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小説『いきどまり』を読んで(読後感と詩)

この年末年始、ヨシカワヨシオ様の小説いきどまりを3回読みました!その時の模様をお伝えしましょう。こんな感じです。 ↓ 

一回目:「何が言いたいのかしら。え、もしかして?」
二回目:「うわー、やっぱり。もう一回ゆっくり読んでみよう」
三回目:「これも伏線、あれも伏線、たぶん伏線、きっと伏線」

伏線の頁に戻ることは「半返し縫い」に似ています。また、繰り返し読むことは「本返し縫い」に似ています。実際、そんな作業を繰り返すうち、この小説はしっかりと私の心に縫い付けられました。

そしてオマージュの詩が湧いてきました。なお、『いきどまり』には宇宙は登場しませんが、拝読しながら「記憶の神秘」と「宇宙の神秘」が私の中で重なったため、このような詩になりました。↓

★★★ ★★★ ★★★

記憶

作:近藤いずみ

幼い海馬は重たすぎる記憶を心に落とす
心は内なる宇宙であり無重力であるから
記憶は落とされた方向に愚直に進む沈む

やがてそれは探知不可な無意識に達する
もはや見えなくとも消えずに存在し続け
聴こえなくとも震えを止めずに進む沈む

太陽光線による劣化を見事に避けながら
ボイジャーのような微塵と成り果てても
落とされた記憶は健気なまでに進む沈む

ただごく稀に他の塵と衝突して跳ね返る
入射角と反射角の関係で異なる面を見せ
意識の方へと上昇その気配に海馬は嘶く

次第に姿を現す記憶に怯え後ろ足を蹴る
落ち着け今の君はそれに見合うだけ大人
それを背中に乗せたって潰れやしないよ

記憶は見事な手綱さばきで君をいざなう
新しい記憶を記録できる未知の世界へと
受け入れん浮かびくる記憶は君のカケラ

★★★ ★★★ ★★★

本当は、書評なるものを書きたかったのです。それで、ネット検索で「書評とは何か」「書評の書き方」等を勉強してみたのですが、どこまで書いたらネタバレになるのかがわからなくなり、また、私が書評だなんて僭越甚だしいと思うようになり、こういう形で作品と著者にリスペクトを示すことにしました。

ネタバレと勘違いを恐れずに一つだけ書くと、小説に登場する「いきどまり」という名の物の怪は、私の詩にでてくる「他の塵」のような存在ではないでしょうか。そして著者はおそらく「表紙の写真の道標の様なもの」と考えていらっしゃるのではないでしょうか。

それからもう一つ。特筆したいのは登場人物の愛らしさです。特に「いきどまり」と「ヤマナカさん」の情の暖かさが後を引きます。ここまで読んで下さった皆様も、ぜひ本を開いて彼らに会ってみて下さい。

本の購入・立ち読みはコチラから: https://bccks.jp/bcck/147145/info

★★★ ★★★ ★★★

同じくフラスコ書房行先の思い出せないバス(吉川みほ著)も、読み過ぎに注意しなければと思うくらい面白いです。後日またご紹介させていただきますね。

(今日はここまで)



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