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短歌のすすめ[現代短歌]
短歌が好きだ。
それも現代の短歌が好きだ。
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いつから好きだったのか、きっかけはなんだったのかまるで覚えていないが、おそらく大学生くらいの時にハマって、好きな歌人の本を集めていた。
加藤千恵、穂村弘、佐々木あらら、桝野浩一、木下龍也、伊波真人、岡野太嗣、中澤系…
今にも死んじゃいそうな危うさや、もどかしさや色っぽさや日常の面白さを歌っていて、(今も)将来に不安を抱えていた学生の私には読むたび胸に迫るものがあった。
当時周りに短歌好きがいなかったこともあり、「こんな気持ちになる言葉の並びを知っている」ということが誇らしかった。
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歌集は今も電子書籍での取り扱いは少なく、電子書籍で本を読む機会の多い私も歌集だけは紙で購入をしている。
まずどの歌集も装丁がとびっきりに良い。エンボス加工特殊印刷、デザイナーの起用もセンス抜群で、シンプルに多数を売りたいビジネス書やら参考書の類の性質とは全く違う、愛と命が詰まっている。
文字組みもシンプルで、ページの中央に一行で書かれているのがセオリー。
見開きにつき2つの歌が並んでいるものが多く、緊張しながらページを繰る。
余白が勿体無いと思うこともあったが、5・7・7・7の文字数の余韻みたいなものがあるから今はそんな気持ちにはならない。
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現代のSNSとは相性が良いなと常々感じている。
長文を読ませるのではなく、短い文字で見せる表現することが現代の文字文化なのだ。その最たるものが短歌である。
年末年始に開催される紅白歌合戦がお茶の間では一般的で、これぞ年末!という雰囲気を感じるが私は年末に短歌界隈のTwitterがざわめき出すのを知っている。
紅白短歌合戦というものが年末年始にかけて開催され、数分おきに一般公募された短歌がタイムラインに流れる。グッと胸を掴まれるようなものから日常ほっこり系まで語り口の描写も揃いないが秀逸で、その雰囲気が大好きだ。
こんなにファンが多く多くの人に馴染まれる言葉遊びならば現代でもっと楽しまれてもいいのになと思ってしまう。
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一方でSNSやネットで簡単に呟かれコピーされ、挙げ句の果てには盗作されやすくなってしまったことも事実であるから言葉で生きるのはとても難しい。
難しいことがわかっているから買いたくなる、どうにか短歌に貢献したくなる。
誰かのための短歌が、私のための短歌になったように、他の誰かのための短歌になりますように。
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