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新国立劇場オペラ「夢遊病の女」2024年10月6日

※オペラ初鑑賞のド初心者の感想を書きます。あくまで超初心者の感想です😇


私はバレエ好きの父とオペラ好きの母に育てられましたが、実はオペラを見るのは人生初です。今回は直前に元新国立劇場バレエ団所属の渡部義紀さんが出ると聞いてバレエが多い演目かと思ってチケットを購入しました。ちなみにバレエダンサー達は最初から出てきますし、結構踊る場面が多いです。皆様クールで格好良かったです。
ちなみに渡部さんは元々新国立劇場バレエ団で踊られていたということもあり、高難度のリフトでは持ち上げ役の中心にいたり、結構技術的に大きな役割を果たされていました。あと、透明感があって少年みたいに綺麗でした。ググったところ1993年2月生まれとのことで、え、もう31歳!?アンチエイジングを教えてくれーと思いました😂

会場に入ると新国立劇場の開幕シーズン名物のゴージャスな花がドーンとありました。月末にはバレエの開幕がありますが、花は同じなのかチェンジなのか気になります🤔

バレエでは無料のプログラムが有料(1,500円)だけど、読み応えがかなりあった驚いた

私は新国立劇場バレエ団ソリストの直塚美穂さんの入団をきっかけに新国立劇場に通うようになった割と新参者の新国ファンです。バレエは全公演見に行っているのですが、新国立バレエで配布されるプログラムは無料です。ただしそこで「タダでラッキー✌️」とはならず、ダンサー紹介などもほとんど無い見た目も中身も薄っぺらいプログラムです。
「タダなら内容は簡素で当然でしょ?」と思われる方もいるかもしれませんが、ところがどっこい。以前ある演目が2本建で上演された時、クラシックの演目で急遽代役に入った研修所出身のダンサーの紹介はあるのに、同時上演のコンテンポラリーで最初から主役に配役されていたダンサーの紹介は無くて、椅子からひっくり返りそうになったことがあります。要するに新国立バレエのプログラムは無料ですが、内容がひどいです。

だからこそオペラで驚いたのが、確かに有料ですが、登場人物の相関図や背景、作曲家についての解説、演出のキーポイント、そして精神科医から見た「夢遊病」など観客が作品を深く理解出来るよう様々な専門家のコラムが充実しており、新国がこんなに作品理解につながるパンフレットを作れるのかと感動しました。もちろん出演者の紹介も日英両語でされており、海外の方も楽しめるプログラムでした。

バレエのプログラムも有料化してくれていいので、ぜひダンサーインタビューや作品解説など、ここまで充実した内容にしてほしいです。

主演のクラウディア・ムスキオの声が柔らかくて驚いた

オペラが初めてで声量に慣れていない部分もあったのかもしれませんが、大ホールで聞くソプラノは耳にキーンとくる強烈さがありました。正直最初に出てきた歌手の方がソプラノで歌うのですが、オペラ初心者の私には金切り声にしか聞こえず、本気でうるさいと感じましたが、大ホールで歌うならこのくらい声を出すのが普通なのかと思いました。

しかし場面が転換して主役アミーナ役のクラウディア・ムスキオが歌い出したのですが、その声があまりにも柔らかくて心地よくて、同じソプラノでもこんなに違うのかと衝撃を受けました。柔らかくて優しいのに大ホールにはきちんと響いていて、素晴らしいと感じました。
もちろんその後、悲しむ場面など大きな声を出すのですが、クラウディアの声は決して耳を覆いたくなるような金切り声にはならず、感情を乗せて豊かに歌われていたのが印象的でした。

ちなみにクラウディアさんはイタリア出身で、現在ドイツのシュツットガルト州立劇場で専属オペラ歌手として活躍されています。

プキレフの「不平等な結婚」を思い出した

さて、これは私がバレエの見過ぎでルッキズムがある人間なのかもしれませんが、うら若き美しい乙女のクラウディアに比べ、もう1人の主役であるエルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザがあまりにも歳を取って見え、まるでプキレフの「老不平等な結婚」の絵画に登場する老人と花嫁のようでした。オペラ歌手はバレエダンサーより寿命が長いため、もの凄く太った歌手や、もの凄く歳をとった歌手を見かけることは結構多いですが、見た目のバランスが気になりました。

ただし、シラグーザはかなり歌が上手で、歌い出すと本当に素敵なのですが、なぜあんなに老けて見えるメイクをしたのか…。カツラが似合ってなかったのか…?

