幸福なお終いの風景(ネムラの森)
「 そろそろボクのお終いの時だ 」
そう言うと、赤トンボは森のベンチに静かに舞い降り、羽をたんたんと、それはそれはとても丁寧にたたみ始めました。神さまからいただいたわずか30日の命でしたが、赤トンボはそれでもたいそう満足していました。それもそのはず、大抵の仲間たちはツバメやスズメやカマキリに食べられてしまうからです。
「あぁ、今日を無事に迎えられてよかった。そろそろお終いにするよ」
そう言い、赤トンボは身体の真ん中の芯から、ゆっくりそして静かに力を抜き、命のお終いの