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バレエ感想「椿姫」シュツットガルト・バレエ団


シュツットガルトバレエ団「椿姫」を見に行きました。椿姫といえばジョン・ノイマイヤー振付なのでハンブルクバレエ団の作品かと思ってしまいますが、実はマリシア・ハイデとシュツットガルトバレエ団のために作られた舞台です。ちなみに初演は1978年11月4日でした。

音楽はヴェルディの同名オペラの曲ではなく、全編に渡りショパンの曲が使われています。マルグリット・ゴーティエのモデルとなったマリー・デュプレシは肺結核で亡くなりましたが、ショパンも同じ病で苦しみ亡くなりました。そのためノイマイヤーはショパンの曲をバレエ「椿姫」に使いました。
一気に当時にタイムスリップさせてくれるような数々の衣装は巨匠ユルゲン・ローゼによるもので、ダンサー達の立場や心情を美しく表現します。

会場のお花にも椿が使われていて美しかったです。

11月9日(土) Rocio Aleman and Martí Paixà

ロシオ・アレマンとマルティ・パイジャは今回の「椿姫」公演のメインビジュアルにもなっており、バレエ団イチ押しの期待のペアなんだろうなと思い楽しみにしていました。

マルグリット役のロシオ・アレマン(Rocio Aleman)もアルマン役のマルティ・パイジャ(Martí Paixà)も結構若々しくて、溌剌としていて煌めいていました。
マルグリットはアルマンを愛するがあまり終盤はずっと泣きながら踊っており、あまりの悲痛さに心を打たれました。1幕から2幕にかけては華麗な生活を送っていた彼女が、3幕では病状の悪化により顔色が悪くなるだけでなく、表情も抑え気味だったり、時には躁鬱で激しく感情を出すなど、結核の症状をよく表現していたことが印象的でした。
アルマン役のマルティ・パイジャは1幕ではマルグリットに恋に落ちる様子が鮮明で、好青年の決して実らない恋を見ているようでした。彼は技術力もかなり高いダンサーで、難しい振り付けも難なくこなしていたことが印象に残っています。

客席に良い意味で異質で眼光鋭い男性がいるなと思ったら、なんとジョン・ノイマイヤーご本人が座っていて驚きました。ノイマイヤーが客席にいるってハンブルクバレエ団の公演でも見た記憶がなく、新鮮でした。 服装は黒のスラックスにグレーのカーディガンという普通の服で、休憩時間中はダンサー指導のために席を空けていたのでほとんど客席にいなかったにも関わらず、存在感が凄かった…。

カーテンコールに出てきたとき、ダンサー達を何回も前に出して彼らがもっと拍手や賞賛を浴びるように仕向け、自分はいつもサッと後ろに下がる様子にダンサー達への愛を感じました。 その様子を見て、ノイマイヤーのダンサーへの愛が深いだけでなく、それだけこの「椿姫」という作品は彼にとっての人生の全てなんだろうなと思いました。 あたたかいカーテンコールでのノイマイヤーの振る舞いを見て、彼にとってこの作品がいかに大事なものか伝わってきて思わず涙が出そうになりました。ぜひまたすぐに「椿姫」を見れるよう願っています。

あとカーテンコールでは、公爵役マッテオ・クロッカード=ヴィラ(Matteo Crockard-Villa)の振る舞いが最高に良かったです。拍手をもらって緊張しているピアニスト達を積極的にエスコートし、一緒にお辞儀しており、オーケストラにも「良かった!」ってハンドサインや、沢山の称賛を送っていた姿が印象的でした。バレエダンサーでマッテオのようにオーケストラやピアニストとの絆を感じさせてくれる方ってあまり見ないので、きっと彼は本拠地シュツットガルトでも音楽家達と友好関係を築いているんだろうなと思いました。

11月10日(日) Elisa Badenes and Friedemann Vogel

これを言ったらフォーゲルファンに怒られると思いますが、やはり40歳を超えた人がアルマンを演じるのは、体力的にも見た目的にもキツかったのではと思います。今回はプリンシパルのヘンリック・エリクソン(Henrik Erikson)が演じる伯爵Nがとても初々しくて、マルグリット大好きという気持ちを表現していたからこそ、アルマンの若さや恋に落ちる様子がよく分からなかったことが残念でした。

