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採用広報資料を作成する意味と効果は? 120ページ超えのスライドを相互理解につなげるケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ

会社のカルチャーや価値観を伝える採用広報は、今や採用のシーンにおいて欠かせません。採用広報資料を作って終わりにせず、メッセージの浸透や企業理解につなげるにはどう活用したらいいのでしょうか?

ITファシリテーションのコンサルティングに強みを持つケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社では、『Who is Cambridge?~ケンブリッジを職場に選ぶ理由~』と題した採用広報資料を、誰もが閲覧できるインターネット上に公開しています。

スライドの数は、なんと120ページ以上。この膨大な資料を、企業情報の発信だけでなく、採用面接での企業と候補者の相互理解につなげているというのです。

採用広報資料を作成するに至ったきっかけや、オープンに情報を公開するスタンスについて、同社で2018年より人事を務める渡辺 歩さんに話を伺いました。

※この記事は、CASTER BIZ recruitingを運営する株式会社キャスターの執行役員森数が、ボイスメディアVoicy 『採用とキャリアと私とボイシー』で対談した放送をもとに執筆しています。

「風通しがよくないですね」の一言をきっかけに、採用広報資料の作成がスタート

CASTER BIZ recruiting 森数(以下、森数):
ケンブリッジさんが社外に公開している採用資料は、アウトプットの量も質もすごいですよね。ここまで働く人のメッセージを明確にするには、徹底的に会社の文化や価値観を言語化する必要があり、簡単に出来ることではないと思います。この採用資料を作成した経緯を教えていただけますか?

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同社の採用広報資料。現在は121ページのスライドで、事業説明や教育体制、会社の取り組みなど網羅的に情報を開示している)

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ 渡辺さん(以下、渡辺):
きっかけは、新入社員の「思ったより風通しがよくないですね」という一言でした。

私たちは、現在従業員170名程の中小規模組織です。2018年に100名を超えたあたりから「言語化しなくても分かる」が通じなくなってきました。

もとから社内で議論し、合意形成を大事にするカルチャーです。「話し合って合意しました」だけで終わらず、さらに文章に落とし込んで方針や考え方を形にする流れに方向転換しました。

森数:
作成にあたっては、どのようなステップを踏まれましたか?

渡辺
社内に採用へ強い思い入れのある社員がおり、まず60ページほどのスライドを作ってきてくれました。

スライドのもとのアイディアは、株式会社コンカ―さんの採用資料です。「働きがいのある会社」ランキングで毎年のように話題になる企業で、大変すばらしい採用広報資料を作成されています。会社の考えに共感する人が門を叩いてくれるような内容で「そういうものをうちでもやりたいね」と話が始まりました。

いま公開しているスライドは、社内でまとめたドキュメントに、専門用語の解説や文脈の補足を加えて作成したものです。ゼロから議論して作り上げたというよりは、お手本とする理想像があり、かつ叩き台があって、人事や社員でブラッシュアップを重ねた形です。

何もないところからでは、到底作り切れなかったと振り返って思います。

森数:
情熱を持った人がまず作るのは大事ですよね。会社のミッションやバリューの作成の際も同じことがいえますね。全員で喧々諤々するよりも、まずは誰かが作ったものを、皆で磨いていくやり方のほうが、完成度が上がると感じています。

渡辺
そうですね。全部の意見は盛り込めないかもしれないですが、作成プロセスを社内で公開し、社員の声に耳を傾ける姿勢は、非常に大事だと思います。

公開して困ることがないならオープンにしよう

森数:
採用広報資料の場合、「どこまでを公開するか」もみなさん気にされる部分かと思います。細かい数字を出すかどうかなど、どのように基準を決めていますか?

渡辺
「公開して困ることってある?」が私たちのスタンスです。

たとえば当社の場合、「離職率を公開して困ることってあるかな?」でいうと答えは「ほぼないな」なのです。むしろ、入社してから離職率が思っているより高いですね、と言われたり、こんな理由で離職する人がいるなんて知りませんでした、となるほうが不満や早期離職につながるかもしれない。そうなると、困るのはせっかく入社してくれた人たちなんですよね。

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(『数字で見るケンブリッジ』の章では、顧客の規模から社員構成、社内トレーニング、評価制度、働き方など幅広いデータをオープンにしている)

森数:
確かに。入社前後のギャップを出来るだけ失くせるほうが、お互いにとってよいパフォーマンスを生み出せると思います。

渡辺:
入社される方と、すでに社内で働いている私たちでは、どうしても情報の非対称性があります。入社後に期待値のズレが生じると、そこから不安や不満といった疑心暗鬼につながっていく。なので、公開して困ることがなければ、消極的にならずにどんどん情報をオープンにしていくスタンスです。

