バレエ感想「パフォーミングアーツ・セレクション2024」愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama
「パフォーミングアーツ・セレクション2024」を見にいきました。
今回の内容はA/B両プログラムに分かれており、私が行ったBプログラムではこちらの作品が上演されました。
柿崎麻莉子 『Can’t-Sleeper』
岡田利規 × 酒井はな 『ジゼルのあらすじ』
島地保武 × 環ROY 『あいのて』
前回はお友達に勧められて酒井はなさんによる「瀕死の白鳥 その真相」を見に行き、岡田利規さんによる演出が楽しかったことを覚えています。今回は引き続き岡田利規さんと酒井はなさんが組んで「ジゼルのあらすじ」を上演されるとのことで、楽しみにしていました☺️
柿崎麻莉子×堀田千晶 『Can’t-Sleeper』
柿崎麻莉子さんの 『Can’t-Sleeper』は柿崎さんと堀田千晶さんによって上演されました。劇中は手元が見えなくなるくらい客席が暗くなるシーンもあり、ステージに浮かび上がる柿崎さんと堀田千晶さんを際立たせていたことが印象的でした。
柿崎麻莉子さんと堀田千晶さんはコンテンポラリー初心者の私が見ても、身体能力が高く普通の人には出来ない身体表現が可能な方々という印象を受けました。レースの半ズボンタイプのボディスーツを着た2人が抜群の身体能力を見せてくれましたが、沈黙が多くて終わったと思ったらまだ続くという、流れがよく見えない構成でコンテンポラリーに慣れていない私は正直面くらいました。
「どうしたら寝れるか」という問いの答えを延々と読み続けるシーンがありましたが、正直脈絡の無い日本語を延々と聞かされるくらいなら、柿崎さんと堀田さんによる身体能力の高さがわかる踊りをもっと堪能したかったのが本音です。
岡田利規 × 酒井はな 『ジゼルのあらすじ』
岡田利規 さんと 酒井はなさんの『ジゼルのあらすじ』は酒井さんのバレリーナとしての体験談と、岡田さんの創造性が組み合わさったとても面白い舞台でした。
舞台を見ていて岡田さんは良い意味でバレエに詳しくない方だと思いました。
理由として、例えばもし彼が何十回もジゼルを見まくるようなバレエファンなら、新国立劇場バレエ団が神経質なまでに細かくてうるさそうということは舞台を見れば分かるはずで、あのエピソードを聞いた瞬間に彼女の職業生命を心配すると思います😅
一つのミスを徹底的に責められるこの国において、コアなバレエファンが聞いたら笑うどころか「どれだけ怒られたのか!?」「次はちゃんと役を貰えたのか!?」など酒井さんがどれだけ怒られたのか想像して青くなるエピソードも、演劇が専門の岡田さんはユーモラスにストーリーを広げていてその発想力がとても面白かったです。バレエファンの凝り固まった視点に一石を投じられたような気分になりました。
演劇の世界にいる岡田さんだからこその話の膨らませ方や着目ポイントが良い意味でバレエ的ではなくて非常に面白かったし、随所で披露される酒井さんによる数々のジゼルのステップはまるで自分がクラシックの舞台を見にきたような気分にさせてくれました。ナタリア・ドゥジンスカヤ先生とのエピソード、ヴァリエーションでの苦手不得意、色々な登場人物を1人で演じ分ける様子など、本当に楽しかったです。
あと私はミーハーなので酒井さんが着用されていたルルレモンが欲しくてたまらない…。買おうかな😊
島地保武 × 環ROY 『あいのて』
島地保武さんと環ROYさんの『あいのて』は舞台の袖も後ろの幕も全て取り払った機材丸見えのドーンとした広いスペースで行われ、客席に向けられた暖色の照明が眩しかったです。 バレエばかり見ている私にとって劇場というのはセットや幕があるのが当然だったのですが、機材丸出しの舞台を見て劇場の新たな使い方を教えられた気分でした。
島地さんはさすがザ・フォーサイス・カンパニーにいた方で、体をどう動かしているのか分からない複雑な動きをずっと続けていました。まるで踊りに取り憑かれた人のようで、彼は自分が見たものや思考を踊りとして表現する人なのかなと思いました。
今まで色々なダンサーを見てきましたが、島地保武さんほど踊りに取り憑かれているようなダンサーって見たことないかもしれません。舞台を見て、彼は 自分の目に入る情報も聴こえる情報も自分の体内に入れるものごとの全てを、踊りを通して表現してしなければ気が済まなそうな不思議な印象を受けました。
劇中「言葉にするよりも前に行動がある」みたいなことを仰ってて、ピエトラガラの「人は話すより前に体を動かすことを覚える」というセリフを思い出し、何だか懐かしくなりました。
ただし一つ気になったのが、環ROYさんも島地さんも怒鳴るようなセリフがあったことで、男性の恫喝は驚いたし怖かった。私が気にしすぎかもですが。