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バレエファンの会社員、4月を振り返る
2024年4月は相変わらずのバレエ三昧だっただけでなく、私生活にも大きな変化が色々あり、会社員としての本業がかなり忙しくなってしまいました。しかしそんな中でも、良い舞台や踊りを見たら何かを書かずにはいられませんでした。
4月に見た舞台は見た目や技術を超えるような演劇性が強いものが多く、色々な意味で自分の中で印象に残る舞台が多かったです。
印象に残った舞台
マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」
2月にパリオペラ座の「マノン」を見て感動して以来、これに並ぶ舞台は当分無いだろうと思っていましたが、マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」の衝撃は凄かったです。
設定が近未来に変更されており、シェイクスピアの原作よりもプロコフィエフの音楽を表そうとしたのでは無いかと感じました。登場人物全てに役名があり、ダンサー達によってよく考えられたその役の表現を見るのは本当に楽しかったです。
楽しいだけでなく、マシュー・ボーンは暴力や同性愛嫌悪など、社会問題もこの作品にかなり組み込んでおり、色々と考えさせられる舞台でした。
印象に残ったダンサー
New Adventuresのダンサー達
マシュー・ボーン率いるカンパニーであるNew Adventuresには日本のバレエ団では考えられないような様々かつ複雑なバックグラウンドを持ったダンサー達が多数在籍しています。彼らの技術だけでなく、深い分析と思考による役作りは舞台を見ていてキャラクターの背景まで感じさせてくれる素晴らしいものでした。
マシュー・ボーンはもちろん世界的に知名度のある振付家ですが、マシューがこれだけの作品を作り続けられるのは、周りの製作陣、そしてマシューにインスピレーションを与えるダンサー達の存在が大きいと思いました。
酒井はなさん
近年は幼少期から海外に留学する日本人バレエダンサーも増えてきた中、酒井はなさんは新国立劇場バレエ団のプリンシパルを経た「純国産のプリマ」として今も昔も大活躍されています。
Kバレエオプトの「シンデレラの家」でこころを患ってしまった母親役を演じられていました最初は冷酷かつ横暴で抑圧的な雰囲気を持っていた母親が、終盤にかけて自分の全てをさらけ出して周りに縋るような、完全に無になり抜け殻のようになってしまった姿が印象的でした。
あまりの彼女の踊りと演技の力強さに感動すると同時に、これだけの表現者であるはなさんにはこれからも沢山仕事の依頼が来るだろうなとサラリーマン目線で色々と考えてしました。
清水裕三郎さん
新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」は4/27, 4/28にそれぞれ目当てのキャストがおり、その人たち目当てに行ったのですが、清水裕三郎さん演じるトロラグヴァ(ソロルの友人)の存在感が凄く、結果としてずっとトロラグヴァを目で追ってしまいました。
何に一番驚いたかというと、バレエ団全体が物語の世界に全く馴染めておらず「東アジア人によるインドコスプレ」にしか見えない中、裕三郎さんだけは最初から物語にスッと馴染んでいたことです。動きも軍人らしく精悍で、頼りないソロルを諌めたり、王侯に気を遣う演技も細かく、彼だけが物語の登場人物になり切っていました。演技がどうとかいう話ではなく、あまりに自然で、本当に物語の人物にしか見えませんでした。
印象に残ったこと
私は自他共に認める超面食いなので、今までは割と「この人は美人/イケメン」とか「手足が長くて綺麗」など、バレエダンサーの見た目や綺麗さについて騒ぐことが多かったです。しかし上述した舞台やダンサーなどは「見た目の綺麗さ」や「技術の優位性」を観客に見せつけるフェーズを超え、表現者としての道を探求されている芸術家達だと思いました。
ついつい私たちは「足が長い」とか「体が柔らかい」とか技術や見た目でダンサーを判別してしまいますが、今回記載した舞台を見て、本物の芸術や芸術家達は見た目のまやかしを超えていくんだと確信しました。こんな素晴らしい舞台を見れて4月に得たものはとても多かったですし、これからも沢山の舞台を見続けていきたいです。
そして私自身も文章を使って自分の思考を言語化し、表現していく際にもっと深みのある表現方法を使いたいなと思いました。自らの言葉を磨き、その言葉によって自分自身を表現していくためにも、まずはもっと本を読もうと決意しました。