塩の真実-④熟成(枯らし)
海塩の製造の場合、塩の結晶を取り出した後の水分が、前回③成分で記載したにがり(苦汁)です。
にがりの成分は次のとおりです。(ウィキペディアより引用)
イオン交換膜によって得られるにがりの1リットルあたりのにがりの大まかな成分(比重 1.264、30℃)
塩化マグネシウム 188.4g
塩化カリウム 56.4g
食塩 74.7g
塩化カルシウム 64.5g
臭素 10.6g
硫酸マグネシウム 微量
にがり成分の約半分が塩化マグネシウムとなっています。にがりがその名のとおり苦いのは、このように塩化マグネシウムがたくさん含まれているからです。
海塩の中で、天日塩や入浜式、流下式等、塩田を使用して作られた塩の場合、塩田から取り出す塩の結晶には多くの水分を含んでいます。この水分は、にがりと同じ水分ですから塩化マグネシウムを多く含んでいて、そのまま食すると苦味を感じます。
このため、昔の日本では枯らしという熟成工程が行われていました。枯らしとは、取り出した塩の結晶を蔵に寝かせ、水分であるにがり成分が時間をかけて少しずつ滴り落とす工程です。枯らしにより、塩の結晶から苦み成分が排出され、それに伴い苦味も少しずつ薄れて、しょっぱい中にも甘みを感じる塩になります。昔の日本では、2年~3年と長期間枯らしが行われた塩は甘みも増し珍重されていたようです。
ところが、近年の海塩、特にイオン交換膜製法では遠心分離機を使って加熱しながら塩の結晶から水分を飛ばす仕組みに変わってしまい、枯らしを行う塩づくりは国内ではほぼ消えました。他の海塩でも、長期間の枯らしは塩製造のコストが増すことから、枯らしの概念自体が国内ではなくなっています。
また、近年の多くの海塩製法では、せんごう(煮詰める)と呼ばれる結晶化工程を併用することが多いため、本来の枯らしのもう一つの重要な効果である熟成が不可能になっています。
枯らしは、にがりの水分を滴り落とすだけでなく、塩田から取り出したままの状態で長期間で蔵に寝かせることで、高度好塩菌による熟成が行われているのです。塩は、基本的に細菌を寄せ付けないので塩漬け等、食料の保管に使用されます。
ところが、天日塩の塩田には塩を好む高度好塩菌という塩分の濃度が高い場所だけを好む古細菌(アーキア)が存在していて、この古細菌が酒の熟成と同じように塩の生成に熟成という善い役割を果たしていると考えられます。
ちなみに細菌と古細菌は全く異なる生物で、古細菌には好塩菌の他、メタン菌や好熱菌等の種類もいて、地球自然の成立ちに大きな影響を与えている生物です。
従って、せんごうのような長時間煮詰める工程を行うと、好塩菌が完全に死んでしまいます。せんごうによって出来た塩を蔵に長期間寝かせてにがり成分は滴り落ちても、好塩菌による塩の熟成が出来なくなります。
本当の意味では枯らし、及び熟成とは、非加熱でかつ天日塩で製造し、その上で好塩菌による長期の熟成を行ったもので、私達は非加熱長期熟成天日塩と名付けています。
非加熱長期熟成天日塩が存在するのは、厳密に言えば韓国の南西部の新安(シアン)郡で生産された天日塩の一部だけです。同じ韓国の天日塩でも、最終工程で平釜式のせんごうを使用している天日塩も存在しています。従いまして、非加熱長期熟成天日塩は、世界的にも非常に貴重な御塩となっています。
CALSEEDが販売しているのは、韓国天日塩業者最大手の太平塩から輸入している非加熱長期熟成天日塩の熟成1年物と3年物です。
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最後までお読みいただきありがとうございました。次回に続きます。
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