
対話体小説ショート 「上司と部下」
「おめぇは本当に役に立たないし、迷惑ばかりかけるし、なんなの??会社のダニか???」
「・・・すいません」
「すいません、すいませんってそればっっかり!!でなーんも反省してねぇじゃねぇか!?」
「・・・誠に申し訳ございません、今後二度と遅刻など・・・・」
「やめろ!!!どうせ思ってもねぇんだろ?だって今まで俺が何度注意したと思ったんだ?それに遅刻の理由は???」
「・・・・それは・・・ついつい寝坊で・・・」
「はぁぁあああ、もう数えきれねぇよな?お前がさ、ここに新人で入ってきた時に、部署の皆に言ってたよな!『新人で分からない事ばかりですが、一日でも早く仕事に慣れ、一生懸命働かせて頂きますって!』あれから何年だぁ?もう5年以上も経ってんだよ!お前全然仕事のいろはも基本も守れねぇじゃねぇか!!!」
「・・・・誠にも」
「だから!!心にもない謝罪は良いから、誠意を見せろよ!!!どうせ仕事出来ねぇんだろ?給料泥棒で会社のダニだからさぁ!!今ここで丸坊主にしろ!」
「え!??そっそれはっちょちょっと」
「んだよ?出来ないのか?」
「・・・はっはい、少し頭を刈るのは・・・髪型も決めていまして・・・」
「仕事もしねぇのに給料貰う癖に、髪型だけ毎日整えてきてるから余計にむかつくんだよ!!丸坊主にした方が仕事だけ考えれる頭になるだろが!!!」
「・・・いえ・・・それは・・・」
「なんだ?丸坊主いやか??」
「はい、丸坊主だけは・・・!」
「んじゃあさ・・・土下座しろ!!!」
「え・・・」
「え・・・じゃなくて、土下座して今までの5年間、上司で面倒見てきた俺、いやこの課の全員に対して迷惑をかけたから、土下座して詫びろ!!」
「そんなぁ・・・」
「丸坊主も出来ないんだろ?だったら誠意の欠片くらい見せろや!!!」
「・・・まっまぁ土下座で済むなら・・・」
「・・・よし・・・課の皆を呼ぶから、この部屋で待て・・・」
「・・・・・」
「・・・・はい・・・みんな仕事中にすまんな!給料泥棒で会社のダニの○○がどうしても、誠意を見せたいから、来てもらったんだわ!!」
「・・・・・・・・はい」
「・・・よし!!○○!!この課のメンバー全員に謝れ!!!」
「はい!!・・・皆さん・・・××課長・・・5年間も私に対し、ご指導、ご教示していただいたのに、仕事が出来ず、業務がこなせず、ミスも多く、非常にダメな私で申し訳ございません!!!!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・ふぅ・・・・で、だ・・・どうだった!?どうだった!?」
「素晴らしい!見事な反省っぷりとダメ社員っぷりが出来ておりました!!!○○専務」
「・・・ふふ、そうか・・・いやいや××君も良い感じのパワハラ上司っぽさでてたよ!!」
「そうですか!ありがとうございます!!」
「いや、まさかね・・・正直丸坊主とかさ、土下座とかまで読めたけど、わざわざ課のメンバーを集めてみんなの前で土下座させる芝居なんてさ!」
「いやあ、自分でもあそこに凄くパワハラっぷり、見せつけたつもりです!!!」
「やぁ良かった良かった!」
「ご満足頂けたなら本当に良かったです、○○専務も見事なお芝居で感動いたしました!!!」
「そうかな!?いやぁ何度も役としてやってるけどさ、ダメ社員てのはどうも難しいね!」
「○○専務の実力でそりゃもうダメ社員なんて縁もゆかりもないですし、役なんてさぞ難しかったでしょうに!」
「そっそうか!!まぁその通り!全く私はこんな惨めな経験なんてしてこなかったからなぁ!全てイメージだよ!!」
「素晴らしかったです!」
「ははは!いいな、たまにこうして付き合ってもらって非常に楽しいよ××くん!もうあれだな!2人で劇団を旗揚げしても満員御礼だな!!!」
「いいですね!専務ほどの実力であれば、すぐ名俳優ですよ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・いやいや、君ほどではないさ・・・」
「いやぁ・・・そんな・・・専務ほどでは・・・あっあの・・・専務?」
「ん?」
「・・・どうかなさいましたか???」
「・・・いやいや目の前の名俳優・・・・・いや、カメレオン男に対して敬服してるんだよ」
「そそそっそれは!?一体どういうことでしょうか?」
「ん・・・まぁ、座って聞きなさい」
「っは・・・はい・・・」
「君には毎度この小芝居に付き合ってもらってるねー」
「いいえ、専務が是非オフィスでの経験をされてみたいとおっしゃるので!!!」
