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ナロキソンキットを携帯する若者たち

数あるトランプの世迷言の中でも、アメリカのオピオイド危機を隣国のせいにしている発言は、超絶腹が立つ。カナダとメキシコは国境の北と南からフェンタニル(オピオイド麻薬)を流入させてくるから関税で報復するだとぉ?麻薬の需要を作ったのは、そもそも悪徳製薬会社にオピオイド鎮痛剤をバカスカ売らせたアメリカじゃないの。なんたる欺瞞!

オピオイド危機、つまり麻薬中毒死の激増は、アメリカの「パーデュー・ファーマ」という製薬会社が元凶です。FDAと癒着しオピオイド(アヘン)系の鎮痛剤を売りまくり、膨大な数のアメリカ人をオピオイド中毒に陥れたパーデュー経営者一族の話が、Empire of Pain という本(オバマさんお勧め)に詳しく書いてあります。企業の悪魔的な貪欲ぶり、ホラー小説よりなんぼか怖いし。

オピオイド依存症は、立ち仕事や肉体労働に携わる低所得層を中心に広がっていきました。仕事中の怪我や腰痛に悩まされるブルーカラー層が、医者に処方された鎮痛剤が原因でオピオイド中毒になってしまうのです。パーデューからメガトン級の接待饗応を受けるドクターたちは、「人々を痛みから解放する」と正義の味方ヅラでオピオイド鎮痛剤を処方しまくります。

その後パーデューは悪徳マーケティングを暴かれて倒産しますが、経営者一族が責任逃れに躍起になる醜い姿が報道されています。

オピオイド危機はカナダにも広がり、密造しやすい合成オピオイド、フェンタニルによる死亡が急増。若者の死は4人に1人が薬物過剰摂取だということです(ソース)。

現在、薬局ではナロキソンキットを無料で配っています。この救命キットには、ODで意識不明になった人に鼻からオピオイド拮抗薬を注入できるスプレーが入っています。

うちの大学生の娘たちは、誰それがODで亡くなった、という話を身近に耳にする世代です。いつどこでODの現場に遭遇するかわからないので、2人ともナロキソンキットを持っています。

貧しい人々を麻薬漬けにして金持ちが超え太る社会、若者がOD拮抗薬を携帯するのが普通になってしまった社会を作ったのは誰ですか?

こっちのブログでも書いています、オピオイドの話:
黙殺される女性の痛み:イェール大学無麻酔採卵時件
ニューヨーク市検死局が明かすオピオイド危機の現状
庶民を裏切り続けるエリート政治と社会の荒廃


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