思い出のオムライス 『金沢 洋食屋ななかまど物語』
お話の舞台、金沢。一度だけ、訪れたことがあります。作中にも登場する、冬の兼六園の雪吊りが綺麗でした。
以前Noteで知って、ずっと気になっていた『金沢 洋食屋ななかまど物語』
書籍→Note(原作)の順で読了しました。
先を読むのが楽しみなような、怖いような…という訳で、おいしいお菓子を少しずつ食べていくみたいに、まずは書籍から、毎日1章、1週間近くかけて、ゆっくり読み進めていきました。
自分にとって、何が一番大事か。家業か、好きな人か、さらにどちらの男性を選ぶのか。理想と本心、複数の選択肢の狭間で、主人公・千夏の揺れる気持ちに共感したり、彼女の思わぬ行動を遠巻きに眺めたり。千夏が手探りで自分の道を模索していくうちに、気が付けば、いつの間にか道は出来ていたように思います。
書籍を読了後、Note(原作)を読みました。登場人物に違いがあったり、書籍にないシーンがあったりと、粗削りな感じを受けました。この原作を元に、書籍の方は、登場人物1人1人について、細かい所まで念入りに手を加えているのがよく分かりました。Noteにないシーンを増やしたり、逆にNoteにあるシーンを削ったりと、1冊の本に仕上げていくまでには、かなり試行錯誤があったのでは…と思います。
千夏が、自分の気持ちに従い、最後に結果がついてきたのを見届けて、あれで良かったんだと、納得して終えられました。周りの支えもあって、自分の本心をしっかりつかみ、最良と思う道を選んだ千夏の一途な性格が魅力的でした。
周りの皆に幸せになることを願ってもらえる千夏は幸せな人だと思います。取っ付きにくい印象だった、丹羽さんの後輩の女性ですら、幸せになるのを願ってくれていました。案外この人、理解のある人なんだと思い直しました。
脇役たちも、それぞれ個性がありました。丹羽さんも紺堂さんも国際的なところが共通点ですね。紺堂さん派の私にとっては、最後にこの人が幸せになるシーンが、書籍にはきちんと盛り込まれていて良かったです。世界を股に掛けて活躍し、器も大きい紺堂さんに相応しい結末だと思います。この人を支える女性も、器が大きくないと大変かも…なんて思ったりして。ドラマ『天皇の料理番』の主人公に重ねてしまいました。
いくつか気に入ったセリフがありました。
ななかまどのお客さま(林田さん)のセリフ
人はね、悲しい顔をしてものほしそうな人を素敵とは思わないんだ。満たされて、周りに優しさや思いやりを分け与えられる人にこそ、そばにいてほしくなるんだよ。(中略)千夏ちゃんができることは、自分の思いを押しつけることじゃなくて、丹羽くんがどうやったら喜んでくれるかを考えることだと思うよ。
千夏の父のセリフ
決められないときはな、千夏、時間が解決してくれるもんよ。
紺堂さんのセリフ
憧れって本当に形になるものなんですね
千夏さんが心の中で丹羽くんをどんなに想っていたとしても、それも受け入れて、あなたを大切にします
丹羽さんのセリフ
ちなっちゃんの隣の席は、ご予約できますか?
名セリフがたくさん散りばめられていて、とても印象に残りました。他にもありますが、特に印象深かったものを一部引用させて頂きました。
漫画にしてみたら、また違う角度から楽しめそうな作品だと思います。
この小説を読むうちに、以前、地元の百貨店に入っていた、白いソースがかかったオムライスを出してくれるお店があったのを思い出しました。現在は百貨店自体がなくなってしまいましたが、あのお店の名前だけでも控えていたら…と残念でなりません。食にこだわらないタチの私ですが、あのオムライスは本当に美味しくて、時々出かけては食べるのを楽しみにしていました。
千夏と一緒に悩んだり迷ったり、楽しい世界に浸ることが出来た1週間でした。
こちらの作品の感想です。
Noteバージョンと比較してみると、より面白さが増します。
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