その不調は「玄米」のせいかも? 主食を玄米にしたい人に知ってくべきこと
「白米は砂糖と同じ糖質の塊だ!」
「玄米には様々な栄養素が含まれているから身体に良い!」
そのような情報を目にして、主食を白米から玄米に変えたものの思ったように健康なれていないという人は多いのではないでしょうか。
今回は、栄養満点といわれる玄米の落とし穴と、玄米の害を避ける方法についてまとめようと思います。
参考図書
『正しい玄米食、危ない玄米食』(著:鶴見隆史、2017年)
著者の鶴見先生は、鶴見クリニック理事長を務める現役のお医者さんで、食事法や断食に関する著書を多数書かれている方です。また、鶴見先生は酵素の専門家でもあり、本書にもその知見が反映されています。
どの著書も学びが多い内容ですので、ぜひお手に取っていただきたいです。
鶴見先生は本書でこのように述べています。
鶴見先生は、玄米食を実践している人が訴える不調を以下のようにリストアップしています。
では、玄米が害となるのはどういった理由からなのでしょうか?
以下で見ていきましょう。
玄米の「3つの毒」
①玄米の毒1「アブシシン酸(酵素阻害剤)」
玄米の糠(ぬか)にはアブシシン酸という物質が含まれています。 アブシシン酸は、大豆やリンゴ、アーモンドといったあらゆる植物の種の外皮に含まれている物質です。
アブシシン酸は、種の中身が酸化しないように守っている物質です。この物質のおかげで、植物の種はうまく保存すれば何万年経っても発芽することができます。
しかし、アブシシン酸には酵素を阻害する働きがあるため、人体にとっては有害です。酵素とは、体内の化学反応を助けるタンパク質のことです。酵素の一つは「消化酵素」であり、消化酵素が働かないと食べ物の消化吸収がうまくできなくなります。アブシシン酸は消化酵素の働きをブロックするため、ひどい消化不良を引き起こします。
さらに、人体はなんとか消化しようと酵素を激しく分泌するため、酵素を分泌する膵臓(すいぞう)は疲弊し、体内の酵素は枯渇してしまいます。
Apple創業者であるスティーブ・ジョブスが若くして亡くなったのは、生のアーモンドやフルーツを種ごと食べる習慣があったことが一因と言われます。アブシシン酸により膵臓を痛めつけたことで、膵臓がんになったのだと考えられるのです。
②玄米の毒2「フィチン酸(ミネラル吸着)」
玄米の糠にはフィチン酸という物質も含まれます。フィチン酸はアブシシン酸ほど有害な物質ではなく、ある程度は人体に必要です。実際、フィチン酸は酸化ダメージを防ぎ、がんを予防する効果があることが報告されている。
しかし、フィチン酸はミネラルを吸着して、体外に便として排出してしまう働きがあります。それにより人体に必要な鉄や亜鉛といったミネラルを吸収できなくなってしまいます。現代人はただでさえ加工食品中心の食事などによりミネラル不足のため、フィチン酸のミネラル吸収阻害作用は、ミネラル不足を加速させてしまいます。
③玄米の毒3「アクリルアミド(糖化物質)」
アブシシン酸やフィチン酸と違い、アクリルアミドは玄米に元から含まれる物質ではありません。調理方法によって発生してしまう有害な物質です。
アクリルアミドとは糖化物質であり、デンプン質の食材を120℃以上の高温で加熱することで発生します。
糖化とは「タンパク質と糖質が強く結合し、離れなくなる状態」のことです。パンケーキを焼くと茶色くなるのがまさに糖化反応で、茶色くなった生地をもとに戻すことはできません。
糖質とくっついてしまうとタンパク質は劣化します。糖化したタンパク質を摂取すると、血管がボロボロになるなど、体中の細胞が劣化してしまいます。
複数の研究が、アクリルアミドの摂取ががんのリスクを高めると報告しています。国際組織であるWHO(世界保健機関)とFAO(国際連合食糧農業機関)の合同委員会は2005年に「食品中のアクリルアミドを減らすべきだ」という趣旨の勧告を出しているほどです。
身近な食品だと、じゃがいもを高温で揚げたポテトチップスやフライドポテトはアクリルアミドの塊です。食べたくなったらアクリルアミドの害を思い出すようにしてください。
玄米を無毒化する調理法
以上のように玄米には毒が含まれるから、玄米食はやめたほうがよいのかというと、そうではありません。「玄米の3つの毒」は正しい調理法によって解除することができるからです。
調理のポイントは以下の3点です。
①玄米を17時間以上水に浸す
②玄米を浸す水を2回交換する
③120℃以上になる圧力鍋や炊飯器を使わずに炊く
それぞれの行程を詳しく見ていきましょう。
①調理のポイント1「玄米を17時間以上水に浸す」
玄米は水に浸すことで「発芽玄米」になります。発芽玄米にすることで、毒素が抜けるとともに栄養成分も増加します。アブシシン酸とフィチン酸は、玄米を17時間以上水に浸すことで、水に放出されます。
また、発芽玄米にすることで以下のように栄養価が増えます。
・食物繊維の量が3%から4%へと増加する。
・GABAは1.7倍になる。GABAにはイライラなどの気分改善作用、腎機能・肝機能の向上作用、中性脂肪の抑制作用、血圧の安定作用がある。
