【 Care’s World case 06 違和感から生まれた表現に、感情を乗せ、響き合える空間を 〜 HUNKA 木下裕章さん 〜 / -後編- 】
前編では、木下さんの現在の活動に至るまでの変遷を伺いました。
後編では、個人やHUNKAとして表現を通して感じてきたことについて深掘りしていきます。
前編はこちら。
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自分たちのことを表現する手段として
木下:水俣病というテーマを一つのきっかけとして、他の事象に対しても同じように、いろんな角度から考えるようになったと思います。
そこから他の事象に当てはめて「あ、ここのこういうところは、あそこと似ているな」「じゃ、あれは、あーいうふうにすればいいのかな」とか、自分が抱えている問題意識や課題を考え、そこがヒントになることもあります。
僕らの今の活動は水俣病の問題を伝えるためだけにやっているわけではありませんが、水俣に関わることで得た問題意識も活動に繋がっています。ありがたいことに、そこから、いろんな人と繋がってきました。
例えば、元々妻がきっかけで始めた音楽活動があります。僕はそれまで音楽というものはほとんどやったことがなくて。しかも、自分のことを表現する、ということ自体が得意じゃなかったですし、そのやり方もわかりませんでした。
でも、心のどこかで「何かしらのカタチで、自分のことを表現したい」とは思っていました。表現といっても、色々手段はありますが、テクノロジーの発達もあり、誰でも音楽を気軽につくりやすくなったことも、音楽を選択した理由の一つです。
木下:音楽活動をしているからといって、音楽家になりたいわけではありません。僕自身やHUNKAの暮らし方や生き方を表現する手段として音楽があるんです。
先ほどお話した野良仕事や水俣病を伝える仕事、そして、イラストやシルクスクリーンも同じような位置付けだと思っていて。どれか一つに特化して活動するのではなく、複数の道具を持っている状態にしておけたらいいなと思い、活動しています。
僕がつくった楽曲に『リクレイム』という曲があって、それはいろんなモノが埋め立てられたこのエコパーク水俣のことを想ってつくった曲です。僕は水俣に住んでいるので、この埋め立て地以外にも、水俣のことを考える曲をつくっていきたいと思っています。
普段の仕事では言葉をツールとしていますが、音楽というツールで伝えることで、普段伝わらない層にも、水俣の抱えている課題や問題を伝えるきっかけになるかもしれません。そして、それらは僕らが感じている違和感を解消するのも含めて、全て繋がっていると思っています。
感情を乗せ、間口を広げる
木下:僕は言葉だけで上手にお客さんに伝えることはまだできていません。「伝えたいことは本当に伝わったかな…?」と不安になることが多いです。
その時は理解したつもりでも、芯までちゃんと届かず、本当に理解できていない状況になることだってあり得ます。
音楽だと、感情を乗せて伝えやすいし、体に訴えかけられます。聴く人によって「カッコいい」「いい曲だな」から入ってくれるかもしれないですし、ライブであれば、実際に振動が伝わるので、直接体に訴えかけるという部分では、非常に効果がありますよね。
でも、まだその領域には僕らは達していないので、もっともっと練習しなきゃですね(笑)。
木下:先日、初対面の方に水俣病についてお話する機会があったんです。具体的に水俣病のことを初めて聞かれたそうで、故郷が抱えている問題や、その方自身の暮らしについて改めて考えさせられたとおっしゃっていました。
しかも、僕らの曲を調べて聴いてくださったようで、メッセージをいただいたんです。「あの時、案内してもらったのがあなたでよかった」「曲を聴きながら、あのシーンを思い出して、こんな自分でもいいんだと思えた」って。
その方なりに、僕らのエネルギーを感じ取ってくださり、自身の中で落とし込んでくださったと思うと、本当にありがたいですよね。
僕たちには何ができるのか?
それは日々模索している段階ですが、どれをとっても、何かしらに繋がっていることに変わりありません。
それは、僕たちの手の届く世界に限られるかもしれない。それでも、表現を届けることで、受け取った誰かにとって、次に繋がる状況が生まれるような空間や関係性づくりを続けていきたいです。
(終わり)
(前編はこちら)
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