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胃腸万博に行ってきた。Rumbles: A Curious History of the Gut
題名の Rumbles は、お腹がゴロゴロいう音のこと。人類は胃腸という器官といかにしてつきあってきたか?「食べる・消化する・排泄する器官」についての総合史です。医学、生化学、神経学、歴史学、社会学、言語学、ありとあらゆる学問が出展して胃腸について語る「胃腸万博」みたいな本。
学生時代、授業がすっごく面白い先生っていませんでしたか?話が脱線しまくり、勉強嫌いな生徒もつい聞き入ってしまう話術を持ちながら、試験に出るポイントはハッキリ押さえてくれない先生。オーディオブックで聴いていたので、そんな先生の授業に出ている気分になりました。
たとえば「この章では胃腸と脳の関係にフォーカスします」とテーマを宣言して始まるのに、話が四方八方に飛んでいき、読後に「胃腸と脳の関係」について何を学んだか?と聞かれても「いろいろ」としか答えられない感じ。活字の本だと、展示会で面白いブースに立ち止まるように、興味深い箇所をじっくり読み返したりできるんですけどね、オーディオだと、雑学の奔流の中に放り込まれて、あ~れ~って流されていく感じ。
昔の医学生は解剖研究用の死体調達に苦労して墓荒らしをやったとか、フランスではデスクで仕事しながらランチを食べるのは違法だったとか、”creatively constipated” (創造的便秘)”といういつか使ってみたい表現とか、ネタの宝庫ではありました。
衝撃だったのは「糞便移植」の話。健康な人のうんこを病人の腸に移植すると病気が治るという。東大の研究を貼っときますね。
個人的に一番面白かったのは、ジェンダーの章。便秘している女性は、機嫌が悪い、可愛げがない、美しくない、丈夫な子を産めない、ありとあらゆる女性的欠点は便秘が原因なので、便秘を根絶することが健全なる社会への第一歩である。という「便秘諸悪の根源説」が真面目に語られていた時代の話とか、面白すぎる。