発芽玄米には市販品もありますが、発芽した玄米を真空パックで強制的に成長を止めることでストレスがかかり、アブシシン酸が増加している可能性があるのでオススメできません。面倒でも自分で発芽玄米を作るようにしましょう。
また、玄米を購入する際は必ず無農薬のものを選ぶべきです。農薬は糠の部分に大量に残存します。白米であれば、糠を除去するため農薬の影響は少ないですが、玄米食をすると糠と一緒に農薬を摂取してしまい危険です。
②調理のポイント2「玄米を浸す水を2回交換する」
玄米を水に浸しておくと発芽毒が放出され、水が濁り臭くなります。これは眠っていた玄米が目を覚まして、「うんち」のようなものを排出しているとイメージするとわかりやすいです。
発芽毒を取り除くため、17時間の浸水中に2回ほど水を入れ替える必要があります。
③調理のポイント3「120℃以上になる圧力鍋や炊飯器を使わずに炊く」
アクリルアミドは、120℃以上の高温で加熱すると発生します。通常、水は100℃で沸騰しますが、圧力をかけることで130℃もの高温で加熱できるようになります。これによって固い食材も短時間で調理することが可能になります。
しかし、温度が高いほどタンパク質と糖質が結びつく糖化が起きやすくなります。最高到達温度が117℃というアクリルアミドが発生しない圧力鍋を開発しているメーカーもあるので、よく調べて購入するようにしたいです。人気の炊飯器は「IH圧力炊き」のものが多いが、加圧温度が120℃以上にならないか確認した方がよいです。
圧力炊きではない炊飯器や土鍋、又は120℃以上にならない圧力鍋を使用することで、アクリルアミドの発生は防ぐことができます。
鶴見先生の炊き方
鶴見先生自身は土鍋を使って以下のように調理しています。土鍋をお持ちの方は真似をしてみてください。
無毒化した玄米の最強パワー
白米は玄米から糠を取り除いたものですが、この糠の中に多くの栄養素が含まれています。
玄米は白米に比べて……
・食物繊維が約5倍
・ビタミンB1が5~8倍
・ナイアシン(ビタミンB群の一種)が4~5倍
・カルシウムが約2倍
・ビタミンB2が約2倍
・鉄が2~6倍
・カリウムがおよそ2.5~3倍
も含まれています(書籍やサイトによって数字に幅があります)。
上記の栄養素はどれも重要ですが、特に重要なものをいくつか解説します。
①玄米は太りにくい(食物繊維)
食物繊維は人間が消化吸収できない物質ですが、お通じを良くしたり、腸内細菌のエサとなったりすることで腸内環境を改善する働きがあります。
食物繊維が豊富な食事は消化吸収を穏やかにするため、血糖値の上昇が穏やかになり、脂肪の蓄積を防止できる。
②玄米は疲労を回復させる(ビタミンB1、ビタミンB2)
ビタミンB1は炭水化物をエネルギーとして利用するのを助け、細胞の疲労回復を助けます。ビタミンB1が不足すると「脚気(かっけ)」という病気になり、最悪の場合は死に至ります。昔の日本では上流階級で脚気にかかる人が多かったですが、白米ばかり食べていたことが原因と言われています。
ビタミンB2は、脂質をエネルギーとして利用するのを助け、皮膚や髪の毛の合成を助けます。
③玄米はメンタルを安定化させる(ナイアシン、鉄)
ナイアシンはビタミンB群の一種です。様々な代謝に関わる補酵素であり、エネルギーの生成や神経症状の防止に働きます。不足すると「ペラグラ」という皮膚や精神の以上をともなう病気になります。
鉄は、赤血球の材料となるとともに、セロトニンやドーパミンといった脳内物質の産生にも関わります。貧血の人は通常、精神的な不調も抱えがちです。
④玄米はむくみを改善させる(カリウム)
カリウムには体内の過剰なナトリウムを排泄することで、体内の水分量を調節し、むくみを改善させる作用があります。高塩分の外食や加工食品が中心になるとナトリウム濃度が上昇して、むくみがちになるので、カリウムを意識的に摂取する必要があります。
結論「玄米食は実践すべきか?」
玄米にはそのままでは毒があること、毒を解除する調理法、玄米の健康効果を述べてきました。では、玄米食は実践すべきでしょうか?
個人的には仕事や家事、育児が忙しく時間に追われている人が無理に実践する必要はないと思います。白米+野菜でも玄米と同等以上の健康効果を得ることは可能だからです。
時間に余裕がある人は趣味の一環として、発芽玄米作りや土鍋炊きをすることで生活の質を高めることができるかもしれません。「丁寧な暮らし好き」の人や、現役を引退した世代の方は比較的実践できるでしょう。
参考図書『正しい玄米食、危ない玄米食』では、「磁性鍋で玄米を炊く方法」や玄米に追加することでさらに健康効果を高める「鶴見式超健康・玄米完全レシピ」、「理想的な食べ方」、消化酵素を節約する方法のように、今回取り上げなかった有益な情報が収録されています。
興味を持たれた方はぜひご一読をオススメします。
最後に、「こんな疑問を解決してほしい」「この本がどのような本か知りたい」というリクエストがありましたら、コメントをいただけるとありがたいです。お付き合いいただきありがとうございました。