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ネムラの森

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30年にわたって書き続けている短編ファンタジー小説「ネムラの森」。シュウとクロルそしてフェアローゼが深く不思議な森の中で繰り広げる壮大なドラマです。その一部を少しづつご紹介してい…
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#短編小説

星がキレイな夜でした

「きぃん」と星が流れてゆきました。 そのもっと上の方で別の星々たちが その星のゆく先を眺めていました 僕は電車の窓から顔を出し その星とその星を眺める星々たちを 見上げました。 星がキレイな夜でした

ハシゴを伝って降りて来た星(ネムラの森)

「フェアローゼ、今日はとても暑かったから  多分いつもより早く星たちがハシゴを伝って降りてくる筈だよ」 「じゃぁ丘の上に見にいってもいい?」 「あぁ、パパも一緒に行くよ、  星が街の灯りになるのを久しぶりに見たいからね」 余談ですが、本編にはこの話の続きがあります。 丘の上でフェアローゼは部屋の奥から持って来た虫捕り網でハシゴを伝って降りてくる星を一つ捕まえようとします。しかし中々捕まりません。やがて足下の青草たちに助けてもらいやっとの思いで星を一つ捕まえると、自

ネムラの森(我が家)

ここには カフェも タクシーも ツタヤも 映画館も ないけれど 眠れない夜に拾い集めてきた星々の欠片と ひとり寝の夜に窓辺で奏でる風の子守唄と フクロウが読み語る終わりのない物語と 香り深い挽きたての珈琲がある そして ソファに深く腰を落とし 静かに独り時を刻む ボクがいる

青いシダの実と魔法の森

ノエルは慌ててフェアローゼを制止しました。 「だめ!! ここまでよ!! この先は一歩も進んではだめ!!」 フェアローゼはマングローブのツルでできたバスケットを抱えたまま言いました。 「なぜ? なぜ行っちゃいけないの?青いシダの実はこの先の滝にあるんでしょ?」 「あるわ・・・」 「だったらこのバスケットをその青いシダの実でいっぱいにしないと・・・  仮面さんにかけられた魔法を解いてあげられないんだ。だから僕は行くよ」 そう言い、歩き出そうとしたフェアローゼの前に

赤い家

黒いタキシードを着た蟻に先導されたまま ネムラの森を三里ほど歩いていくと それまでまっ暗だった森に突然光が差し込み まるで積み木で造られたような小さな赤い家が 隠れるようにひっそり建っていました フェアローゼはちょっと不思議な国のアリスになったような気持ちになりましたが 勇気をもって小指の先で家のドアをコツンコツンとノックしてみました 「コツンコツン、だれかいますか」 No.524話に続く (「ネムラの森」より)