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生成AIを活用した「スキルマップ」の作り方

「スキルマップ」に関する情報や、実際に作成・導入されている企業の事例を目にすることが増えてきています。また、現在は未作成・未導入でも、スキルマップには関心を持たれている人事の方も多いのではないかと思います。
最近、日本でも話題になりつつある「スキルベース組織 (Skills Based Organization) 」においても、スキルマップは重要な位置付けとなります。

【参考】スキルベース組織(Skills Based Organization)についてはこちら(note)

「スキルマップ」の導入は、後述の「1.スキルマップ作成・導入の目的整理」の通り、組織にとっても社員個人にとっても様々な利点があります。

一方で、スキルマップの作成や運用(内容の追加・更新など)の労力は決して小さくなく、それがスキルマップ作成・導入のハードルにもなっているという声も耳にすることがあります。

スキルマップ作成プロジェクトの実際
実際、スキルマップ作成プロジェクトにおいては、スキルマップの作成に数ヶ月から場合によっては1年もしくはそれ以上(特に多くの職種のマップを用意する場合等)かかるケースもありました。また、スキルマップの運用(マップ内容の更新やスキルアセスメントの実施、スキルデータ活用等)のために、人事や人材開発チームの人員を増やす必要があったケースもありました。

いかにスキルマップ作成・更新の負荷を減らせるか
このスキルマップ作成・更新の負荷を少しでも減らすために、生成AIの活用を試みています。まだまだ試行中ではありますが、ここまで確認できたスキルマップ作成・更新への生成AIの活用方法を整理しました。

【参考】スキルデータ活用についてはこちら(note)
【参考】タレントマネジメントで使えるChatGPTのプロンプト実例集はこちら(note)
【参考】タレントマネジメントで使えるChatGPTのプロンプト実例集 Vol.2はこちら(note)


1. スキルマップ作成・導入の目的整理

スキルマップを作成・導入する代表的な目的例を整理しました。下記は実際のスキルマップ作成プロジェクトの事例ですが、生成AIで「スキルマップ作成・導入の目的を挙げて」と指示すると様々な目的例を挙げてくれます。

①会社にとって
・戦略上、必要としているスキルを社員に具体的に伝えることができる
・マネジャーによる部下育成の際の具体的なガイドとなる
・社員の保有スキルを把握することで、最適配置や効果的な育成を検討できる 他
②社員にとって
・担当業務で必要なスキルを具体的に理解することができる
・将来、挑戦したい仕事で求められるスキルを理解することができる
・自身の保有スキルを俯瞰的に把握し、具体的な成長計画を立てることができる 他

2. スキルマップの作成プロセス

スキルマップ作成の中で生成AIを活用可能な領域を整理するために、まずはスキルマップの作成プロセス例を記載しました。
以下のプロセスは実際のスキルマップ作成プロジェクトのプロセス例ですが、ここでも生成AIに「スキルマップの作成方法や作成プロセスを教えて」と指示すると書き出してくれますので、ぜひ併せてご参照ください。

スキルマップ作成プロセス例
(1) スキルマップ導入目的の設定
(2) スキルマップの作成方針の設定
(3) スキルマップ作成の体制構築 (特にビジネス部門の協力体制)
(4) スキルマップの体系/作成対象(職種等)の設計
(5) スキルマップの形の設計(スキルの記述・表現方法等)
(6) スキルの保有レベルの設定
(7) 各作成対象の重要業務の抽出 *関係者へのインタビュー実施
(8) 重要業務の必要スキルの設定 *関係者へのインタビュー実施
(9) 関係者によるレビューと最終化

参考: スキルマップ運用設計プロセス例
(1) スキルマップの活用方法の設定 (スキルアセスメントによる最適配置 等)
(2) スキルマップの活用プロセス/ガイド類の整備
  - スキルアセスメント方法
  - 人材配置へのスキルデータ活用方法
  - スキルマップと育成プログラムとの連携
  - キャリアプランニングへのスキルマップ・スキルデータ活用方法
  - その他、スキルデータの分析・活用方法 等
(3) スキルマップの運用プロセス/ガイド類の整備
  - スキルマップの公開方法/社員への浸透方法 (ロールモデルのアサイン等)
  - スキルマップの追加・更新方法

3. 生成AIの活用方法 (プロンプト例)

上記のスキルマップ作成プロセスの各ステップにおける生成AI活用方法=プロンプト例を整理しました。下記プロンプトに具体的な情報を付加していけば回答精度は上がっていきます。ただし、外部に公開していない情報や個人情報等の入力にはくれぐれもご注意下さい。
なお、「スキルマップの作成において生成AIをどのように活用できるか」を生成AIに問うこともできます。

(1) スキルマップ導入目的の設定
プロンプト例「企業においてスキルマップを作成・導入する目的やメリットを教えて。目的・メリットは、 会社にとってと社員にとってそれぞれ挙げて」

(2) スキルマップの作成方針の設定
プロンプト例「スキルマップの作成において注意することは何?」「スキルマップ作成プロジェクトにおけるスキルマップ作成方針の例を書いて」