アルマンを演じたフリーデマン・フォーゲル(Friedemann Vogel)はさすがトップダンサーなので綺麗ではありましたが、エリサ・バデネス(Elisa Badenes)演じるマルグリットがアルマンに一方的に一目惚れしたようにしか見えず、ストーリーがよく分からなくなりました。
マルグリットとアルマンは恋に落ちる設定なので、恋する気持ちを表現するのは当然ですが、出会った瞬間からエリサがフォーゲルに完落ちしたんだなと言う感じで、高級娼婦らしい余裕はなかった気がしました。 フォーゲルも恋する様子を表現しようとしていましたが、彼がエリサに惹かれる要素がどこにあるか分からず、1幕は愛の深さが違ったような気もしました。

伯爵N役のヘンリック・エリクソンは若くて美しく、マルグリットに振り向いてもらおうと必死で、私には彼がアルマンに見えましたし、なぜ彼をアルマンに配役しなかったのか謎です。しかしエリクソンの見た目とアルマン役がマッチしているかなんて、素人の私よりもバレエ団側の方がはっきり分かっていると思います。 それでもフォーゲルに何度も主演させたのは技術的な面だけでなく、やはり彼じゃないと集客できないと考えたのでしょう。エリクソンはじめ、フォーゲルに次ぐスターを育成しないと今後の来日公演での集客は厳しいだろうなと思いました。
 フォーゲルは本来ならアルマンの父、もしくは伯爵を演じるような年齢だと思いますし、彼なら完璧に演じれると思います。ぜひ彼にも次のチャレンジをさせてあげてほしいです。

驚いたのですが、ジェイソン・レイリー(Jason Reilly)演じるアルマンの父は舞台が進んでいる中ずっと左側の椅子に座っていました。微動だせずスポットライトを浴び続け、暑い中大変だろうなと思いました。 レイリーは見た目や雰囲気が役柄にフィットしていて、高身長だからマルグリットと並んだ時の立場の差が明確に分かって良かったと思います。
以前シネマでアニエス・ルテステュやスヴェトラーナ・ザハーロワ演じるマルグリットを見ましたが、彼女達は背が高いためアルマン父と並んでも身長が変わらず、どっちの立場が上なのか分かりませんでした。今回は身長差やジェイソンの威厳によって明確に理解できました。

公爵役マッテオ・クロッカード=ヴィラ(Matteo Crockard-Villa)は冷徹で、歩調も荒々しく金持ちの傲慢さを感じました。昨日に引き続き今日もカーテンコールでは最高のエスコートを見せてくれ、緊張するピアニストを積極的に誘導し褒め称え、オーケストラに対しても称賛している様子が伺えました。

デ・グリューを演じたマッテオ・ミッチーニ(Matteo Miccini)は夏に堀内將平さんのBallet The New Classicの「ロミオ+ロミオ」で見て、美しいジュテと明るい雰囲気にすっかりファンになりました。 今日のデ・グリュー役は足の美しさはそのままに、真剣でどこか憔悴しているような感じをよく表しており、夏に見た役柄とはまた違う印象で素敵でした。

カーテンコールではノイマイヤーが出てきた瞬間に歓声が起き、この日1番の拍手でした。また、最後に出てきたスタッフの男性がシュツットガルトバレエ団のTシャツをスーツの下に着てて、黒いシャツだからジャケットと馴染んでて素敵だったので私も今度このコーディネートをしてみたいと思いました。

ノイマイヤーは昨日と同じ席に座ってて、今日は紺のブレザーに水色のシャツ、黒パンツにお洒落なスニーカーという格好良さでした。 以前Kバレエの熊川哲也さんが客席に現れた時は大歓声とスタオベで迎えられたけど、ノイマイヤーが座席に現れても誰も拍手しなかったことが残念でした。もしかしてみんな気が付かなかったのか…。次は大拍手をしたいですね😊

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