社外取締役も務める新規事業のプロが「会社員時代の6割」に稼働時間を減らした理由
女性だから。仕事が忙しいから。ワーキングペアレントだから。
そんな理由で仕事や育児をあきらめていませんか?今回「#キャリーミーで挑戦」でご紹介する椿奈緒子さんは、20代でシリアルイントレプレナーとなり、数多くの新規事業に携わったプロとして独立しながら2児を育てるワーキングマザーです。
本業以外にも社会活動として一般社団法人社外取締役女性ラボの代表理事やパワーママプロジェクトの共同代表など、パワフルに活躍。そんな彼女は子育てが転換点の一つになったと言います。「子供たちのおかげで人生が3倍楽しくなった」椿さんにワークとライフの垣根を超えて全方位に挑戦し続けるストーリーを伺いました。
女性が事業立ち上げに携わる環境を求めて挑戦し続けた20代
ーまずはこれまでのご経歴をお伺いします。新卒で商社に入られたんですよね?
はい、幼少の頃から「日本と世界の架け橋になりたい」という気持ちがあり、大学進学では英語以外の競合優位性からブラジルが公用語のポルトガル語学科に進学。就職活動ではブラジルも含めた世界中に支店を構える大手総合商社に入社しました。
商社で「日本と世界の架け橋になる」ためには、事業開発に携わること。運よく1年目の配属先は希望通り新規事業部で、充実した毎日を送っていましたが、その事業の縮小が決まり、2年目からは輸入実務の部門に異動になりました。それが転職を考えたきっかけです。
また、当時はまだ「総合職女性」が珍しく「一般職女性」や年功序列が主流で、私自身、悔しい思いをした事も少なくありませんでした。そういった時代だったんですよね。そこで私は男女や年功で序列が決まっていない、誰にでも事業立ち上げのチャンスが掴める、という条件で転職先を探し、出会ったのがサイバーエージェントでした。
ーサイバーエージェントでは、すぐに事業開発をされたのですか?
最初に携わったのはインターネット広告代理事業の営業です。入社した2004年当時、サイバーエージェントの主力事業の一つでしたし、インターネット広告の黎明期に営業ができたのはとてもいい経験でした。クライアント様もまだまだ知見のない分野なので、営業活動のために勉強したことがダイレクトに受注につながり、楽しくて仕方なかったです。
入社して数か月後に事業プランコンテストの開催が社内告知されました。エントリーするとグランプリを受賞。その事業を進めるため、新規事業責任者になりました。サイバーエージェント入社から半年後のことです。
ーいきなり事業責任者となり、マネジメントと事業運営の両方に挑戦されたんですね。
と言っても、当時は組織のことを考える余力も意識もありませんでした。
事業って、どれだけ売上を立てられるか、どれだけ利益を作るかが重要なので。それだけで正直精一杯でした。
しばらくして、メンバーから「もう椿さんにはついていけません」と言われ、メンバーを巻き込むことやチームのことを考えて動くことが必要だと気づきました。
また、方針の言語化や、合理的で説得力のある伝え方をこの時期に強く意識しましたね。それまでの私は、なぜこの事業を進めるのかを感覚でしか説明出来なかったんです。それでは人はついてきてくれない。私の考えを分解して、方針や戦略を説明し尽くすトレーニングをしたんです。
私が特に影響を受けたのは、当時(cybozu.net時代)担当役員で上司であり、師匠である宇佐美さん(現: 株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役)から「椿さん、事業運営は狩猟民族じゃなくて、果樹園にしよう」と言われたことです。実がなるまで7、8年かかっても、1度種を蒔いたら実がなり続ける様な、中長期的に継続性のあるビジネスを目指す。事業に関する知見、外部のネットワークなどのヒント、そして自分を常にアップデートしていくことの重要性を、宇佐美さんから教えて頂きました。
そこから、7つの事業立ち上げに携わり、新規事業の立ち上げが専門分野になっていきました。
出産と子育てが大きな転機に。日本を変えるムーブメントを立ち上げて
ーご結婚や子育てなどのライフステージの変化があったときには、どのようなお仕事をされていたんですか?
