山村留学で体験したこと③手作り食べもの色々
山村留学に来た5年間、ここで体験したことのまとめの続きです。ここ和合には手作りの暮らしを求めて移住してきた方々が先導して、味噌、醤油をみんなで手作りする機会が得られました。和合で穫れた大豆を贅沢に使って作る保存食。日本人のソウルフードですが、なかなか手作りするのにはハードルが高い。でもみんなでやれば大変な仕事もおしゃべりの美味しいつまみになってワイワイやりながら毎年の恒例行事として楽しく行ってきました。
こうやってみんなでワイワイ集まってみんなの食べものを共同で作るという作業をしていると、昔の集落の暮らしが想像されてきます。こうやってご近所で集まって井戸端会議しながら保存食を作っていたのではないか。ゆっくりと流れる時間の中作られるこれらの保存食は、お金を出してぽんと買えるものではなく、食べ物を作っているようで、一緒に作業する人々の絆まで育んでくれるようです。ここ和合での暮らしは食を通して周囲とつながっていく時間でもありました。
小学校では地域の人の協力を得て長野の郷土料理「おやきづくり」も体験しました。おばあちゃんたちが丁寧にやさしく教えてくれました。親御さんもどうぞという温かい声に甘えて学校の授業に一緒に参加してきました。こうして授業参観日ではなくても授業にいつでも参加できるのも、この小学校ならではの特典!一緒になっておやきづくりの勉強。地域の方々と触れ合える機会でもあり、本当にありがたかったです。
ここ数年のコロナ禍で開催が中止になっていますが、そば打ち体験も和合では出来るのです。材料をそろえるのは個人では大変なことも、体験教室ではすべて一から教えてもらえるのでこれも親子で参加。はじめてのそば打ちは楽しく、そして打ったそばはそば粉の味がぐんと際立って美味しいこと!なんでも手作りは美味しい!!!一度しか参加できなかったけど、またやりたいなぁ。
それから我が家の裏山では栗やくるみがわんさか穫れて、その収穫も楽しみの一つでした。くるみを炒っては割って食べる。その場で山の恵みをいただく幸せ。町ではすべてお金で買うもの。和合ではお金で買ってくることはできるけれども、店まで行くのにちょっと遠い。その代わり材料がタダで手に入るのだからやるっきゃない。くるみを割ってほじくる時間も楽しい豊かな時間。新しい時間の使い方楽しみ方を知ったのも和合へ来てからでした。
晩秋のこの時期はどの家の軒下にも柿が吊るされます。私も先輩移住者から干し柿づくりを伝授され、それから毎年の恒例行事となりました。あちこちで「柿はいらないかい?」と声をかけられます。南信州は干し柿の名産地なのであちこちで柿のれんが見られます。葉が散って寂しくなった秋の山ですが、柿のあざやかなオレンジ色が目を楽しませてくれる季節でもあります。アマ~く美味しく食べられるまで約1か月。じっくりじっくりと甘みをたくわえる時間を楽しむのも、ゆっくり進む山時間の楽しみ方です。
この他にも梅ジュース、梅酒、シソジュースなど、夏の飲み物は必ず作っていました。私はあまりやりませんでしたが、お母さん仲間は野沢菜のおつけもの、たくあん、梅干し、らっきょ漬けなどなど、お茶請けをたくさん仕込んで分けてくれることも。近所のおばあちゃん家にお茶に呼ばれると、甘いお菓子と一緒に手作りのお漬物が必ず何種類も出てきます。みな野菜を自家栽培しているので、一度に採れた野菜を上手に保存して長く楽しむ知恵を持っています。手作りは大変だけれども、それがむしろ楽しい。山村留学に来るのなら、お子様が学校に行っている間、自家製野菜で保存食づくりなんかにはまるのもお勧めです。先輩移住者さんや地域のおばあちゃんたちはたくさんの知恵を持っていますから、ぜひぜひ頼って食卓を彩ってみてください。山暮らしの楽しみは、やっぱり食にあると、食いしん坊の私は思ってしまうのです。