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北斎発見伝 その2
北斎のそばには蕎麦がある
蕎麦は江戸の庶民にとって身近なファーストフードでした。
北斎が活躍した時代、江戸市中に蕎麦屋は数千件あったと考えられます。
何故蕎麦はそれほどまで人気だったのでしょうか?
蕎麦の歴史
「蕎麦屋の系図(岩崎信也)」によると、江戸の店売りそばの始まりとされるのは4代将軍家綱の頃(1,664年頃)に吉原に現れた「けんどんそば切り」と言われています。「けんどん」とは、「倹飩」「慳貪」「喧鈍」といった漢字を当てますが、ケチとか安っぽい意味で使われていたようなので、当時のそばはそれ程人気がなかったのかもしれません。
その後、製法やタレの改良などにより、そばは次第に普及していきます。
江戸新材木町(中央区日本橋堀留町)にあった「信濃屋」という店が、つゆをそばにかけて「ぶっかけ」出すようにになってから、それまでつゆにつけていたのを「もり」と呼んで区別するようになり、「ぶっかけ」は「かけ」と省略され、寛政年間(1789〜1801年頃)に江戸そばの基本が確立したようです。
因みに現在のようにもみ海苔をかけて食べる「ざるそば」は、明治以降に売り出されたようで、江戸中期(1730〜1750年頃)に深川洲崎(江東区東陽町)の弁天前にあった「伊勢屋」がそばをざるに盛って評判になったらしいので、「もりそば」より登場が早かったようです。
ちょっとややこしいですね。
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二八そばの由来
江戸のそばといえば「二八そば」という名前が有名ですが、そう呼ばれるようになったのに、2つの説があります。
①価格説 2かける8の掛け算で16文からきている。1文を約30円とすると320円となり、現在の立ち食いそば感覚です。落語のネタ(時蕎麦)でも有名です。
②材料の配合率 蕎麦粉(8)と小麦粉(2)の配合率からきている。
時代によって解釈が分かれるようですが、どちらの説も捨て難いですね。
北斎と蕎麦
北斎は毎晩そばを2杯食べていたそうです。
朝から一心不乱に筆を執り、腕が痺れるまで描き続けた所でやっと食事にありつく。そんな生活を長く続けていたにもかかわらず、90歳の長寿を全うしました。その秘訣は色々な要因がありそうですが、そばは少なくても「江戸患い」の予防には役立っていたかもしれません。「江戸患い」とは脚気のことで、大河ドラマ主人公の蔦屋重三郎もこの病で亡くなります。そばにはビタミンB1 が多く含まれているため、北斎は当時の流行病とは無縁だったようです。
「北斎家の食卓」
以上のような情報を元に、ある晩の北斎家の食卓を妄想してみました。
北斎と娘のお栄そして弟子の3人が仕事をしている
弟子(以下弟)「あー腹減った」
北斎(以下北)とお栄(以下栄)「・・・・。」(黙々と仕事を続ける」
弟「あっ、風鈴の音しません?」
北・栄「・・・・。」
弟「屋台が来ましたよ!買い出しに行きますんで、注文してくださいよ!」
北・栄「・・・・。」
弟「今日はかなり忙しかったから、トッピングつけましょうよ?あそこの天ぷら、まじ絶品ですよ!」
北・栄「・・・・。」
弟「えっ、買いに行かなくて良いんですか?あの店は清潔で人気だし、早くしないと売り切れちゃいますよ!」
栄「うっせぇなぁ!今、興が乗ってんだから邪魔すんな!」
弟子はがっくりとひざを落としてうなだれる。
弟「あぁ、風鈴の音が遠くなる・・。」
しばらくして北斎が筆を置く。
北「めしだ、めし」
お栄も筆を置く
栄「そうだね、めしにしよう」
弟「でも、風鈴蕎麦はもう行っちゃいましたよ。」
北「いつもの屋台で良いだろ。」
弟「ええ〜またあの夜鷹の屋台ですかぁ・・。あそこは主人の柄が悪いし汚ないから嫌なんだよなぁ」
栄「ぐずぐず言ってねぇでさっさと行きな!」
弟「へ〜い」
※「夜鷹そば」と「風鈴そば」 どちらも屋台のそばですが、前者は暖かいぶっかけのみにメニューに対して、後者は清潔でサイドメニューが充実していたそうです。
お蕎麦屋さんへ行こう!
毎年2月8日は「東京二八そばの日」です。
あちこちに「東京二八蕎麦」ののぼりを立てたお蕎麦屋さんがありますので、お近く店に寄ってみては如何でしょうか?
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