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オーストラリアのドラァグクイーン映画レビュー「プリシラ」:自己表現と自由の追求

<ご注意>これは2023年公開の映画『プリシラ』(エルヴィス・プレスリーの妻を描いた作品)ではありません!

今回ご紹介するのは、1994年公開のオーストラリア映画 『プリシラ (The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert)』 です。
ドラァグクイーンとトランスジェンダーが織りなす自由と自己表現のロードムービーで、アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞したほか、世界中で高く評価されました。

自己表現というテーマが織りなす物語の力


映画「プリシラ(The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert)」は、ドラァグクイーンとトランスジェンダーの3人がオーストラリアの荒野を旅する中で、自分たちらしさを存分に表現する姿を描いた傑作です。

この物語は単なる派手な衣装と音楽の祭典ではなく、自己表現が持つ力、そしてそれを取り巻く葛藤や希望を深く掘り下げた人間ドラマでもあります。

英国俳優テレンス・スタンプの圧倒的存在感


主演のテレンス・スタンプはこの映画でトランスジェンダー女性のバーナデットを演じています。彼の静かでありながら威厳を感じさせる演技は、自己表現というテーマに重みを与えます。彼が演じるバーナデットは、外見や社会的な期待に縛られることなく、自分らしさを貫こうとするキャラクターです。その姿は、派手さで目立つ他のキャラクターと対照的でありながら、物語の中で深い感動を与える存在です。
スタンプは「イエスマン」での自己啓発セミナーのグル役としても知られていますが、「プリシラ」ではより静かで内面的な自己表現を体現しています。

この役柄を通じて、彼が持つ俳優としての多面性が改めて浮き彫りになっています。

ところで、ドラァグクイーンといえば、派手なパフォーマンスが有名ですが、テレンス・スタンプのダンスが、他の二人、ガイ・ピアースとヒューゴ・ウィーヴィングの堂に入ったダンスにくらべてちょっとぎこちなかったのがご愛敬。果たしてこれも演技だったのかしら?と疑問に思うことも。

このぎこちなさについては、以下のように考えることができます:

1. キャラクターとしての表現

バーナデットは、トランスジェンダー女性であり、華やかなドラァグクイーンとしてのパフォーマンスよりも、落ち着きや優雅さを重視しているキャラクター。そのため、他の二人のような大胆でアクロバティックな動きではなく、控えめで洗練された動きを選んだ可能性があります。ぎこちなさも、年齢や人生経験を反映した演技だったのかもしれません。

2. テレンス・スタンプ自身の個性

テレンス・スタンプは、クラシックな俳優として知られ、アクションや派手な振り付けを得意とするタイプではありません。そのため、自然体のぎこちなさがそのままスクリーンに映り、それがむしろキャラクターの深みを加えた可能性もあります。

3. 演出の意図

監督ステファン・エリオットは、3人のキャラクターにそれぞれ異なる個性を持たせています。ダンスシーンにおいても、バーナデットの動きが他の二人とは異なるのは意図的で、年長で洗練された彼女のキャラクターを強調するためだったのではないでしょうか。


ぎこちない動きが「ご愛敬」として感じられるのも、この映画の魅力の一部です。バーナデットのダンスは、ぎこちないながらも、彼女の人生経験や品のあるユーモアを反映しており、観客に親しみを持たせる重要な要素だったのかもしれませんね。

映画を観ながら、この「ぎこちなさ」がテレンス・スタンプ自身のものなのか、演技として意図されたものなのか想像するのも、作品の楽しみ方の一つです!

自己表現が生む葛藤と解放

「プリシラ」は、自己表現が時に社会との摩擦を生むことをも描いています。
3人が田舎町で出会う偏見や敵意は、自己表現の困難さを象徴しています。しかし彼らは、旅を通じてその摩擦を乗り越え、最終的には自分たちの生き方を肯定します。この映画は、誰もが抱える「自分らしく生きること」の重要性を再認識させてくれる作品です。

彼らが荒野を旅する象徴的なシーンは、自己表現の解放感そのものです。ドラァグクイーンとしての派手なパフォーマンスや壮大な自然との対比は、抑圧から解放される瞬間の美しさを鮮烈に映し出しています。


映画基本情報

  • 原題: The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert

  • 公開年: 1994年

  • 監督: ステファン・エリオット

  • 主な出演者:

    • ヒューゴ・ウィーヴィング(ミッチ/ティック役)

    • ガイ・ピアース(アダム/フェリシア役)

    • テレンス・スタンプ(バーナデット役)

  • ジャンル: コメディ、ドラマ

  • 受賞歴: アカデミー賞衣装デザイン賞受賞、カンヌ映画祭ある視点部門上映作品

  • あらすじ: ドラァグクイーンのティックとアダム、トランスジェンダー女性のバーナデットが古びたバス「プリシラ」に乗り込み、砂漠を越えながらパフォーマンス旅行をするロードムービー。途中で直面する偏見や困難、友情を通じて、彼らは自分たちのアイデンティティを見つめ直す。

この映画は、自己表現に悩むすべての人にとって、希望と勇気を与えてくれる作品です。あなたも「自分らしさ」を表現するための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

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神谷ちよ@あなたの情熱で世界を変える!グローバルプレゼンマスター|異文化コミュニケーション専門家
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