見出し画像

マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」3キャストそれぞれのキスシーン


マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」にはバルコニー・デュエットという、恋に落ちたロミオとジュリエットが幸せの絶頂で踊り、ファーストキスをするパドドゥがあります。マシュー・ボーン自身が「ダンス公演の中で最も長いキス」とインタビューで答えていましたが、このキスシーンを見るたびに毎回本当に幸せな気持ちになります。マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」は確かに悲しい話ではあるけど、あのバルコニーデュエットは見てる方も幸せな気持ちになるのでぜひ沢山の人に見て欲しいです。
私は今回の舞台で幸せなキスシーンを見るたびに、自分が初めて大好きな人とキスをした時のことを思い出して1人で幸せな思い出に浸っていました。今回はダンサー達がどれだけ幸せなキスシーンを披露してくれたのか思い出せる限り書いていきます😆

バルコニーデュエットにおける3キャストそれぞれのキス

まず結論から言って、どのキャストもキスシーンは本当に幸せそうで、恋に落ちて自分の気持ちを止められなくなってしまったロミオとジュリエットそのもので、本当に見ていて幸せな気持ちになりました。初めてキスした時の喜び、興奮がダイレクトに客席に伝わってきて、こちらまで嬉しくなってしまいました。お互いが今か、今かと近づいていってグーッと引き寄せられてキスして離れられない感じが現れており、恋が始まった時はあんな感じに衝動に駆られて沢山キスしたことを思い出しました。
マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」を5回見た私が保証しますが、バルコニーデュエットのキスシーンを見た方は、好きな人と初めてキスした幸せな瞬間を思い出して、見ているあなたも幸せな気持ちになれること間違いなしです。

今回の3キャストのキスシーンは、もちろん振り付けやキスするタイミングは同じなのですが、演じているダンサーが違う以上、その表現には個性が出ます。
たとえば今回の日本ツアーのファースト・キャストのモニーク・ジョナスとパリス・フィッツパトリックの回では、それまで感情をあまり表に出さずどこか辛そうだったモニークがキスをした後に驚くような満面な笑みになって、その表情のギャップでジュリエットの喜びを表していたことが印象的でした。2019の初演時からロミオを踊っているパリスは愛に飢えており、ジュリエットが愛おしくてたまらず、心臓をバクバクさせながら思いっきりキスしており、ロミオの胸の高鳴りがこちらまで伝わってくるようでした。

セカンド・キャストのハンナ・クレマーとロリー・マクラウドの2人はどちらも感情表現がハッキリしており、本能的に惹かれて、動物的にお互いを貪るように激しいキスをしているのが印象的でした。マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」ではティボルトがジュリエットに執着しているのですが、この2人の回ではロミオもまたティボルトとは違う形でジュリエットに執着しているような気がしました。ですがロミオに関してはジュリエットも受け入れているので、執着しようが依存しようがOKでしょう。激しい恋に落ちてお互いを求めあうハンナとロリーのキスシーンはグッと心を掴まれました。

上記2ペアがお互い求め合って、内側から湧いてくる欲望に従って激しいキスシーンをしていたのに対し、ブライオニー・ペニントンとジャクソン・フィッシュのキスシーンはどこかナイーブで繊細なキャラクター像を演じている印象を受けました。ブライオニーは3キャストの中では一番怒りに満ちたジュリエットという感じで、力強い表現が印象的でしたが、恋心やキスに対してはどこか分からないものに近づいているような恐れを感じました。ジャクソン演じるロミオも上議員議員の息子という設定で、両親に無視されながら、感情を表に出さないようにしながら生きてきたように見えました。そんなジャクソンが感情を抑えようとしながら抑えられずにキスしてしまう様子、ブライオニーが初めて愛情あるキスをして恍惚となる様子が印象的でした。

3キャストとも心を掴まれる恋する喜びに溢れるキスシーンでした。好きな人と初めてするキスは誰にとっても特別であり、見ているこちらも昔を思い出して甘酸っぱい気持ちになります。今思うと最初にキスする時ってなんであんなに長時間キスできるんだろうなぁと思いますが、今回のロミジュリを見てあの衝動も恋の醍醐味だなとか思ったり😊

マキューシオとバルサザーによる男性同士のキス

マシュー・ボーン「ロミオ+ジュリエット」に登場するマキューシオはゲイという設定で、バルサザーという男性が彼の恋人です。
男性同士のキスシーンというと、ビックリされる方が多いかもしれませんが、今回の主役はあくまでもロミオとジュリエットなため、彼らのキスシーンはエロティックではありますが、ロミオやジュリエットのように胸の高鳴りを表すような激しいものではありません。マシュー・ボーン自身もゲイですし、今やゲイは周りに普通にいるので、今後は男性同士のキスシーンも普通にバレエ作品に出てくるのかなと思います。男性同士のキスシーンに抵抗がある方は、美しい人同士による美しいキスシーンを見れると思えばいいのではと思います。

マキューシオとバルサザーによるキスシーンは1幕のパーティの場面では恋する2人の自然なスキンシップで見ていて素敵なのですが、ティボルトに強制される部分は見ていて悲痛な気持ちになります。同じ相手にキスをするのでも状況が違えばこれだけ違うものに見えるという演じ分けも見どころだと思います。

(3:12の左後ろの男性カップルがマキューシオとバルサザー。後半にはもっとエロティックなシーンもあります)

印象的だったキス(ストーリーのネタバレになります)

この段落はネタバレとなりますので、見たくない方はそっとブラウザを閉じてください。


マシュー・ボーン「ロミオ+ジュリエット」の印象的なキスシーンはバルコニー・デュエットが挙がると思いますが、個人的には最後に死んでしまう場面でのキスシーンが一番印象に残りました。
ロミオはジュリエットにキスをしながら絶命するのですが、バルコニー・デュエットの幸せの絶頂のキスシーンと、最後の力を振り絞りながらジュリエットにキスをするシーンの対比を感じ、マシュー・ボーンはキスによって絶頂とドン底を表現したのかと思いました。バルコニーの激しく喜びに満ちたキスはもちろん印象的でしたが、ラストの絶望的なキスも同じくらい強く印象に残っています。

沢山の印象的なキスシーンが出てくる「ロミオ+ジュリエット」の舞台をぜひ沢山の方に見ていただきたいです。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集