ドビュッシーからバルトークへ
Abilityに精通するために、まずはピアノを集中的にやってみようと思ったのです。
いや、あれやこれややりたいことは山ほどあるのですが、何せ知識も技術も覚束ないので、無理に背伸びすると、ひどいものを造ってしまうことになるのは確実で、ぐっと我慢なのです。
単一楽器ごとにDTM-DAW上でどのように音が鳴るのか、細かいニュアンスをどう表現できるのか、そしてマスタリングで如何に調整するか・・・クリアしなければならない問題が沢山あります。
<ドビュッシーの二曲>
ドビュッシーやラベルの音楽は、私がクラシックの中でもっとも聴いている音楽なので入りやすいことは確かです。音がどのように響くのかについてあらかじめ心構えができています。
複雑な和音、巧妙な転調、きらびやかな技巧・・・どれをとっても良く出来ていて、打ち込みを通じてその世界に近づくことができるのはとても幸せなことです。
今回Youtubeで公開した「アラベスク第一番」「アラベスク第二番」はとてもよく知られた楽曲で、ピアノ曲の中でもポピュラーなもので、沢山のアーティストが実演しています。参考にする音源は十分にあります。いや、むしろありすぎて、どのあたりを基準にするか迷うところでもありました。
まあ最後は自分の感覚で、「こんな感じに聴いてみたい」というのが妥協点でした。
音源(WorkstationのUVI Model D)が、物凄く良いのでかなり助けられた部分もあります。
<マスタリング>
ドビュッシーを上げてから、Youtube動画でマスタリングについて、「ラウドネス値」という基準を適正に定めないと、期待通りの音で再生されないことがある、というのを見つけてしまいました。
これは一定以上の音圧のものは、自動的に上限がカットされてしまうというもので、Youtubeの場合だと-13LFKS/LUFSとからしくて、それ以上になると強制的に音が潰されてしまうようなのです。
(以下の場合は問題ないらしい。-15とか-17とか。ただしニコ動やspotifyやAppleMusicなどは-14~-16くらいの設定なので、それも気を付けないといけないようだ。)
そんなの知らんかった・・・
逆に言えば、そんなことまでネット動画として上がっていることに感謝です。
そもそもマスタリングなんていう作業は音楽家の守備範囲外だと思っていた私です。
その昔、現役時代、レコーディングといえば32チャンネルテープでした。東芝やビクターなどのスタジオ(これが使用料も半端なくて70年代~80年代の頃で1時間6万円だったような)で多重録音して、全部入れ込んだ後ででっかい調整卓にミキサー様が座ってらっしゃって(ミキサー技術料も1時間3万円だったか)、沢山のフェーダーを巧みに操って、魔術のようにレコード音源として仕上げる。マスタリングに同席することはあっても、そのあたりはすべてお任せで、音楽家風情がなんか意見を言える雰囲気ではありませんでした。
最終的な製品はレコード盤という形でした。
それがデジタル化され、CDに取って代わり、いまやメディアなしの直配信という時代になっています。そんな時代の音楽家はマスタリング技術も身に付けなければならないようなのです。
はぁ~;
<バルトーク>
ドビュッシーの次に何をやるか、迷いました。
本心は早く本格的なオケの打ち込みにかかりたいのです。
ラベルの「クープランの墓」とかホルストの「惑星」とか、オーケストラスコアも手に入ってるし、華麗で豪華な音の世界の再現を目指したい。
でも今の自分の実力では到底かなわないと思うのです。
やはり今年年頭に誓ったように、じっくりゆっくり技術を習得して行こう。幸い時間はたっぷりあることだし、ね。
私の音楽的な興味の主軸は近代音楽以降になるので、作曲家としてはヒンデミット、スクリャービン、ヤナーチェク、フォーレ、ストラビンスキー、ちょっと下ってメシアンくらいまで。南米系でいえばヴィラ・ロボス(ブラジル)やヒナステラ(アルゼンチン)・・・いくらでも大作曲家はいるのですが、中で一人だけ避けてきたのがバルトークなのです。
バルトークについてはその音楽的な影響力の大きさが評価されていて、それも理解出来るのですが、正直「あんまり好きじゃない」「なじめない」
でもここを通らないとちゃんとした勉強にはならない、と思いました。
取り組んだのは「組曲作品14」(Suite Op.14)(*1)
※バルトークのピアノ作品の中でも指折りの重要な楽曲であり、唯一ピアノソナタに比肩しうる存在である
(Wikipediaから)
※組曲 作品14には民謡は含まれません。私自身が自ら創作した独自の主題だけに基づいています。この作品を作曲する間、ピアノ技巧をより洗練させ、変化させることによってより透明度の高いものにすることが頭の中にありました。より骨太かつ筋肉質でロマン派の後期や終盤の重々しく和声付けされた様式には相対する形、すなわち、分散和音やその他の修飾のような不必要な装飾が廃されたもので、それはより簡素な様式なのです。
(バルトーク・ベーラ、1944年7月2日、David Levitaとのラジオインタビュにて。)
これは作曲者本人の演奏も残っているし、コンクールの課題曲にもなるほどの名作です。
このうち「ルーマニアの器楽曲を想わせる主題が登場する」第1曲Allegerettoと「十二音技法が使用されている」第2曲Scherzoをやってみました。
打ち込み始めると、けっこう拒否反応が強い。自分の経験にない音の動き。なんでその音になるの?
三週間ほど悪戦苦闘しました。
毎日繰り返し聞いてると、だんだん好きになってくるのです。
最初は突拍子もない動きに思えたものが、いまでは流れの中でなんとなく調和しているように聞こえる。作曲家の意図が奈辺にあったのかは知る由もないが、跳ね回る音の世界が心の中に不思議な映像を生み出す。
バルトークがなぜ評価されるのか。その一端を垣間見た気がしました。
これでピアノ単独は一区切り。つぎはソロ楽器とピアノの組み合わせかな。
フォーレあたりやってみるか。
<Abilityでいいのか>
AbilityPro4を触り始めて約一か月。
前身のSingerSongWriterを昔使っていた経験から、比較的早く馴染めるだろうと予測していたが、
実際に使ってみると、いろいろと不便なことが多いということに気が付き始めた。
前にも書いたことだが、私の場合、作曲や編曲は「譜面ありき」で始まるのです。譜面を見ながら考えるのです。構想を練るのです。
Abilityではその譜面作成機能は、無料のMuseScoreに比べても見劣りします。
きょうび、DTMをやる人間は譜面なんか使わないよ?
そうなのかもしれません。
よく目にするのはピアノロールエディタみたいなやつですね。
YoutubeのHowtoもの動画でも、多くのクリエーターがそれでやっているようです。
そのインターフェースに慣れてしまえば便利なものなのかもしれませんが、私にはそこに何が書かれているのかさっぱり見当がつきません。
オーケストレーションについての入門動画で、外人のクリエーターが(多分)Siberiusを使って解説しているのを見ました。綺麗な譜面です。これなら行けそうだけど・・・お値段は約十万円ほど;
ごめんなさい。出直してきます。
よく使われているものではCubaseも良さそう。だけどこれもPro版はお高い。
その他にもオーディオインターフェースや充実のオーケストラ音源、民族楽器中心の音源セット、様々な外部機器としてのコントローラ・・・
ちゃんとお金がかかることになっているんだな。
底辺Youteberを脱出出来たら考えよう。
いつのことになるのやら。
(*1) https://youtu.be/Yhv6c9WOw98