⚫️ヒッチャー(1986)
本日の懐かしの映画は、「ヒッチャー」(1986)。
ルトガー・ハウアーが狂気のヒッチハイカーを演じた傑作スリラーです。
シカゴからサンディエゴに車で移動中の主人公・ジムは、雨の中道路脇に立ちすくんでいる一人のヒッチハイカーを拾います。
退屈しのぎの話し相手に良いかなと軽い気持ちで乗せたジムは、程なくして乗せた男が異常である事を察します。
男は、ジョン・ライダーと名乗り、人を殺したと言います。
降りる様に懇願しても全く応じようとしないジョン。
ジムは、思い切って助手席の扉を開け、ジョンを車から突き落とします。
解放された喜びも束の間、翌日になると別の家族の車に同乗しているジョンを目撃。
ジムは、自分が異常なヒッチハイカーに追われている事を察します。
逃亡中、ダイナーに入った時に知り合ったウェイトレスのナッシュ(ジェニファー・ジェイソン・リー)も、成り行きで一緒に逃亡する事になり、警察・狂気のヒッチハイカー両方から追われる身となってしまいます。
ジョン・ライダーの執拗な追跡は止むことなく続き、モーテルで追いつかれてしまった二人は、身も凍る様な「試練」を受ける事になります。
自分を殺してみろと何度も迫るヒッチハイカーをジムは倒す事が出来るのか。?
VHS時代から知っている作品でしたが、本編を観たのはDVDが主流になってからになります。
モーテルの外で受ける二人の「試練」を初めて観た時は、正直固まってしまいました。🥶
警察で逮捕記録もないジョン・ライダーと名乗る謎のヒッチハイカーの経歴が兎に角謎で、連続殺人鬼なら警察のデータベースにあっても不思議はないのですが、それもない。
ただの民間人にしては、銃器の扱いに慣れている。
従軍経験があるのか? 民間人ではあるものの、射撃が趣味で銃器の扱いに慣れているだけなのか。
はたまた、ただの人生に疲れてしまった一人の名もなき男(近年で言う所の無敵の人)の凶行だったのか。全く明かされる事がなく物語は幕を閉じます。
すべては観る側の想像に委ねられている訳です。
自死すれば左程他人に迷惑をかける事もないのかも知れませんが、自分では死にきれないのか、自分を殺してくれる対象を探し続けていた様で、運悪くジムと言う青年が選ばれてしまいました。
一度狙いを定め獲物を徹底的に追い込み、ジムを極限状態に追い込んで行きます。
その過程で邪魔な者、追い込む為に必要とあれば、周囲の人間は誰でも容赦なく殺します。
自分を殺すに相応しい男に成長して貰う為に。。
まるで、「幽遊白書」の戸愚呂(弟)が120%の自分を斃してくれる相手に主人公の浦飯幽助を選び、彼が最大限の力を引き出すために大事な人にまで手をかける行為と合致します。
この映画は、追われる側のジムの視点で観る場合と、ヒッチハイカー・ライダーの視点で観る場合で大きく印象の変わる作品となっています。
ルトガー・ハウアーの狂気に満ちた演技を見ていると、本当にそう言う人なのか?と思ってしまう程にハマっています。🤯
壮絶な結末を迎えてしまうナッシュ役を演じるジェニファー・ジェイソン・リーは、ブリジッド・フォンダと共演した「ルームメイト」(1992)のサイコパスな同居人役や、タランティーノ監督作「ヘイトフルエイト」の女盗賊役でご存知の方も多いと思います。
彼女は、ポール・バーホーベン監督の「グレート・ウォリアーズ/欲望の剣」でもルトガー・ハウアーと共演。
こちらでも、酷い扱いを受ける役を演じていた様に記憶しています。
そう考えると、若い頃の彼女は、主演の「ハート・オブ・ミッドナイト」も含め、受難な役が多い気がします。
近年は、自分の大好きな「ツイン・ピークス」シーズン3(ザ・リターン)にも悪役ながら出演していたので、つい嬉しくなってしまいました。☺️
「ヒッチャー」の音楽は、マーク・アイシャムが担当。
全編を彩るスリリングなスコアを提供しています。個人的には、エンドクレジットに流れる静かなヒッチャーのテーマ曲がお気に入りです。
日本では、それ程ヒッチハイカーの数も多くないと思いますが、自分は身元のよく判らない人を車に乗せたいとは思わないので、道にヒッチハイカーが立っていたとしても通過してしまうでしょう。
この映画を観たら、きっと皆さんもそう思う様になると思います。
それ位に戦慄を覚える作品です。
未見の方は、是非挑戦してみて下さい。