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サイエンスコミュニケーターの役割
科学技術に関わる活動は、専門家のみが行うのでは不十分であり、専門家と非専門家の対話が必要である。対話により専門家と非専門家の間にあるギャップが解消され、双方向の理解が生まれる。この対話をサポートし、専門家と非専門家の橋渡しになるのが、サイエンスコミュニケーターの役割である。
科学とは、自分の中に生まれた疑問に対し、考えたり、観察したり、実験したりして、答えを見つけることである。そうして見つけた答えを、人の役に立つようにしたものが技術である。このような科学技術に関わる活動は、専門家会議や学会など、専門家のみが行うものではない。
現代は、科学技術や様々な分野で市民参加が進められ、また、情報にアクセスしやすい時代となっている。さらに、自然災害や社会の変化などから、科学技術に対する市民からの関心が高まっている。このような社会の中では、科学技術について、専門家が非専門家に対して伝えるだけでは、不十分である。聞き手である非専門家が情報を理解し、その情報を身の回りの出来事に当てはめ、自ら考えることができなければならない。そこで、専門家と非専門家のコミュニケーションや対話が必要となる。理解は、コミュニケーションや対話のような相互行為により生まれるからである。また、専門家と非専門家の間には、知識や理解のギャップがあり、話す・聞くという、一方向の伝達では、情報は正しく理解されない。双方が同じ前提事実を持っている必要がある。コミュニケーションは、双方が既に知っている、理解していることの確認になり、知識や理解のギャップを埋めることができる。科学技術は社会の中で発達し、時代とともに変化していく。また、社会情勢によって注目されるもの、必要とされる知識が変わっていく。科学技術そのものの情報だけではなく、科学技術を取り巻く社会や人との関係性も重要である。コミュニケーションは、こういった時代や社会の変化についての認識を深めることにもなり、専門家・非専門家の双方にとって有意義なものとなる。