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「筆者の心の原点は?」中空ガラスペンを作ったぞ《旅のガラス》第5回 創作編
《旅のガラス》第5回 創作編はいつも使っている耐熱ガラスからソーダガラスに変更して制作したぞ。その経緯も書いているのでぜひ読んでみてほしい。
第5回 旅編はこちら↓
君の心の原点は
旅編で書いていた通り、悩んで「心が救われていない」と感じた筆者は思い立って夜中に昔作ったガラス作品を棚から引っ張り出してきて家族に見せたのだった。
それは鉛ガラスでの作品で商品というよりか、いくぶんアート寄りのものだった。2017年ごろの作品で北海道に滞在していたときに作ったものだ。しばらく大阪市立クラフトパーク様にて展示されていたが今年の5月に手元に戻ってきたものである。まずはこの作品たちをみていこう。
「千度芽を出した種」
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鮮やかな色彩の複雑な形をした「種」である。タイトルは「千度芽を出した種」という。
この種はタイトル通り、千度芽を出したように見えるだろうか。見えないだろう。なぜなら千度のうちのこれまで999回出した芽は折られているのだから。今見えるのは1本の芽。何度芽を折られても諦めない不屈の精神をタイトルにこめた。
もう一つ作品を見てみようか。
「夜空のこま」
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夜空のような模様をした「こま」である。タイトルは「夜空のこま」という。見る人にわかりやすいようにつけた。もともと考えていた名は「大夜(タイヤ)」である。よく見ると車輪の片方のように見えないだろうか。タイヤとかけて名付けた。「大夜(タイヤ)」で出品してもよかったかもしれない。ヒビが入っているがそれも含めての作品だ。こまだからといって回して壊さないよう注意が必要だ。
これまできゃろくろガラス工房の作品をよくご覧の方にはお気づきの方もいらっしゃるかと思うが、ガラスペン制作に使っているガラスとこの作品たちは色の感じが違うだろう。この作品たちに使っている鉛ガラスはガラスペンに使っている耐熱ガラスとは違う色彩を持っている。筆者はこの色彩が好きでガラスペンを製作する前はよく使っていたのだ。
話は戻り夜中にこの作品たちが無性に見たくなって棚から引っ張り出して包みを開けたとき、とても安心した。自分はここにいるのだと。この作品たちが原点なのだと。
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だから思い切って灯油バーナーを机に持ってきて作業スペースを確保した。ガラスペンでなくても自分の好きな材料を触って何か作りたい。
第5回《旅のガラス》旅編の前日のことだった。もっと自由にやろう。そう思っての京都旅だったのだ。
ガラスのかんざし
京都旅で訪れた京都芸術センターの図書室の書籍から発見したガラス製品があった。過去作られていたものが資料として載っていた。
それはガラスのかんざし。
ガラスの装飾がついたかんざしではなく、軸も全部ガラスでできているかんざしだ。これをソーダガラスで再現してみた。
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形はうまくいった。ガラスだから脆いのではないかと試しに力を入れてみた。
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ポッキリである。ガラスはかんざしとして使えるくらいの強度は持ちえないようだ。今販売されているかんざしのほとんどは軸に金属が使われておりガラスのかんざしは強度面で淘汰されたということなのだろう。勉強になった。
中空ガラスペン「風船」
京都で美術館を巡り帰ってきて何を作ろうかと考えたとき、思いつかなかった。ただ自由にやろう。そういう気持ちがあった。
しばらくは納品するガラスペンを作った。それが終わって夜寝て朝起きた時、昔「ふうせん」という中空ガラスペンを耐熱ガラスで挑戦してできなかったことを思い出した。ソーダガラスならできるのではないかと思った。昔よく使っていた鉛ガラスを選ばなかったのはソーダガラスの方が汚れや変質が少ないからである。透明感を活かしたい中空ガラスペンにはソーダガラスが適していた。
ソーダガラスは耐熱ガラスより冷めるスピードが遅く、ガラスを吹いて形を作りやすいのだ。
というわけで作ったぞ。「風船」
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「風船」の名は作り方に由来する。管ガラスの先端に溶けたガラスをつけて風船を膨らますように息を吹き込む。それを引き延ばして棒状にして軸を作る。ペン先をくっつけて先端を作り研磨して完成だ。
ガラスを2色組み合わせて使ったのでうつり変わる色合いも魅力のひとつだ。
ソーダガラスの鮮やかさが映えるガラスペンになった。
9月末にオンラインショップにて販売予定
中空ガラスペン「風船」は9/28(土)にオンラインショップにて販売開始予定だ。これからもう数日、作業をして作品登録するのでお待ちいただきたい。
下にオンラインショップのリンクを貼っておくぞ。
「筆者の心の原点は?」中空ガラスペンを作ったぞ《旅のガラス》第5回 創作編はいかがだったろうか。よければスキ、フォローいただけたらうれしいぞ。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回の旅のガラスをお待ちください。