見出し画像

【面接官トレーニング】 面接内での自社の魅力の伝え方

人材採用(ここでは中途(キャリア)採用をテーマとします)における面接官の重要な役割は4つあると考えています。
ここでは、人材募集している部門の管理職が面接官を行うことを想定しています。

面接官の4つの重要な役割

  1. 能力・経験の見極め

  2. 採用リスクの見極め

  3. 自社への惹きつけ・・・今回のテーマ

  4. 辞退リスクの早期把握

今回はこの4つの役割の中で、人材獲得の難しさが増す中で、より一層重要視されている「自社への惹きつけ」について整理してみました。

面接は「選ぶ場」であると同時に「選ばれる場」

会社と面接官にとって、面接は候補者を評価・選定する場ですが、一方で、候補者にとっても会社・募集ポジションそして面接官 (入社後に一緒に働く上司として) を評価・選定する場であることを、改めて面接官は認識しておく必要があります。
そのため、面接官にはこれまで同様に候補者の能力・経験・ポテンシャルを見極めることだけでなく、候補者に対して自社・募集ポジションそして面接官自身の魅力を伝えることも求められています。


【面接官用チェックポイント(1)】 「自社」および「募集ポジション」の魅力

中途(キャリア)採用の面接内では、候補者の能力・経験・ポテンシャルの確認と共に、候補者に対して自社や今回募集しているポジションの「魅力(候補者にとっての魅力)」自分の言葉で伝えていくことも大事です。
面接官が「魅力」を自分の言葉で語れるようにするために、また、HRの採用担当やHRBPが面接官による事前の「魅力」の整理をサポートするために、以下に7つの視点を整理しました。
候補者の転職理由や次の会社への期待(多くの場合、成長実感・貢献実感や安心して働ける環境(働き方等)等)を事前にイメージしながら整理するとより効果的です。

【参考】社員が組織に対して期待する7つの「感」は こちら

代表的な「組織・募集ポジションの魅力」の7つの視点

(1) ビジネス環境 

 ・会社や事業部門のビジネス規模や将来の成長性、社会的な意義・貢献
 ・経営/事業戦略における所属部署・今回の募集ポジションの重要役割 等
(2) 経験機会
 ・募集ポジションの役割・責任・権限・経営へのインパクトの大きさ
 ・高度な または 先進的な業務内容・業務環境 / 業務の広がり・スピード
 ・多様な経験・技術・価値観を持つ人材との協働機会
 ・勤務地域 (海外赴任機会など) 等
(3) キャリア開発支援体制
 ・多様な挑戦・成長機会 / キャリアパス
 ・会社・所属部署によるキャリア開発支援の仕組み / カルチャー
 ・上司によるサポート 等
(4) 人材開発・オンボーディング環境
 
・入社時研修の概要・オンボーディングの内容 / 入社後のフォロー体制
 ・会社・所属部署の人材開発 (研修他各種プログラム) の仕組み・体制
 ・未経験者のサポート体制 / キャリア入社者の成長事例・ストーリー 等
(5) 働き方
 
・オフィス環境
 ・働く時間・場所の柔軟性 (制度・風土) 
 ・育児・介護の両立支援 
 ・女性・シニア等の活躍環境 等
(6) カルチャー
 
・会社・所属部署が大事にしている価値観・行動規範
 ・会社・所属部署の取り組み(イベントなど)
 ・会社や所属部署・職場の雰囲気
 ・募集ポジションで一緒に働くメンバーの雰囲気・人物像 等
(7) 評価・報酬
 
・認められる社員の特徴
 ・公正な評価・報酬の仕組み(制度・運用)
 ・非金銭的な報酬 等

面接内での「魅力」の伝え方:一方的な説明にならないように
魅力を一方的に羅列して語っても必ずしも候補者に響くとは限らないため、候補者が何を魅力として感じるかに合わせて、インタラクティブな会話の中で伝えていくこと (を意識すること) が効果的です。
具体的には、面接官から「転職先企業に求めていることは何ですか?転職先を選ぶ基準は何ですか?」や「どのような時に成長実感・貢献実感を感じますか?」など問いを投げかけ、候補者からの回答に合わせて伝えていく方法があります。例えば、候補者がより大きな役割で仕事ができる環境を求めているのであれば、その機会や可能性に関する魅力を伝えていく等です。

