雨に濡れる紫陽花
かんかん照りの暑い日より、ジメジメしていても、意外と好きな曇天の日。
夏がやって来る一歩手前のこの季節。
雨でなければ傘も不要。
身体も楽で気持ち良い。
先日の雨降りの日、折り畳み傘が壊れてしまった。
午後から急に振り出した雨。
帰宅途中、最初は何ともなかった傘が、一度閉じたら開かなくなった。
『こんな時に!』と自宅まであと僅かの距離を、濡れながら歩く。
それほど使ってないはずだが、気に入った傘だったから、修理に出したこともある。
けれど今回は、どうやら修復不可能の模様。
通りすがりの公園に咲く紫陽花が、私同様、雨に打たれて鮮やかに見えた。
『紫陽花には雨が似合う。』
帰宅後、開かなくなった傘を上口に置く。
傘にプリントされている大きなピンクの百合の模様を見ていたら、先ほどの紫陽花を思い出した。
雨に向かって燦然と輝くしっとりした姿。
それは、太陽に向かって堂々と立ち尽くす夏の向日葵と対照的に、そこはかとない優しさと、奥底に秘めた強さを示す、梅雨の季節の静かな輝き。
悲しみ、やるせなさ、すべての心の澱を洗い流すように、雨を受けて立ち尽くす花。
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