【2023 夏 高校野球】準決勝の見どころを徹底解説
第105回 全国高校野球選手権大会
準決勝
第一試合
仙台育英(宮城) vs 神村学園(鹿児島)
第二試合
慶應(神奈川) vs 土浦日大(茨城)
準決勝の見どころ
大会もいよいよ終盤戦。
準決勝は「大会の沸点」とも言える。
激戦を勝ち上がり、投げ抜いてきたエースの疲労が蓄積し、チーム力の限界が見えてくるタイミングで、同じくここまで勝ち進んできた強豪校との対戦。
それゆえに実力差は拮抗しているにも関わらず、思わぬ大差が開く事も多い。
昨年は聖光学院の佐山投手、近江の山田投手が本来の能力を発揮出来ずに敗れ去った。
しかし、今年に限っては少し事情が異なる。
ベスト4の4校はいずれも継投で勝ち上がり、雨天順延が1日で済んだ為、休養日も消滅しなかった。
ここまで各校の「背番号1」の投球数は下記の通り
仙台育英・髙橋投手 125球
神村学園・松永投手 240球
慶應・小宅投手 176球
土浦日大・藤本投手 293球
猛暑の2023年、もちろん疲労はあるだろう。
ただエースナンバー背番号1の投手にとって例年ほど過酷な投球数ではない。
特に仙台育英の高橋投手は準々決勝で登板なし、慶應の小宅投手は5球のみ、とほぼベストなコンディションで臨めるのではないだろうか。
それを踏まえた上で、準々決勝2試合のポイントを簡単に解説していきたい。
①仙台育英(宮城)vs神村学園(鹿児島)
ついに実現!「最強投手陣vs最強打線」
個人的には最も楽しみなカードである。
最大のポイントは
「今大会で最もバットが振れている神村学園の強力打線を、仙台育英投手陣がどう抑えるか」
浦和学院、聖光学院、履正社、花巻東
と名だたる強力打線と対戦してきた仙台育英ではあるが、神村学園は1番封じ込めるのが難しい相手ではないだろうか。
神村学園打線の最大の特徴は9人中7人が左打者である点だ。その左打者がコンパクトにセンターから逆方向に強く低い打球を飛ばす。今大会4試合49安打中36本がセンターから逆方向である。
打線のキーマンは1番今岡、4番正林、6番上川床。ホームランは立命館宇治戦で今岡が放った1本のみだが、4試合で長打11本と長打力でも仙台育英打線に引けを取らない。
外野の間を抜ける長打が多いのも特徴だ。
右投手をことごとく打ち崩してきた神村学園の「左打線」に対して、仙台育英は誰を先発させるかにも注目したい。
通常であれば左腕の仁田・田中が予測されるが、2人は準々決勝の花巻東戦でも登板しており、仁田は四球4つ、田中は4失点と不安の残る投球だった点は否めない。
リベンジのチャンスを与える須江監督という点から、個人的には仁田が先発して試合中盤から高橋へのスイッチではないかと考える。
神村学園打線は逆方向への打撃を徹底しているため、仙台育英の尾形捕手は強気に内角を攻めていきたい。
一方で神村学園投手陣は仙台育英を相手に、ある程度の失点は覚悟しているだろう。
スタメンに左が5人並ぶ仙台育英打線に対して、神村学園にとっては今大会16イニングを投げ、被安打6、19奪三振で1失点と絶好調の背番号10「左のエース」黒木の投球が生命線となる。
松永が先発して、中盤から黒木にスイッチするか、黒木が先発で行けるところまで行くか。
どちらの展開になっても黒木の出番は間違いなくあるはずだ。
仙台育英打線は橋本、山田、斎藤陽、尾形、住石と昨年の優勝メンバーがズラリと並ぶ。いずれも隙のない好打者だ。
神村学園としては今まで対戦してきた相手よりも1ランク上の打線となるだけに、投手陣の真価が問われる試合となるだろう。
戦力的には仙台育英がやや上回るが、
神村学園が球際に強い自慢の守備力を発揮して最少失点で切り抜け、仙台育英にビッグイニングを作らせない試合展開に持ち込めれば勝機は見えてくるはずだ。
②慶應(神奈川)vs土浦日大(茨城)
「打線が繋がるか、継投で凌ぐか!」
準決勝第二試合は関東勢同士の対戦となった。
ともに投打に力のある好チームだ。
また髪型が自由という点でも注目を集めた両校の対戦となる。
神奈川代表と茨城代表は過去甲子園で5回対戦しており、神奈川が4勝1敗とリードしている。また土浦日大も初出場時に神奈川勢の東海大相模に延長16回におよぶ熱戦の末、敗れたという歴史がある。
今年の両チームは
・繋がりのある打線
・タイプの違う投手による継投
という点で似た特徴を持つと言える。
慶應は3試合で33安打22得点
土浦日大は4試合で45安打30得点
と両校とも打線が好調だ。
慶應打線は3試合で長打8本と長打力ではやや上回る。破壊力のある渡辺・加藤・延末の中軸は強力だが、この打線の火付け役は1番の丸田だ。
ルックスで注目を集めてはいるが、シュアなバッティングと走力という実力にも注目して欲しい。丸田の出塁が土浦日大戦でもカギになるだろう。
一方の土浦日大は4試合で長打4本のみ。
安打のほとんどが単打であるが、機動力を絡めて4試合中3試合で1イニング5点以上のビッグイニングを作るという集中打が特徴的だ。
茨城大会決勝で0-3と劣勢の中、9回に5得点をあげ甲子園を決めたのがこのチームを象徴していると言えるだろう。
慶應は2年生エースの小宅が先発か。
準々決勝はリリーフで5球しか投げて点も好材料だ。控えには沖縄尚学戦でも好投を見せた左腕の鈴木、秋はエースナンバーを背負っていた右サイドスローの松井とタイプの違う3投手がいるというのが強みである。
土浦日大は今大会で抜群の安定感を誇るサウスポー藤本にどう繋ぐかが、この試合のポイントとなるだろう。右本格派の小森、技巧派の伊藤ともに好投手だが、小森は専大松戸戦で初回に集中打を浴びて以来のマウンドとなるのが懸念点でもある。
両チームともに集中打で流れを持ってくる力があるだけに、この試合は継投のタイミングに注目したい。
継投で相手の流れを削ぐことが出来るか、
またそれを上回る打力を発揮するか。
特に慶應は大応援団を背に、沖縄尚学戦でも「代打 清原」で一気に球場のボルテージを上げて逆転に繋げた。
球場のムードに慌てることなく、土浦日大が普段の力を発揮出来るかも注目ポイントとなりそうだ。
尚、余談だが、土浦日大の小菅監督は選手として取手ニ時代に決勝で桑田・清原のPL学園に勝利して全国制覇を成し遂げた。
それから39年の月日が流れ、清原和博氏の次男と甲子園で対戦する。
おそらくスタンドで観戦される父・清原和博氏もきっと感慨深いものがあるだろう。
台風の影響で今大会1日順延となっている。
その結果、本来試合のなかった8月21日が準決勝となった。
8月21日は奇しくも法政ニがPL学園に勝利して優勝を決めた日でもある。
甲子園ラボ
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