青いシダの実と魔法の森
ノエルは慌ててフェアローゼを制止しました。
「だめ!! ここまでよ!! この先は一歩も進んではだめ!!」
フェアローゼはマングローブのツルでできたバスケットを抱えたまま言いました。
「なぜ? なぜ行っちゃいけないの?青いシダの実はこの先の滝にあるんでしょ?」
「あるわ・・・」
「だったらこのバスケットをその青いシダの実でいっぱいにしないと・・・
仮面さんにかけられた魔法を解いてあげられないんだ。だから僕は行くよ」
そう言い、歩き出そうとしたフェアローゼの前にノエルは大きく両手を広げて立ちはだかりました。
「だめなの・・・あなたをこの先に行かせるわけにはいかないの。わかって・・・」
「だからどうしてなの? どうしてだめなの?」
うつむいたままのノエルの目から大粒の泪がこぼれました。
「ノエル・・・泣いているの? どうして泣いているの?」
フェアローゼはノエルの顔を覗き込みました。
「私の本当の名前はサリエル。サリエル・ローレン。森の入り口にあった羊農場の娘・・・あなたと同じ人間の子だった」
フェアローゼは驚いて抱えていたバスケットを落としてしまいました。
「十年前の秋の日、私もあなたと同じように青いシダの実を取りにこの森に入ったの」
「えっ・・・・君もあの実を?」」
「ええ、私のママも魔法にかけられたの。それももっと重い魔法を・・・。そしてその魔法を解くには青いシダの実が必要だと知った。私はある日、パパが眠ったのをみはからって窓から抜け出し森に入ったの」
「青いシダの実はあったの?」
「あったわ。でも・・・・・・」
そう言うとノエルは自分の髪を指差した
「この髪・・・枯れ葉でできているこの髪・・・そしてこの目・・・野菊の実・・・。あの森に一歩でも足を踏み・・・」
ノエルがそういいかけた時、二人を覆っていた雲が、轟音と閃光とともに突然割れ、一本の、それはそれはものすごく強くて鋭い光がノエルの身体めがけて飛びかかってきました。ノエルはうろたえながら言いました
「フェアローゼ、もう説明している時間はないわ。彼らがやってくる!! その前にいますぐここから逃げて!!」
「ノエル、どうしたの? 彼らって誰?誰がやってくるの? この光はなに?」
(ネムラの森・続く)
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