日本のスピリット 1
「Spirit」・・・英語訳では、精神・魂などを表し、
ときにアイデンティティやプライドを示す使い方もする。
そして世界で「Spirits」と言えば「蒸留酒」も意味する。
蒸留酒は、錬金術が10〜12世紀頃のイスラム錬金術師達によって発展する過程で生まれた酒。
当時の錬金術師たちは、ラテン語で「生命の水」を意味する「アクア・ヴィタエ(aqua vitae)」と呼んだそうだ。
その「生命の水」は、飲むことで体が熱くなり、心臓の鼓動が高まり、活力が湧いてくる。
この状況から「生命の水」=「精神的な作用」=「Spirit(s)」と呼ばれるようになったという説がある。
世界のスピリッツは、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラと呼ばれるホワイトスピリッツをはじめ、
樽により長期熟成し、琥珀色のスピリッツとなるウイスキーなど
みなさんでも一度は聞いたり、飲んだりしたことのあるお酒ではないだろうか。
それでは、日本で生まれたお酒でスピリッツはあるのだろうか。
もちろん、ある。
日本酒は、ビールやワインと同じ醸造酒であり、蒸留酒ではない。
製造工程による分け方なのだが、
簡単に言うと、アルコール発酵させたものを、お酒とするものを「醸造酒」。
アルコール発酵させたものをさらに蒸留してお酒とするるものを「蒸留酒」と呼ぶ。
※製造工程などについては、後日時間があれば別で書くので、この文章内では省きます。
アルコール度数は醸造と蒸留で大きく違う。
醸造酒のビールは5度程度、ワインは15度程度、日本酒は21度以下。
蒸留酒のウォッカ、ジン、ラム、テキーラ、ウイスキーは40度以上。
そう、蒸留することで、アルコール度数が高まる。
ちなみに、極端かつざっくりにいうと
ワイン(醸造酒)を蒸留したらブランデーといった具合。
日本酒でなければ、焼酎が次に思い浮かぶと思う。これは正解である。
焼酎は2次仕込みといって、2回アルコール発酵をさせたあと、蒸留する酒である。
焼酎として蒸留したときの原酒は、芋で約37~40度、麦や米で約43~45度ほど。
スピリッツとしての度数となるのだが、
そこに加水して25度まで度数を低くして販売しているのが一般的な焼酎である。
理由として旧酒税法がもとでその度数に今でもなっているという説がある。
ただ、40度未満のスピリッツは海外の人からすると、スピリッツではないと言われたりする。何で蒸留して加水するんだ!って相手によっては非常識と捉えるくらいだ。
度数をわざわざ蒸留で高めているのに、水入れて度数を下げて、飲むときはさらに水で割って度数を下げる。この文章を書いている私でも、日本人の感覚に?が頭につく。
なぜ加水するのか…その謎は解明されているかもしれないのだが、私はまだ調べてないので、わかったらここでまた紹介したいと思う。
では、40度以上で製造販売されている日本のスピリッツはあるのだろうか?
もちろんある。
「泡盛」だ。
泡盛も焼酎と同じ25度や30度での商品を多く店頭で見かけ、主流となっている度数帯である。もちろん、蒸留後加水されることにより度数を下げている。
しかし泡盛は、40度以上の商品も普通に販売されているのだ。
かなり大雑把で大胆、かつ法令的なことも省いてしまうと、初めての方には
下記の大きな分け方で、泡盛の種類があるということを知ってもらえれば良いかと思う。
1,25や30度:一般酒(3年未満の泡盛)
2,40度以上:古酒(3年以上熟成の泡盛)
もちろん1の度数での古酒や2の一般酒も販売されているのだが、ややこしくなるのでここは説明のため一旦これで。
泡盛は、米と黒麹と水というシンプルな原材料を以って製造されながら、小さな沖縄列島の中に46もの酒造所があり、各蔵の出す銘柄はひとつひとつ味が違う。一般酒、古酒(熟成年数)、度数、酵母など、職人が突き詰めて世に送り出す商品は、これまででなんと1000種類以上あるとも言われる。
泡盛の歴史は、琉球と沖縄が呼ばれる600年前に遡る。外交における逸品として重宝され、その品質はまさに、何世代も繋いできた職人の「魂」である。また、来訪者に対して宮廷で飲まれた、おもてなしの「心」なのだ。
泡盛は日本最古の蒸留酒・スピリットであり、沖縄のスピリットなのだ。
つづく。