サイバーエージェントとサイボウズの合弁会社であるcybozu.net株式会社の代表取締役を務めていた2009年に結婚しました。結婚しても自分の生活はさほど変わらなかったのですが、出産による変化は大きかったですね。
出産を機に「会社人」だった自分の視点が「社会人」になった感覚がありました。児童館や保健所、病院など、子どもに関する場所に行くと、今まで自分が見ていた世界はごくごくわずかだったんだと知ることができましたね。この頃から「事業の数字を見るのもいいけど、社会に役立つようなことがしたい」と思い始めました。
気になったのが、ワーキングマザーの働き方です。私が第一子を出産した2011年〜2012年のワーキングマザーは苦しい、大変というイメージしかなかった。私自身も自分が抜けて仕事は回るのかと不安で、第一子の時は産後3か月で復職を決めていたほどだったんです。
そこで第一子の産後休暇中に、大学時代の先輩に子育ての話を聞きに行きました。「椿ちゃん、子育てめちゃくちゃ楽しいよ」「仕事もやりがいがあるし、子供もすごくかわいい!」と断言してくれたんです。
「やっぱりそうか、それならそのコミュニティを自分たちで広げていけば良い」と感じて。その想いに共感してくれた3名と一緒に立ち上げたのがパワーママプロジェクトでした。保育園問題が過熱していた時期でもあり、内閣府のイベントに登壇したり、政治家の方々と対談させて頂いたりして、日本を変えるムーブメントに関われたんです。
このように「会社では事業開発を行い、プライベートプロジェクトで社会活動を行う」という働き方を第二子の産後まで続けました。
ーその後、スタートアップのCOOを経て独立されていますよね。そのきっかけは何だったのですか?
おっしゃる通り、第二子の育休から戻ってからしばらくして、日本で暮らす外国人をサポートする事業を展開するスタートアップに取締役COOとして参画しました。私は夫が外国人(現在は帰化)なのでよくわかるのですが、彼らが日本の生活に適応するのには様々な困難があります。「この社会課題を解決しなければいけない、私がやるべきだ!」と思いジョインしました。これまでの事業開発の知見を活かして、会員数を3倍へ伸長させ、1年半でアライアンスも7件提携しました。
しかしコロナ禍の影響で退任することになって。そこで、フルタイムで一社コミットではなく、パートタイムで複数の会社にコミットする「レンタルCOOのサービス(現在は新規事業支援のメンタリング株式会社)」を考えたんです。この事業を開始した頃に、キャリーミーにも登録しました。
ー独立してまもなく、キャリーミーに登録いただいたんですね。
はい、独立してから半年後くらいですね。キャリーミーに登録して良かったのは、私がこれまで想定していなかったクライアント様から案件を頂ける点です。私のネットワークだとベンチャーやスタートアップがどうしても多くなります。キャリーミーでご紹介いただく案件は第二創業のようなフェーズの企業様もあり、そうした企業様からも私を「価値ある人」だと評価頂けたのは大きな収穫でした。
もう一つの収穫は、「新規事業の椿」として案件が取れるようになったこと。私自身、案件を通して自分のブランディングを確立でき、ありがたかったですね。
ー逆に、独立されて困ったこと等はありましたか?
「孤独に耐えられるか」、これだけですね。今まで会社員経営者としてチームで働いていて、1人になったことが全くなかったので。
ーどのようにその孤独感を克服されたのですか?
起業支援関連のサービスは使い倒しました。例えば起業支援スポットのコンシェルジュサービス、無料で使えるコワーキングスペース、イベント参加などです。知り合いの経営者の皆さんと、月に一度、お互いにオンラインで振り返りmtgをさせて頂いたりもしました。自分の事業をどう立ち上げるか考え、自己分析を深めていくと思考が整理されて不安や孤独感が和らぎます。
また、夫も起業家なので、夫のサポートをしていたのも心の支えになりましたね。この期間は、ちょうど夫の事業立ち上げの時期だったので、立ち上げを手伝うと決めてやっていきながら、自分の準備をしていきました。
2人の子供たちのおかげで人生が3倍楽しい!「私だから」取り組むべき仕事に注力して仕事も充実
ー独立して、椿さんの中で大きく変化したのはどんなことですか?
