「No.5」「お金持ちになりたーい(≧▽≦)」古代中国の《揺銭樹》
こんにちは、かずさです!
皆さんは、もし突然1億円の宝くじに当たったらどうしますか?今はコロナの影響で出来ませんが、私だったら直ぐに航空券を買って世界一周の旅に出たいです。今日はそんな夢を叶えてくれそうな古代中国の作品です!
今回紹介するのは、後漢の《揺銭樹》(ようせんじゅ)です。
青銅、陶器 H149.1cm 後漢(2世紀) 四川省博物館蔵
《揺銭樹》は、後漢の時代(25年-225年)に四川地方を中心に埋葬品として用いられました。その名の通り「お金のなる木」で、果実を収穫するように木を揺さぶって、実った円銭を収穫するというものです。
この作品は、お金の他にも様々なものが表現されています。木の上には鳳凰がとまり、枝になっている円銭の周りには仙人と思われる小さな人々の姿が見られます。この写真では不鮮明で台座の部分がよく見えませんが、動物のようなものが見えます。台座のデザインには様々なものがありますが、揺銭樹は「木の上の鳳凰」、「円銭と仙人たち」という組み合わせがセットのようなものになっており、多くの作品で見られます。
では、なぜこのような(欲望全開の)ものを墓に入れたのでしょうか?それは、古代の中国にあった仙界への憧れと後漢の貨幣経済が関わっています。
後漢の貨幣
まずは、揺銭樹の円銭について少し考えてみたいと思います。この作品が作られた後漢の人々にとってお金とはどのような存在だったのでしょうか?
当時の中国では前漢の武帝の時代(前119年)に制定された「五銖銭」という貨幣が流通していました。
この写真は前漢で用いられていた五銖銭の鋳型です。円銭で中央に四角い穴が開いており表面に「五銖」と書かれています。この貨幣の価値は漢の中でも時代によって多少変化するようですが(後漢末の社会的混乱などの要因のため)、民間でも税の支払いなどに広く用いられていたそうです。なので、円銭を枝にぶら下げることは後漢の人々にとって、現代人の「札束のプールに入りたい」という気持ちと似ているところがあったかもしれません笑
仙界への憧れ
しかし、ただ現世的な欲望のためだけではありません。揺銭樹には上にも書いたとおり仙人の様子も表現されています。つまり、この木は単なる「金のなる木」ではなく、仙界の様子を表したものでもあるのです。仙界には崑崙山(こんろんさん)という山があると信じられていました。
崑崙山
中国の西方にあるとされた伝説上の神山です。高さは1万里以上(約4000km)あり、太陽や月はこの山から出入りしているとされました。その山頂には瑤池(ようち)という池があり、西王母(せいおうぼ)という女神が住んでいました。古代中国の人々は、死者の魂は死後龍に乗ってこの山に昇ると信じ、又、この山にたどり着けば不老不死になれると信じていました。
死者の魂が死後、龍に乗って崑崙山に向かう様子を表したものは前漢の墓からも見つかっています。
彩絵帛画(はくが) 長205㎝ 上幅92㎝ 下幅47㎝ 長沙馬王堆1号墓出土 前漢(BC2世紀中期)
この作品では、仙界である天上世界にいるのは女媧(じょか)と思われる蛇身の女神と月と太陽であり、西王母ではありませんが、埋葬者が天に昇る様子、地下世界の様子が表現されています。そのため、古代中国の人々の宇宙観を垣間見られる作品となっています。
このようなことから、揺銭樹は神聖な仙界と現世的な欲望が合わさった「不老不死の世界にある木」と考えられていたと思われます。仙界に昇った後には、「永遠の命」と「金のなる木」が手に入るなんて凄く夢がありますよね!
今回は古代中国のファンタジックな作品を取り上げてみましたが、いかがでしょうか?ギリシア神話などヨーロッパの神話は日本でとても人気がありよく知られていますが、中国の神話はそれほどはポピュラーではないので、揺銭樹を通して興味を持っていただけると嬉しいです!東京国立博物館にも所蔵されているので、ぜひ見に行ってみてください!
次回は、ヨーロッパのアートについて紹介します(o^―^o)
画像は『カラー版 東洋美術史』、『世界の歴史②中華文明の誕生』、パブリック・ドメインのものを使用しました。
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今回参考にした本、おすすめの本をまとめました!ぜひ、おうち時間に読んでみてください!
前田耕作(監修)『カラー版 東洋美術史』美術出版社
尾形勇、平勢隆郎『世界の歴史② 中華文明の誕生』中公文庫
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