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バレエ感想㊹「マノン」パリオペラ座バレエ団(2/18ミリアム・ウルド=ブラーム/マチュー・ガニオ)

パリ・オペラ座バレエ団来日公演はマチュー・ガニオ、ミリアム・ウルド=ブラームが出る千秋楽の感想です。

マチュー・ガニオは登場した瞬間、この汚い空間に合わない天使のような美少年がいる!と言った感じで、マチューの純粋な美しさは街に全くフィットしておらず、いい意味で目立っており、異質でした。マチューは今年40歳ですが、全く見えません!本当に美少年そのもので、20年前にダンスマガジンで見たルックスそのものです。20年間ルックスが変わらないって凄すぎます・・・。
ミリアム演じるマノンが手を振りながら登場しますが、ピュアな美少女が来たって感じで、2人ともいい意味で汚れを知らない純真さがあるように思いました。

ミリアムが現れた際のマチューは「とても美しい人が現れた…」という感じで、ミリアムから目を離せず、神学を修める自分は女性に興味を持ってはいけないとわかってるけど、やっぱり見ずにはいられない、抑えられない、どうしても見てしまうという感じです。
2人が踊る出会いのパドドゥは、恋を知らない少年少女が純粋にお互いに興味を持っているような感じで、おフランスなのに変に色っぽくベタベタした感じにならないのは、40代でも初々しさを出せるこの2人が演じてこそだなと思いました。

初々しい主役の2人に対して、アンドレア・サリ演じるレスコーは冷酷な感じでした。見ているとひんやりと冷たい汗が流れてきて、妹をムッシューに身請けさせる冷酷さがよく出てると思いました。
ムッシューGMはフロリモン・ロリューが演じているのですが、マノンを欲しくて欲しくて堪らないけれど、それをあえてアピールしまくらない欲望を抑えつけた感じがよく出ているなと思いました。好色で、でもツンとすましてる感じ、こういう変態いるなと…。マノンとデ・グリューの2人が駆け落ちした後もムッシューGMはマノンへの興味を隠せず、執念深くレスコーにお金を渡します。ここまでムッツリした感じのGMは新鮮です。

マノンとデ・グリューによる寝室のパドドゥは激しく恋に落ちた2人というよりも、恋の喜びに打ち震えている2人という感じで、なんとも健全で何も知らない少年少女そのものという感じです。
キスシーンがあるのですが、ミリアムとマチューはそこまで激しいキスをしているようには見えませんでした。しかし、ミリアムがつけていた真っ赤な口紅はマチューとのキスによって拭い去られており、2人して口の周りを真っ赤にしているあたりその情熱が激しかったことを思わせます。キスをした後のマチューの晴れ晴れしたとても嬉しそうな顔は喜びに溢れていて、何だかこちらまで嬉しくなってしまいました(キスする前に絶対致してるはず、というツッコミはここではしません😂)
ミリアムもマチューも何も知らない少年少女で、まさに恋に落ちてしまってお互いを求めている、恋愛の1番楽しい時期だなと思います。

ムッシューGMとレスコーが部屋にやって来たとき、マノンは戸惑っています。マノンは明らかにデ・グリューが好きで、GMのことは好きでは無さそうですが、高い毛皮のコートを贈られそこに吸い寄せられていくかのように向かっていくのです。
GMに触れられるたびに戸惑いの視線を兄に送りますが、兄レスコーに命じられ、富を持つGMと一緒に行かなければならないという諦めと戸惑いを感じました。最後にGMと出ていく時は、ベッドにすがりつき、デ・グリューへの恋心と別れの悲しさを隠しません。ですが、この時代の女性に、男性である兄に命じられて断ることは出来ません。戸惑いつつもGMに従わなければいけないという自分自身の運命を受け入れたような演技だと感じました。

2幕はミリアム演じる社交界の女王として君臨しているマノンが圧巻でした。生きるためにはGMの寵愛を受けるしか無いという覚悟を決めた女性がそこにはいました。
ですが、デ・グリューを愛しているからこそ、姿を見つけると苦しくなる。そんな様子がよく現れていました。ムッシューと一緒にいながらも、デ・グリューを見てしまう。ムッシューと一緒にいることが苦しい。まさにそんな感じのマノンでした。

マチュー演じるデ・グリューはマノンから目を離せないけれど、悲痛や悲しいというよりも、現実を受け入れられない感じ。目の前にマノンがいることが信じられない、という感じです。何も知らないピュアな少年がここにも…。
逮捕される前のブレスレットを見つけるシーンも、どうか自分のものになってくれと哀願する感じでした。デ・グリューってお金もないくせになんだか哀れだなと思いました。現代社会に生きる私たちから見れば「稼げ!」と思ってしまいます😂

エロイーズ・ブルドン演じる愛人は上手なんだけど、なんだか不健康そうな感じで、精神病んでドラッグやってそうなまでの細さだと思いました。アブノーマルな感じがよく出てます。
イカサマ賭博のあとのキャットファイトはダンサー達によってこんなにも違うものなのかと。例えばドロテとロクサーヌは激しい口論をしているかのような「見たんだからね!」ということが強調されてて、リュドミラのは揉み合ってるうちに終わっちゃって、ミリアムとエロイーズのは特別扱いされてるマノンが許せず激昂してしまった感じで、みんな違って面白かったです。

3幕は看守のアルチュス・ラヴォーがめっちゃハンサム!この顔ならデ・グリュー役を演じても絶対美しいと思いましたが、これだけのハンサムを看守にするとはオペラ座の層は厚すぎる…。そしてニヤけながら女性たちを物色するあたり、本当に嫌なやつだと思いました。ですが、ボロを着ていてもミリアムが美しいので、目をつけられてしまった理由は残念ながら納得です。泣きながら凌辱されるミリアムがあまりにもリアルすぎて見ていられませんでした。ラヴォー演じる看守がハンサムなのに背筋が凍るような怖さがあって、逆らうことが出来なかったという現実がよく伝わってきます。

最後の沼地のシーンでもミリアムの命の灯が今にも消えそうになっているけれど、マチュー演じるデ・グリューはそれを信じられず笑顔でマノンを励まし続けています。本当に理解できていないのか、単純に現実を認めたくないだけなのか、そんな複雑さがよく出ていて、見ていて苦しくなりました。
マチュー・ガニオは正直うす塩味というのか、他の2キャストほど演劇性を持って演じているようには感じませんでしたが、最後マノンが死んでしまって初めて現実を受け入れたかのような驚愕している様子は胸に迫ってきて思わず涙が出てきました。

マチュー・ガニオはあっさりうす塩味だなぁと考えていると、うす塩のポテチが食べたくなって、帰りにコンビニで購入してしまい、一袋食べてしまった!一生に一度でいいからマチュー・ガニオのような素敵なバレエダンサー体型になりたいものですが、道のりは遠そうです。

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