(3) スキルマップ作成の体制構築
プロンプト例「スキルマップの作成にはどのような体制・チームメンバーが必要?」

(4) スキルマップの体系/作成対象(職種等)の設計
スキルマップ体系=スキルマップ種類としては、「テクニカルスキル(各職種の業務スキル)」「リーダーシップ/マネジメントスキル」「ビジネススキル」「コンピテンシー/マインドセット」等がありますが、下記プロンプトで問うと細かく書き出してくれます。
プロンプト例「スキルマップ体系=スキルマップ種類を教えて」

また、テクニカルスキルマップ(各職種の業務スキルのマップ)作成に必要となる職種の区分についても、「○○業の職種区分を教えて」で書き出してくれます。
個別の職種区分をさらに細かくしたい場合のプロンプト例は「○○職をもっと細分化して」となります。

(5) スキルマップの形の設計
スキルマップに記載する「スキル」の表現・記述方法はいくつかパターンがあり、「○○力 (例: プレゼンテーション力)」のように単語で表記する方法や、「顧客への提案においてメッセージが明確で説得力のあるプレゼンテーションを行うことができる」のような文章の表現方法があります。
プロンプト例「スキルマップにおいて「スキル」の表現・記述方法にはどのような種類がある?」

(6) スキルの保有レベルの設定
プロンプト例「スキルの保有や習得のレベルを5段階で書いて」「各レベルの到達基準や評価基準を教えて」

(7) 各作成対象の重要業務の抽出
プロンプト例「○○職の重要業務を5つ挙げて」「それぞれが重要である理由を教えて」
その職種のトップや管理職等にインタビューする際に、白紙から重要業務を挙げてもらうよりも、生成AIによる"たたき台"があることで重要業務抽出を効率的に進められることが期待できます。

(8) 重要業務の必要スキルの設定
プロンプト例「上記の重要業務それぞれについて、重要なスキルを5つずつ挙げて」
さらには「スキルは「知識」と「方法論」に分けてそれぞれ書いて」とすることで、カテゴリー別にスキルを記述してくれます。
このスキルを書き出して整えていくことが最も時間と労力がかかるステップですが、(7)重要業務抽出と同様に、生成AIによる"たたき台"があることで関係者へのインタビューやその後のスキル整理を効率的に進めることができます。

生成AIに異なる職種のスキルについて類似しているスキルをグルーピングしてもらうことも可能です。
プロンプト例「下記のスキルを、類似しているスキルごとにグルーピングして、そのグループ名を書いて 」と書き、その下に対象のスキル名一覧を記載
例えば、各職種で名称が異なる分析系のスキルを「分析」とグルーピング(タグ付け)しておくことで、会社として職種を超えた異動を行う場合や、社員が職種を超えたキャリアチェンジを考える場合に、異なる職種間のスキルの"読み替え・翻訳"がしやすくなります。

(9) 関係者によるレビューと最終化
スキルマップの最終化に当たっては、社内の関係者(各職種のトップ・管理職や専門家等)にチェックをしてもらう必要がありますが、そのチェックポイントを生成AIに書き出してもらうこともできます。
プロンプト例「作成したスキルマップのドラフト版を社内専門家にチェックしてもらう場合のチェックポイントを書いて」
さらに確認相手を設定することもできます。例えば、経営企画部に経営計画と連携しているか、戦略遂行に必要なスキルが反映されているか等をチェックしてもらうイメージです。
プロンプト例 「○○部(例: 経営企画部)に確認して欲しいことをチェックポイントとして書いて」

その他: スキルマップの活用・運用において
また運用においても、例えば上司向けの「スキルマップを使った部下のスキルアセスメントガイド」を作成するために、記載すべき内容案を生成AIに作ってもらうことも可能です。
プロンプト例「上司が部下のスキルを、スキルマップを使ってアセスメントする場合の注意点やアドバイスを書いて」

4. スキルマップを作成せず生成AIを活用

最後に、生成AIを使うことで必ずしも精緻な「スキルマップ」を作成しなくても、社員のスキルの把握や成長・キャリアプランの作成サポート等はできるのでないかとも感じています。

例えば社員は、自身の主要業務を記入して「この業務を担当することで獲得できるスキルは何?」と聞けば 生成AIがスキル例を書き出してくれるので、スキルマップの代わりとしてセルフアセスメントの参考にできます。上司が部下の保有スキルを評価する時も同様にガイドとして使えるでしょう。

さらに社員がキャリアプランを作る時や、上司が部下の育成プランを作る時にも、生成AIに、自分・部下の保有スキルを記載した上で「保有スキルを活用可能な職種や仕事、キャリアパスは何?」「○○職の専門性を高めるためには、さらに強化獲得した方がよいスキルは何?」と聞けばアドバイスを得られそうです。

あるポジションのスキル要件を満たす最適な社員を選びたい場合は、スキル要件や社員の保有スキルが統一的に明記されていなくても、「この中で、○○ポジションに必要なスキルを持つ最適な人材は誰?」と聞くことで、該当社員を抽出方法も検討できそうです。


【参考】スキルベース組織(Skills Based Organization)についてはこちら(note)
【参考】スキルデータ活用についてはこちら(note)

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【参考】タレントマネジメントで使えるChatGPTのプロンプト実例集 Vol.2はこちら(note)


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