私が独立した一番の理由は、子供との時間を持つためなんです。上の子が小学校2年生まで私はフルタイム経営者をしていましたが、子供の状況を把握できていないことに葛藤がありました。
例えば子供は学童や習い事でヒップホップダンスと英語をしているのですが、1回も見に行ったことがなくて。子供が英検ジュニアを受験していても、実際に家でダンスをしてくれても、自分のことで精一杯で興味を持つ余裕もなく、何をしているかもわからなかったんです。
そんな状況に「これでいいのかな」という気持ちがわいてきました。子供にコミットできる期間は長くても中学生まで。そう気づくと「今私がコミットしないと、子育てはすぐに終わっちゃう!」と感じたんです。
だから今は稼働率をフルコミットの6割くらいに抑えて、子供の勉強や習い事等を一緒に楽しみたいと思って過ごしています。
息子のヒップホップダンスの朝練をしたり、プロダンスリーグの大会を見に行ったり、私もヒップホップダンスを始めたり。息子のラップの動画を撮ってコンテストにも参加したり、ラップのライブを観に行ったり。親子サッカーで私もサッカーをしたり、世界のプロサッカー選手に教えてもらったり。娘もピアノを始めて私も一緒に練習したり、バレエを鑑賞しに行ったり、キッズモデル活動のサポートをしたり、家族で1ヶ月以上海外に滞在したり。こんな風に、子供たちと様々な経験を共有しています。
こうした余裕ができ、私も子供たちもクリエイティブな体験が増えていると思っています。専業主婦でもない、フルタイムでもない、私だからこそクリエイティブさが掛け算になっていると自己分析しているんです。
子供たちがいなければ絶対に見えていなかった世界を見せてもらい、子供たちのおかげで人生を3倍楽しませてもらっています。控えめに言って、最高です!
ー稼働率を抑えているとのお話ですが、お仕事も精力的にされている印象です。
そうですね。稼働率を落としても会社員時代より収入が増えていますし、事業開発という私の得意分野を活かしながら今まで挑戦したことのない事業にも挑戦できて、仕事もすごく楽しいです。
また、近年は社外取締役を経験させていただくなかで課題が見つかり、社外取締役女性ラボという一般社団法人を立ち上げました。「2030年までに女性の取締役30%」を目標にして活動しています。
ーものすごい行動力ですね!
今回の社外取締役のように私が経験していないことをお引き受けする際、知見のある方に、複数名インタビューをしています。そこで発見した課題が誰も解決しようとしていない場合「私がやらなきゃ」とエンジンがかかるんです。逆に、これは私じゃなくてもできそうだと思ったことはお断りしています。
社外でも社内でも取締役レベルの女性が少ない点が日本企業にとって重大な課題です。私の得意領域を活かしてできることは、女性の事業責任者を増やすこと。女性の事業責任者が増えれば、子会社社長女性が増えるので、中長期的に女性の取締役も増える。これが私のライフミッションだと思い、挑戦をしています。
ー最後に、現在挑戦をしたいと思っている方へのメッセージをお願いします!
実は、今私が挑戦していることの一つが書籍出版です。その本に盛り込もうと思っているのが「ポジティブに、チャレンジしましょう」というメッセージなんです。
私は、挑戦量も失敗量も多いんです。何度も失敗しても挑戦し続けるのが私の特徴でもあり強みでもありノウハウでもある。その詳細は本に譲りますが、一つお伝えすると「やりたいことがあった時、どれだけポジティブに仮説思考を作って実行できるのか」がポイントだと思っているんです。
無理だと考える人は、できない理由を作ってしまいがちです。いかにポジティブに、できる前提で仮説を作ると「失敗=検証完了」になり、またポジティブな仮説思考を持って実行力を上げられます。
「やりたい」と思う種からポジティブに仮説思考で実行していったら、必ず何か生まれる。そう考えています。
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椿さん、ありがとうございました!こうした働き方、挑戦に興味を持っていただけたら、ぜひ、キャリーミーにご登録ください!
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