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【CFRP知恵袋】原料となる炭素繊維について

「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」は、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて成型加工します。
この記事では、CFRPに使用される炭素繊維について紹介していきます。
(※そもそも「CFRPって何?」という方はまず下の記事をお読みください。)


炭素繊維とは?

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CFRPの原料となる炭素繊維は、文字通り炭素からなる繊維です。
アクリル繊維または、ピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を高温で炭化させて作った繊維で、アクリル繊維を原料にして作ったものをPAN系、ピッチを原料にしたものをピッチ系と呼びます。

 - PAN系炭素繊維

PAN系炭素繊維の単繊維は太さは約5-7µmほど。
この多数の単繊維で構成された繊維の束をフィラメントと呼びます。

CFRPのプリプレグを選ぶ際に「クロス材(3K)」など(K)という単位の数字を見ることがありますが、この(K)はフィラメント数のことで、1束あたり何本の炭素繊維が使われているかを示しています。
1K=1,000本なので、3Kは1束につき3000本のフィラメントが使われています。

さらに、1K~40Kのフィラメントの束をトウと呼びます。
1K~24Kまではレギュラートウ(スモールトウ)、40K以上でラージトウと呼ばれます。それぞれの特徴や主な使用用途を下記にまとめます。

【レギュラートウ】
特徴:低密度、高比強度、高比弾性率
用途:航空機や人工衛星の材料や、ゴルフ用シャフト、釣り竿、テニスラケットといったスポーツ・レジャー関連

【ラージトウ】
特徴:レギュラートウと比較すると安価
用途:風車や自動車などの材料など産業用

 - ピッチ系炭素繊維

ピッチ系炭素繊維の単繊維の太さは約7-10µmほど。
原料の違いによりさらに等方性ピッチ系メソフェーズピッチ系に分類され、一般的に等方性ピッチ系からは汎用の炭素繊維が、メソフェーズピッチ系からは高強度、高弾性率の炭素繊維が製造されます。
それぞれの特徴や主な使用用途を下記にまとめます。

【等方性ピッチ系炭素繊維】
特徴:高い柔軟性、低熱伝導性、優れた摺動特性
用途:高温炉用の断熱材や自動車のブレーキパッド・クラッチ材など

【メソフェーズピッチ系炭素繊維】
特徴:高弾性率、優れた振動減衰特性、高熱伝導性、低熱膨張率
用途:印刷用・フィルム用などの工業用ロール部材、薄型テレビ用大型板ガラスの搬送用ロボットアーム、人工衛星用部材など

炭素繊維の特徴

炭素繊維の特徴をシンプルに表すと「軽くて強い」「軽くて硬い」ことです。

比重:鉄の約 1/4、アルミ合金の約 2/3
比強度:鉄やアルミ合金の10 倍以上
比弾性率: 鉄やアルミ合金の5 倍以上


繊維状態のままで使用されることはほとんどなく、樹脂を含浸させて成形しCFRPなどの複合材料にします。
こうすることで、上記の特徴を取り入れた材料としてさまざまな形に加工して使用することができるのです。

まとめ

今回調べてみて、CFRPの原料となる炭素繊維にも「PAN系」と「ピッチ系」という種類があり、細かな特徴によってそれぞれ用途も異なるということが分かりました。
ちなみに市販の炭素繊維の約9割はPAN系炭素繊維で、残りの1割がピッチ系だと言われています。これは性能やコストなどの総合的なバランスを見た時に、ピッチ系に比べてPAN系の方が優れており使い易いためです。

今回で炭素繊維についての知識が少しついたので、次はCFRPを成形するために炭素繊維と併せて使われる「樹脂」についてまとめてみようと思います。
それではまた!


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