二百十日の風
すっきりしない天気。
雨になりそうな気配を含んだ風。
一度干した洗濯物を取り込む。
雨が降りそうで降らない、いまいちはっきりしない天気に、何かが起こりそうな前触れを楽しむ休日の朝。
150種類以上あるという風の種類。
その日の朝の風は、雨の前兆とされる『いなさ』だったに違いない。
別名『辰巳の風』ともいうそうだ。
こんな風の吹く日には『風の又三郎』を思い出す。
2学期初日。
風の強い9月1日。
二百十日の風とともにやって来て、嵐の日に再び風に乗って去って行く不思議な転校生の男の子。
(二百十日とは、立春から210日目、9月1日頃を指す)
赤い髪の毛に垢ぬけた服装。
その都会的な雰囲気は、田舎の小学校ではひと際目立つ。
ほんの10日ほどで去って行ってしまったこの少年は、風の神さまの子どもらしい。
何度読み返しても、少年の正体がつかめない不思議な物語。
子供の頃、風が強い日には「今日は又三郎がやって来るよ。」と周りの大人が言っていた。
以前見た映画で流れた懐かしいメロディが、頭の中でこだました。
こちらは1989年公開の『風の又三郎 ガラスのマント』より。
原作に手を加えてあり、登場人物も原作と多少異なる。
まるで風に乗っているかのような冒頭のシーンが印象的な作品。
風は喜びを連れてきて、悲しみを運び去る。
時には逆のこともあるけれど…
一瞬で通り過ぎ、つかむことの出来ない風にそっと祈りを込める。
『良い風が吹きますように』と。