どうしても魅力を見つけられない場合:考えや目指していることを伝えてみる
必ずしも7つの視点全てについて魅力を出せなくてもよく、どこかの視点に焦点を絞って強調する方法もあります。また、面接官(管理職)として組織創りの途中であれば、今はまだ未完成であるがこういう組織・環境・機会を創りたいという"目指していること"や"取り組んでいること"を語ることも、候補者にとっては有益な情報として受け取られるはずです。

【面接官用チェックポイント(2)】 「面接官自身」の魅力

ここでは、面接官=募集ポジションの上司 (直属上司・間接上司) であることを前提とします。
"選ばれる面接"のためには、上記の自社や募集ポジションの魅力だけでなく、面接官(=入社後の上司) に対しても魅力、少なくともポジティブな印象を感じてもらうことが大事です。候補者にとっての面接官(=入社後の上司)の魅力とは、一言で言えば「この人の下で一緒に働きたい」と感じることです。面接官自身の魅力についても同様に、下記に視点を整理しました。

代表的な「面接官自身の魅力」の4つの視点

(1) 目指している組織像 (候補者「そんな組織で働きたい」)
 
・面接官が組織のリーダーやマネジャーとして目指している組織の姿を語る/その理想の組織で働いているメンバー一人ひとりの姿も語る 等
(2) 傾聴・共感 (自分のことを理解しようとしてくれる)
 
・候補者の話を否定せずきちんと聴く/候補者がなぜそういう意見・考えを持つようになったのかまで関心を持って聴く 等
(3) マネジメントスタイル (求めていることがわかりやすい・納得できる)
 
・大事にしている価値観や判断基準、そこに至る原体験やストーリーがある (ただし、考え方を一方的に押し付けない) 等
(4) 能力・経験・マインド (ぜひ指導してほしい)
 
・実践経験に裏打ちされた能力/成功体験に固執せず学び続ける姿勢/挑戦する姿勢/柔軟な考え方 等

明らかに不合格でも魅力を伝える必要があるか
リアルまたはオンラインによる口コミを意識し、面接の途中で明らかに不合格であると内心で判断しても、他の(潜在的な)候補者のことを考え、目の前の候補者には魅力は伝えることが重要です。

採用に関するプロセスに「魅力の整理」を組み込む

できれば面接の直前に面接官が魅力を整理するのではなく、採用プロセス全体の中に魅力整理のフェーズを組み込んでおくとより効果的です。
なお、外部からの採用時だけでなく、社内公募による募集・面接用としても同様に考えられます。

1.各部署からHRに中途(キャリア)採用申請をする際に、申請書に募集ポジションの魅力も整理してもらう 
・申請書に魅力記入欄を付けておく
・採用申請の段階で募集ポジションの魅力が分かると、採用マーケティングなど募集活動に効果的に活用できる

2.面接官や管理職の研修時に、自社・所属部署や自身の魅力を整理してもらう時間を設ける
・管理職全員や新任管理職に面接官研修受講を義務付ける
・研修の中で、自社・所属部署や自身の魅力を整理する

管理職全員に対して「魅力」を整理してもらうことの効用
会社や部署・各ポジションの魅力や管理職自身の魅力は、採用や社内公募といった人材獲得時だけでなく、現存メンバーを対象としたチーム創りにおいても大事な視点です。そのため、すぐに面接官にアサインされる予定が無くても、研修受講の中で組織のリーダー/マネジャーとして自組織や自身の「魅力」を整理しておくことは有用と考えています (面接官研修の中でそのような声を頂くことが多くあります)。

面接評価シートに記録して引き継ぐ
候補者のキャリアプランや次の転職先に求めることや伝えた(伝わった)魅力については、次の面接官のために、または最終面接官であれば入社後の教育担当用として、確実に面接評価シートに記録してもらいます。

リファラル採用時にも重要
自社・自組織の魅力は、採用面接時だけでなく、リファラル採用時にも潜在候補者に伝えていく場面があります。社員向けのリファラル採用の研修・ガイド等でも自社・自組織の魅力の整理や伝え方について説明していくことは有効です。

【参考】中途(キャリア)採用力強化のためのタスクリスト:タレントアクイジション強化 はこちら

【参考】中途入社者・異動者のための「オンボーディング」用チェックリスト はこちら

【参考】中途入社者のスムーズな受け入れのための「オンボーディング」プログラムリスト はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?