森数:
情報のアップデートはどうされていますか? 採用広報資料は、情報をメンテナンスして最新の状態に保つのが大変だと思うのですが……。

渡辺:
ざっくりですが、半年に1回、見直しのタイミングを決めて修正しています。制度や働き方、直近では代表の交代など、変更点は細かに発生します。都度対応は負荷が高いので、目安として半年置きの期間を設定しています。

あと作って終わりにしないためには、あえて採用資料を使う機会を設けています。ケンブリッジの採用面接では、候補者の方に「これを読んでください」と事前に採用広報資料をご案内しています。そして面接は、ディスカッションから始めます。採用広報資料を読んで、疑問に思った点やもっと聞きたい部分を質問してもらうのです。

こちらも聞かれることで、「この情報は書いておく必要があるな」と気づけますし、古い情報を更新しなければと見直す機会にもなります。

森数:
とてもいい運用ですね!「読んで来てくださいね」だけだとそこで終わってしまいますが、面接でも機会を設けることで、採用広報資料が絶えず磨かれるのですね。

採用広報資料を面接のディスカッションの下地とし、より深い相互理解を目指す

森数:
採用広報資料をオープンにすることで、実感しているポジティブな影響は何がありますか?

渡辺:
先ほど申し上げたように、面接で事前にご案内しているため、候補者からの質問の質が深まり、面接で深いところまで相互理解につなげられる実感があります。

「この事業についてこう書いてありますが、こんなデメリットもあると思います。そのあたり御社ではどうされていますか?」など、具体的に突っ込まれることもありますね。

それから、お互いの志向をすり合わせるきっかけにもなりますね。面接前に採用広報資料を読み、自分の方向とは合わないと感じたので面接を辞退しますとご連絡いただくこともあります。実はこれも、ポジティブな効果ですよね。

森数:
一見ネガティブに見えますが、面接でお互いに貴重な時間を使う前に、候補者の方自身が合うか合わないかを判断できますからね。

社員の方からの反応はいかがでしょう。採用広報資料によるエンゲージメント向上効果は感じますか?

渡辺:
会社のメッセージが社内にも伝わっていると感じますね。

いま、面接は人事だけではなく現場のコンサルタントにも参加してもらっています。その際、初めて面接を担当する社員には、採用広報資料で会社の状況や方針を確認してもらっています。それにより、より会社のメッセージが腹落ちするようです。社外の方へ自社のカルチャーを語る機会自体が、自分の気づきにもなるんですよね。

「自分はこんなふうに語れるのか」と、喋りながら自己を客観視する経験が、貴重だと思います。

森数:
逆に、公開することによって困った出来事はありますか?

渡辺:
資料をリリースした当初は、少しアピール色が強く、読んで入社した社員の方の期待値がちょっと高まりすぎたかなと反省しました。「よい会社に入社できた」といった感覚を与えすぎてしまったのかなと。

森数:
期待値は下がりすぎてもダメですし、逆に高すぎるのもよくないですよね。もちろん期待してくれることは嬉しいですけれど。

渡辺:
難しいですよね。

ですので、資料に「ここまで読んで弊社をよい会社だと思った方、ちょっと違います」と、会社にぶら下がる人には向いていませんよといった厳しめのメッセージを後から追加しました。読んだ人がどのようなイメージを抱くのかについては、試行錯誤のくり返しです。

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(魅力のアピールだけに終わらず、最後の『ケンブリッジからのメッセージ』の章では、会社の姿勢を真摯に伝えている)

内定のオファーは、魅力と期待をセットで伝える

森数:
正直に飾りすぎないアウトプットをしてくれる企業さんは安心感があります。

渡辺:
採用広報とは少し違いますが、内定を出すときに、候補者の方の魅力に加え、懸念される点を伝えることにしています。こんな部分が魅力に映ったのでオファーをだします。でも、ここはもしかしたら苦労されるかもしれないと私たちは思っています。そのあたりを、お互い覚悟して頑張っていきましょう、というように、内定の通達だけでなく私たちの想いもセットで伝えています。

その辺りも含めて、期待値の調整ですね。

森数:
ある程度先のことを教えてもらえると、入社する方も気持の捉え方が変わりますよね。会社のことを伝えるだけではなく、候補者の方を知る努力をする選考プロセスあって実現できることですね。

最後に、転職を考えている方にメッセージをお願いします。

渡辺:
もし当社のコンサルティングの仕事に興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、通年で採用を行っておりますので、ぜひご応募いただければと思います。

森数:
今回お話を伺った採用広報資料も、とても詳しく書かれているので、ケンブリッジさんに興味をお持ちの方は、ぜひ見てください。本日はありがとうございました!

渡辺:
ありがとうございました。

▼ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ 採用広報資料

▼ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ 採用サイト

▼ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ コーポレートサイト

▼CASTER BIZ recruitingに興味をもった方はこちら

▼今回の記事は音声でもお聞きいただけます


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