子音の響きがよく聞こえずに困惑

さて、せっかくクラウディアとシラグーザ2人の歌が素敵だったことを書いたので、この流れでゲスト2人と日本人歌手達との1番の違いについて書きたいと思います。
ゲスト歌手というだけあって、クラウディアとシラグーザはオペラ初鑑賞の私が聞いても歌が上手で、演劇性も高かったです。しかし日本人の歌手達も頑張っており、昔に比べたらレベルは上がってきたのだと思います。ですが申し訳ありませんが、一つの点においてド初心者の私でもゲストとの違いを感じました。

それはイタリア語の発音、もっと言うなれば子音の発音です。

新国立オペラでは日本語と英語の字幕があるため、オペラの言語が分からなくても内容が理解出来るようになっています。しかし字幕と舞台を集中して交互に見るのは非常に疲れるため、途中から「もう内容理解はいいからこの歌の美しさを楽しもう」と考えを切り替えて音楽の美しさを堪能しようとしました。

そうしたら驚いたのですがゲスト歌手2人は子音をハッキリ発音するため、その言葉の響きの美しさも楽しめたのですが、日本人歌手は音程は間違っていないのでしょうが言葉が子音の発音が弱いため歌詞や言葉の響きを楽しむことができないのです。要するにウニャウニャ喋っている感じです。
もちろんゲストはイタリア語ネイティブなので発音が上手という理由もあるかもしれませんが、彼らは単語の一つ一つをハッキリ発音しており、pやbなど発声を伴わない子音の響きも客席に届き、綺麗な響きの歌詞を堪能できました。

おそらく日本の教育では大きな声で歌うことや音程を間違えないことは注力されるのでしょうが、外国語、特に発音については練習スタジオでそれっぽく聞こえればそれ以上は何も言われないんだろうなと思いました。大ホールで聞くとあまりに子音の響きが違い、驚愕しました。

日本人のオペラ顔

20年くらい前に従兄弟とテレビを見ていたとき、日本人のオペラ歌手が目をギンギンに見開いて下顎を突き出すような、眉間に力を入れてまるで目を見開いたようなハプスブルク家のような特徴的な顔をして歌うのを見ました。そのとき従兄弟が「これ日本人のオペラ顔」と言いましたが、この独特のオペラ顔が2024年も健在で驚きました。
従兄弟にそれを教えてもらった当時からすでに20年は経っていますが、まだこの歌い方をしているということはこれが日本音楽界で正しいとされる歌い方なのでしょうか?

不思議だなと思うのが、あのひょっとこ顔をするのが日本人だけなんですよね。例えば今回のゲストである外国人歌手達も顔に力を込めて歌うシーンはありましたが、日本人のようなオペラ顔にはならず、どちらかといえばサスペンスで死体を見つけた時のような、お化け屋敷で驚くような「キャー」という感じの顔の歪め方で、日本人とは違う力の入れ方でした。
その方がずっと自然で、どうして日本人だけ目を見開いたハプスブルク家のような顔をするのか謎に思いました。まぁド初心者の意見なのでもし意味があるのでしたら申し訳ないです。

カーテンコールで見えた歌手とオーケストラの強い強い絆

個人的にこの舞台で1番興味深かったのがカーテンコールの時に見えた歌手達とオーケストラのめちゃくちゃ強い絆です。バレエでも最後のカーテンコールでは指揮者を舞台に呼んでオーケストラにお辞儀をしますが、あくまでも儀礼的にお礼を申し上げるような感じが普通です。

しかしオペラではまず合唱団とオペラ歌手達の絆が非常に強く、そしてオーケストラにもおそらく同じ大学出身などの昔からの知り合いが多いと感じました。バレエだと拍手だけして終わりますが、歌手達はオーケストラピット内の奏者たちを指差しながら拍手やGoodのハンドサインを送っており、とても仲がいい様子を感じました。オーケストラのメンバーもバレエだと1度立ってすぐ終わりですが、オペラでは歌手達に何度も立つように促され、観客からも歌手からも沢山の拍手やブラボーをもらって晴れやかな笑顔だったことが印象的でした。

バレエとは比較にならないレベルの、オペラとオーケストラの絆の強さを感じて驚きましたし、新国立劇場はコロナ後でバレエの有料入場数が高いのに配信も予算もオペラが重視されて不思議だなと思いましたが、このカーテンコールを見て納得。もちろんオーケストラは劇場専属ではありませんが、音楽業界は狭いのでおそらく知り合いばかりで、オペラのメンバー達が持っているような音楽業界や劇場業界での絆をバレエの人たちは持ててないんだろうな、だから予算獲得が厳しいんだろうなと感じました。
ぜひバレエにもオペラを見習って、自分たちだけが目立って喜ぶのではなく、周りを巻き込んでもっと味方になってもらえるよう絆作りを頑張ってほしいなと思いました。

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