「そう・・・私は専務・・・いや現社長の実子であり次期社長候補でもある」
「っはい」
「だからこそだな・・・確かに私は普通の社員が経験するような、上司からの叱責、罵声、恫喝などとは無縁の人生だ」
「いえ、それは専務が非常に優秀で」
「もうその小芝居を辞めたまえ!!!」
「ひぇ!!えっえ、そそそんな芝居なんて」
「君を見ていると裏切られた気分になるよ、せっかく私が目をかけてあげたのに、私を嫌々享受し、私を侮辱していたなどとは」
「いえいえいえいえいえ!そんなこと!!!一切!!!」
「ここにSDカードがあるだろ」
「はい・・・?」
「この中に君がさっき、上司役で怒鳴ったことが入ってるとしたら?」
「え・・・?」
「再生しよう・・・《あーあ、まじかぁーまた専務との茶番だよ。茶番―、あいつ本当に社長の息子ってだけ、専務になって次期候補だろー、本当になんも出来ねぇバカだからさ、付き合うだけで疲れるわー、この会社に入ってもう5年経つのにクソの仕事もしないで、バカみたにデスクにいるだけで専務になって本当理不尽だよなぁ、あんな給料泥棒で会社のダニが社長の息子で、クソ茶番に付き合わなきゃなんないなんてさ》とまぁここくらいまでか」
「・・・いったいこれは・・・・」
「誰かは知らんが、私の机に置いてあったよ、本当に君は私の事を会社のダニと思っているようだねぇ」
「ちちちちがいま」
「もういい、君は転勤だ、顔も二度と見たくない、島流しにあってもらうよ」
「ちょちょちょっとまってください」
「はぁ、おもちゃが持ち主に歯向かっちゃいかんよ、君たちは選ばれてない人間だからねぇ」
「・・・・ふふふ」
「・・・・なに?」
「バー―――――カ!!!!」
「な・・・・・・・こいつ、おかしくなったか???」
「いや馬鹿だよ、あんた!俺が最初にあんたが此処に来てからまず教育係と側近として、あんたについた理由を分かってねぇんだよ!」
「なんだと・・・!?」
「あんたは勝手に俺があんたについて頭を下げたと思い込んでるだけだが、実はこれは指揮命令なのさ!」
「・・・・・なに?」
「全部社長の命令で最初からあんたにくっついて、逐一社長にあんたの仕事ぶりを報告していたってわけ」
「はぁ!?」
「そうそう、それであんたは、もうこの5年こんなクソみたいな芝居をする以外なにもしない、本当にダニのように寄生して、何かあれば社長の名前を出す。そして社長は最終判断を決意したのさ!!!今日あんたが、ICレコーダーにわざと俺が悪口を吹き込んだSDカードをみて、その反応次第で処罰しようと決めてたの!」
「そんなこと!!!親父は何も言わなかったぞ!!!」
「たりめぇだろ・・・あんた少しは社会を学べ・・・あんたの周りでゴマすってるやつとか、社長とか、本当に実力であんたを評価してたと思うか???」
「いや・・・そう・・・いわれて・・・も」
「んでさ・・・さっきの一連の流れも、今あの監視カメラで社長がご覧になってて、さっきメールであんたはもうクビだって、ちなみに家にも帰ってくるなとさ・・・大変だねぇ」
「おい・・・!ちょっと待てよ‼‼‼お前全部知ってたら俺に」
「いやいやいや、だから社長の指揮命令なの、あんたより身分が上な人の命令だから」
「・・・おい・・・今まで可愛がって」
「可愛がってやったのは俺の方だからな?つかの間のボンボン天下楽しかったろ??」
「くっくそー・・・そっそんな・・・・俺は・・・・どうしたら」
「あー笑えるわ、くくく・・・・そういえばさ・・・あんたとのこんな小芝居も気がついたらもう30回目だ」
「・・・そっそんなにしてたか・・・」
「ああ・・・しかも全部設定はあんたがダメ社員で、俺が切れる上司役」
「・・・そう・・・だけどもう・・・意味ないし・・・」
「いやぁそれがさぁ・・・俺本当に劇団の知り合いがいるんだけど、ちょうどダメで自堕落でどうしようもないクズの役を探してるんだよね」
「え・・・」
「あんたさえよければオーディション紹介してやろうか?・・・実は23回目の時のパチンカスの動画をこっそり録って演出家の奴に送ったの!そしたらそいつ、滅茶苦茶あんたの事誉めててさー『こんなダメな人間の空気を出せる人いない』って!」
「あ・・・あの営業も行かずパチンコ行ってたやつの・・・えっえっでっでも、さささっきまで私はあああの、××さんに対して酷い暴言を吐いてましたよ!?!?」
「いやだからこその推薦だよ、そこも含めてあんたならダメ人間の名俳優になれる気がするなぁ、あんたその素質はあると思うんだ」