カジュアルワインゼミ・ベーシックコース(入門講座)セクション5「ロゼワイン 今注目される万能な味わい」
先日はカジュアルワインゼミのベーシックコース(入門講座)のセクション5を開催、テーマは「ロゼワイン 今注目される万能な味わい」で、ロゼワインの造り方や代表的な銘柄、オレンジワインとの違い、飲み方の提案などの座学の後にワイン4種のテイスティングをしていく内容。
ラーメンでいうタンメン、スポーツでいうハンドボールのように、誰でも知ってるけれど、意外に馴染みがないものが世の中にはあるが、ワインの世界でそれに該当するものがまさにロゼワイン。タンメン好きの方、ハンドボール部出身の方、いじってしまってスミマセン。(苦笑)
とはいえ、本場フランスでは今やロゼワインがワインのシェアの20%を超えるなどメジャーな存在、なぜ日本ではマイナーかといえば、昔々同じ価格で白、赤、ロゼがあったサ〇トリーのレゼルブ、メ〇シャンのセレクトなどのブランドのロゼワインがおしなべてやや甘口だったことが影響して、ロゼワイン=甘いという固定概念が根強いため、世界的な主流は辛口なのに、それが浸透していないのが日本のワイン文化の未熟さかと。(涙)
ということで今回のテイスティングのラインナップは以下の通り。
Sample-1
Pierre Brevin Rose d'Anjou 2021
ピエール・ブレバン ロゼ・ダンジュ
生産地:フランス/ロワール地方
品種:グロロ
Sample-2
Marrenonc Lou Vitis Rose 2022
マレロン ルー・ヴィティス・ロゼ
生産地:フランス/プロヴァンス地方
品種:グルナッシュ、シラー
Sample-3
Mars Winery Koshu Orange Gris 2022
マルス・ワイナリー 甲州オランジュ・グリ
生産地:日本/山梨県
品種:甲州
Sample-4
Chateau de Segries Tavel Rose 2021
シャトー・ド・セグリエス タヴェル・ロゼ
生産地:フランス/コート・デュ・ローヌ地方
品種:グルナッシュ
セット1はフランス・ロワールのロゼ・ダンジュとフランス・ローヌのリュベロン・ロゼの比較。
小売価格はどちらも1,500円程度、白ワイン造り(プレス)で造るロゼ・ダンジュと赤ワイン造り(セニエ)のリュベロン・ロゼ、どちらも淡いピンクの色合いながら味わいはまったく異なる2種。
ペティアンかと思うほどの発泡を見せるロゼ・ダンジュは、冷涼地のロワールらしいシャープな酸、近年のロゼ・ダンジュの傾向に見られる甘味を控える造りの印象、逆にリュベロン・ロゼは温暖地のローヌらしいマイルドな酸と程よい飲みごたえを感じさせる造りで、辛口ロゼワインの万能さを感じさせる味わい。
白ワイン造りと赤ワイン造りの比較でのセットで、本来はホワイト・ジンファンデル(白ワイン造り)とプロヴァンス・ロゼ(赤ワイン造り)の比較テイスティングにも応用できるセットだが、ピエール・ブレバンのロゼ・ダンジュのアプローチがとても異色なのでプラスアルファの考察が必要。その辺は後半に改めて記載します。
セット2はフランス・ローヌのリュベロン・ロゼと日本・山梨県の甲州のオレンジワインの比較。マルスワイナリーのオランジュ・グリも小売価格は1,700円程度でほぼ同価格、甲州のオレンジワインは色合い的にかなり淡いオレンジ。
端的にロゼワインとオレンジワインの違いを言うと原料と造り方、黒ブドウを原料に白ワインの造りまたは赤ワイン造りでロゼに仕上げるのがロゼワインで、やや赤い色素を持った白ブドウ(甲州やピノ・グリなど)を原料に赤ワイン造りで皮の色を取り込んで仕上げるのがオレンジワイン。
甲州のオレンジは甲州の新しいスタイルを感じさせる物として数年前から注目しているワインで、柔らかな酸とほのかな苦味を感じさせる旨味を持った味わい。
とはいえ、ジョージアのオレンジワインとは異なるスタイル、ジョージアのオレンジが白ブドウも黒ブドウも同じようにブドウ全体を発酵させて造っていたクラシックなスタイル(場合によっては苦味も多く取り込む)とすれば、さらに白ワインをクリアに造ることを目的に考えられたのが、一度ジュースにしてから発酵させる現代の白ワインの造り方、さらに白ワインの造り方を基本しながらもスキンコンタクトやマセラシオンでクリアな味わいの仕上げるのが新しいスタイルのオレンジワインで、日本の甲州は概ねこちらのスタイル。
リュベロンも甲州も爽快な味わいで様々な料理に併せられるワイン、個人的には価格もお手頃で日本のワインの可能性を感じさせる甲州のオレンジを贔屓目に見てしまう…
セット3はフランス・ローヌのリュベロン・ロゼとフランス・ローヌのタヴェルとの比較。タヴェルの小売価格はリュベロン・ロゼのほぼ倍の3,000円程度。
多様なワインを算出するフランスの中でもロゼワインの最高峰と言われるのがローヌのタヴェル、さすがにリュベロン・ロゼとは比較にならない濃い色合いで赤ワインの淡い物と言ってもおかしくない外観。
味わいも柔らかな酸味とロゼワインとしては芳醇な旨味、色合いからも想像できる若干の渋味のニュアンスがまさにタヴェル、収量の違いや発酵の際のセニアのタイミングなど、価格以上の違いを感じさせる。
ちなみに僕の中でのタヴェルの最高峰はローヌの生産者のモルドレが造るレイヌ・デ・ボワ、ただ数年前に当主のクリストフ・デロルム氏が他界して、少しスタイルが変わった感じがあってちょっと残念。
さてさて、今回のテイスティングで僕が一番印象に残ったのがピエール・ブレバンのロゼ・ダンジュ、何故なら従来のロゼ・ダンジュのスタイルとは大きく異なる物だから。
一般的には冷涼地で造られるロゼワインは白ワイン造りでやや甘口、温暖地で造られるロゼワインは赤ワイン造りで辛口(例外は温暖地ながらジンファンデルをより飲みやすく仕上げるために白ワイン造りで仕上げるホワイト・ジンファンデル)となるが、なぜ冷涼地のロゼワインがやや甘口かというと、別に白ワイン造りだからではなく冷涼地ゆえのシャープな酸味を和らげる為にやや甘口に仕上げているという理由、しかしこのロゼ・ダンジュは一般的なロゼ・ダンジュにあるような甘味は感じられない。確かに辛口主流の現代においてロゼ・ダンジュも一昔前に比べると甘味控えめにシフトしているという印象があるが、それとは一線を画す味わい。
要は酸とのバランスを甘味ではなく発泡で取ろうというスタイル(シャンパーニュに泡があるのもこれと同じ考え)で正直驚かされたワイン、実際ワイン法上ではペティアンになるかは不明。
入門講座とはいえこんな驚きを魅せてくれるのもワインの魅力、講師業の醍醐味といったところでしょうか。