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【句集紹介】群青 水原秋櫻子句集を読んで
・紹介
前に水原秋櫻子の名書「高濱虚子ー並に周囲の作者達」の紹介記事を書いたので、彼の実際の句も紹介したい。秋櫻子の句の特徴や考え方については下記添付の記事に詳しいのでご覧いただけたらと思う。
ここでは、一つ、クイズを出してみたい。下記の2句はどちらも「那智の滝」をモチーフに詠まれた句だが、どちらが客観写生の虚子の句で、どちらが俳句に主観の重要性を説いた秋櫻子の句か、お分かりになるだろうか。
瀧落ちて群青世界とどろけり
神にませばまこと美はし那智の滝
正解は「瀧落ちて」が秋櫻子。「神にませば」が虚子である。あるいは2句とも人口に膾炙した句なので、ご存じの方もおられたのではないか。
ここで小生が投げかけたいのは、「瀧落ちて」の句のほうが、より客観的で、「神にませば」の句のほうが、より主観的ではないかということなのだ。
句会に行くと、「現代俳句は主観的で、伝統俳句は客観的だ」などという二元論を聞くが、ことはそんな単純なものではない。虚子だって主観的な名句を沢山残している。(春風や闘志いだきて丘に立つ、など。)
秋櫻子の句は、短歌的とも言われる。窪田空穂という歌人の歌会には頻繁に参加していたという。俳句と短歌の融合への挑戦。文学としての俳句を新たな新たな表現方法のステージへ昇華させたこと。それが水原秋櫻子の成した偉業なのである。
小生も一つの考えや見方に固執せず、柔軟なものの捉え方で句作をしたいものである。
・厳選10句
蟇ないて唐招提寺春いづこ (蟇…ひき。ひきがえるのこと)
萩の風何か急かるる何ならむ
素朴なる卓に秋風の聖書あり
瀧落ちて群青世界とどろけり
山の蛾はランプに舞はず月に舞ふ
その墓に手触れてかなし星月夜
雨くらきわびしさに栗茹でてをり
あきらめし旅あり硯洗ひけり
酒知らぬ我は旅のみ牧水忌
朝顔の今朝もむらさき今朝も雨
・作者略歴
明治25年10月9日生まれ。高浜虚子に師事。「ホトトギス」で山口誓子、阿波野青畝、高野素十らと4S時代を築く。昭和6年主宰誌「馬酔木(あしび)」で虚子の写生観を批判、新興俳句運動の口火をきった。39年芸術院賞、41年芸術院会員。産婦人科医で,昭和医専の教授もつとめた。昭和56年7月17日死去。88歳。東京出身。東京帝大卒。本名は豊。句集に「葛飾(かつしか)」など。石田波郷、加藤楸邨らの俳人も育てた(デジタル版 日本人名大辞典+Plus参照)
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