ベンチャー企業には有難い!助成事業に採択頂くために私が取り組んだこと
こんにちは。R&D室の波多野です。
noteではこれまで、知財や事業開発担当の私が自分でR&Dを始めたきっかけ、研究成果のポスター発表までの道のりについてお話をしてきました。
今回は、助成事業の活用やそれに採択頂くために重要なことについて、私が5年間で学んだことを書いてみたいと思います!
助成事業に採択頂けると得られることって?
当社は、創業5年の社員約20名のスタートアップです。
当社で開発しているのは、『プログラム医療機器』と呼ばれるデジタル技術を活用して病気の診断・治療を支援する医療機器でなのですが、創業時には、プログラム医療機器の開発・事業化を全体を通してやったことがあるメンバーは誰もいませんでした。事業と研究開発を前に進めるためのヒト・モノ・カネのリソースも、医療機器や、医療業界の知見も足りないことだらけです。
そこで、当社のメンバーだけでは分からないこと、できないことを前に進めるために、東京都や国の助成事業を最大限に活用させて頂いて、七転八倒しながら前に進めています。
”助成事業”と聞くと、助成金が頂けるのかな?と思いますが、実は助成事業で得られることは、資金だけではありません。
例えば…
カタライザーによる全般的な伴走支援
日本の中でもトップクラスの各領域の専門家からの、薬事や知財、事業計画の策定についての詳細なアドバイス
知財や市場調査の無償での実施
海外の専門家へのコンタクト
精神的なご支援(一緒に頑張って前に進めてくださる方がいるという意味で)
などがあります。
新規事業向けの研究開発+事業計画策定+事業開発を専任担当1名で担当している私としては、なくてはならないご支援を頂いています!
これまでに自分で申請書を書いて、採択頂いた助成事業を振り返ってみると…
すでに10を超えていました。
どの助成事業も担当くださる方が、サポーティブで温かい方ばかりです。心強いご支援にとてもとても感謝をしています。
助成事業に採択頂くために重要なこと3選!
次に、助成事業に採択頂くために重要なことについて、私がこの5年で学んだことを振り返ってみたいと思います。
1,審査基準への合致
なんといっても一番重要なのが、「審査基準に合致する申請書類を作成すること」、そのために「事業計画を精緻に作りこむこと」です。
例えば、最近応募した、海外特許出願費用に対する助成事業である『グローバルニッチトップ助成事業』の場合は、知財に関する助成事業にも関わらず、審査基準に知財以外の項目が多数入っています。
具体的には、資格審査や経理審査(財務内容)に加えて、事業上の観点で、
・技術・製品の卓越性・将来性
・事業戦略の妥当性・実現性
・知財戦略の妥当性・実現性
の3点が審査の基準に入っていました。
申請書類を書く際には、当然審査員がこの判断基準に照らし合わせてよいと思って頂けるように記載する必要があります。
2,助成事業申請の順番
知財の助成事業に応募するぞと思うと、何を書けばよいのか困ってしまいそうな項目ですが、精緻な事業計画が策定できていれば、後は、フォーマットに合わせて書き下ろせばよいと言うことになります。
私の場合、早期に事業計画策定のご支援が頂ける「PwC財団の助成事業」や、「東京都 先端医療機器アクセラレーションプロジェクト」に採択頂いて、手厚いご支援を頂きながら事業計画を作りこんできました。そのおかげで、その他の助成事業に採択頂きやすくなったと感じています。その意味では、申請する助成事業には順番があって、事業計画の策定支援を受けられる助成事業を早めに受けておくのがお勧めです。
3,審査員目線を考慮
助成事業の申請書作成において重要な点がもう1つあります。
それは審査員の目線で、分かりやすい内容になっているか?ということです。自分では審査基準に合致した形で書いているつもりでも、他の人から見るとそう見えないということは多々あります。私の場合は、あまり上手に文章が書けなくて、、、、上司や、助成事業の担当者の方に記載途中の申請書を見てもらって、分かりにくいところを指摘してもらっています。
まだまだある助成事業申請にあたってのポイント!
助成事業に採択頂くために重要なポイントがもう一つあります。
それは、その助成金や業界に関する隠れた前提を知ることです。
例えば、募集要項には記載がないけれど、実は、”新”医療機器のみを対象にしていて、”改良”医療機器は助成事業の対象にならないということがあります。事業戦略を描く上では、医療機器承認の準備に必要な期間やお金とのバランスを考えて標榜したい臨床性能を控えめにして、改良医療機器で承認を取りに行くということも考えられます。でも、その事業戦略だと助成事業の対象になりません。
助成事業の内容が自社やその事業の事業戦略に合致していることはとても重要なので、事前に助成事業の担当機関や、以前に助成事業に採択されている企業に話を聞くことも有効だと思います。
助成金の申請書を書くことで学べること
この会社を立ち上げてから助成金の申請書を10個以上は書いてきたのですが、実は記載するだけでもとても勉強になるなと感じています。理由は、その業界における常識や、事業で成功するための一般的なポイントを知ることができるからです。
ある助成事業の申請書類はエクセルで30シート分くらいあったのですが、この項目自体が、医療機器の事業化に考えておくべきポイントが網羅されたものになっています。そのため、各項目で何を問われているかを考えたり、準備をすることによって、研究開発や事業を進める上での重要な視点を学ぶことができて、とても勉強になっています。