのことを」と言う意味ではないんです。

ごめんなさい。

傷つきましたでしょうか?

なんて冷静に、次の展開にいけるようになれば、私も接客のプロになれるやもしれませんが、普段思っていることを、つい口に出してしまっただけなのですから慌てようったらありません。

そうです。洋服屋として
「言いたいけれど、言っては誤解を招く言葉」なのです。(反省)

私は取り消したいけれど、真実をお伝えすることに決め
次の言葉を探しました。

「あの、お客さま?最近会ったお友達の事を覚えていますか?」
「お友達?昨日懐かしい友達に久しぶりに会ったわ~」
「そうでしたか。では、その人の着ていたお洋服、覚えていますか?」
「えっとねえ、ステキな服だったけど・・・何だったかしら?
綺麗な色だったのよ。えーっと。おしゃべりに夢中でねえ」
「そうですよね。では、今朝のことは?
家族の方が出かけるときに着ていた洋服を覚えていますか?」
「あ~。それは知らないわ。ちゃんと見送ったけれどね。
顔しか見ていないもの」

心当たりがあるでしょう。
例えば電車の中でも可愛いと思う方っていますよね。その時は洋服をじろじろ観察しちゃったりして😋・・・その一瞬、全体を見て(こういう格好するとオシャレなんだ!)って思うかもしれません。だけれど家に帰ったら、あるいは電車を降りたらもう、そのことはすっかり忘れていませんか。
👗良かったら今日会った方のお洋服、思い出してみて下さいね👗

「その人の雰囲気は感じても、実際には何を着ていたのかは思い出せないのがほとんどだと思うんです」
「そうかもしれないわね~」
「だったら思い切って、ご自分のお好きな色にしてみませんか?」

私たちはもう一度売り場に行って
お客さまが好きだと言ったピンク色のトップスを探しました。
確かに
好きな色と似合う色は違います。
けれど
色味を変えれば着られます。

いくつかあるピンクの中で
くすんだピンクのレーヨンシャツか
薄いパステルピンクの五分袖ドレープシャツ。

お客さまは明るめのブラウンショートヘアだったので
似合いそうなピンクは後者でした。

もう一つ、最初にお客さまが持ってきた白の襟付きシャツ。
こちらは形を気に入って下さったのですが
ボトムスを白にしたので他の色を選び直します。
紺とベージュの二色を試すことにしました。

結果
紺色の服はたくさんお持ちだと言うことなので
ベージュに決定。
下が青系だったら選べなかった色です。

白ボトムス✕ピンクドレープシャツ と
白ボトムス✕ベージュ襟付きシャツ 

初夏らしいコーディネートが完成🌺

お客さまはレジに向かわれる間に
「そうねー。誰も見ていないんだから好きなの着たらいいのね~」
「誰も気にしないわよねえ」
と、いろんなパターンの言葉で、ご自身の呪縛を解いておりました。
とても可愛らしかったです>^_^<

言葉が伝わりにくくて申し訳なかったのですが
最後には大変喜んで頂けてホッと胸をなで下ろしました。


・・・・・・・・
「それ似合っているねー」って誰かが言ってくれると
嬉しいですよね。そりゃあ私も嬉しいです。

ですがそれって

それだけのことです。

優先したいのは自分が気持ち良く過ごせる服を着ること。
それがとても大切だと思います。

どう言えば良かったかな?

「あなたを見ていません」
ではなくて💦
あなたのお洋服、誰も覚えていませんよ」かな。

あなたのことはちゃんと見ています😄

日本は周りを気にする気質の高い国だと思うので
少しずつ変えていけたらいいなあと思います。

洋服をめっちゃ褒められるよりも
「今日も元気ね」くらいがちょうどいい。

一生懸命に良いところを探して相手を褒めるよりも
むしろ
そんなに気にしていないよって伝えてあげる方が
肩の力が抜けていいと思うのです。

♪似合ってる?
  誰かの視線を気にしすぎ 
    無意識に避けた好きな色
      呪縛を解くと感じるは
         何者でもない開放感♪

                     というお話でした☺


あんりま。
こんな長いのを最後まで読んで下さってありがとうございます🙇


ピロロロ~ん♪


おっと
今度は男性のお客さまがやって来ました。

「このズボンに似合うシャツ選んでくれる?」

(そういう質問に答えるのは簡単ですが、、、、)

「そもそもズボンのお色、それでよろしゅうございますか?」

「えっ?」

「お好きな色からお客さまに似合う形をお選びいたしますよ」

今日もチャレンジは続く・・・・笑💨



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