映画「インサイドヘッド2 」感想と解説
こんばんわ✨
世界興行収入がTOP10入りし、爆発ヒットしてる「インサイドヘッド2」について解説と感想を語っていきます。めちゃくちゃ長いので解説等必要でなければすっ飛ばしてください。
🌈✨インサイドヘッド2
公開日:2024年8月1日
ピクサーとしてはケルシーマン初監督作品。
脚本は前作と同じメグレフォーヴ。
https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2
🌈✨解説
★ 用語解説
ライリー保護システム(Riley Protection System)
良くない思い出を「記憶の外れ」へと追いやることでライリーの心を守るシステム。ヨロコビが良くない記憶を"選んで"「記憶の外れ」へ飛ばしていました。記憶の外れ(Back of the mind)
「記憶の外れ」だと記憶から忘れてしまってるような意味に受け取れますが「Back of the mind」だと、心の奥にしまい込んでる記憶という解釈がしっくりくるかもしれません。信念の泉(Belief System)
ライリーが経験した記憶、思い出から生まれる「信念」が集まる場所。
どうやら「思い込み」も含まれるようです。自分らしさの花(Sense of self)
「信念の泉」から出来上がる、自分らしさ。アイディアの嵐(Brainstorm)
問題解決のためのさまざまな「思いつき」や「ひらめき」の嵐、ブレインストーム。あの大きかったアイディアの色はオレンジ色でした。意識の川(Stream of consciousness)
ライリーが意識したものがこの川に流れてくる。お腹が空いた時にピザが流れ、ヴァルから嫌いなスティックバーをもらったとき、段ボールの触感に似ているとパサパサしている嫌いなブロッコリーも一緒に流れてきた。皮肉の裂け目(Sar-Chasm)
皮肉を言ったときにできる裂け目。意識の川を切断しているのは、真実とは違うことを言ってるから壊れていってるのでしょう。ブロッコリーが皮肉の裂け目に落ちてしまい、そのまま信念の泉まで流れシンパイに発見される。これは最後ヨロコビたちが記憶の外れをダイナマイトで爆発させ皮肉の裂け目を流れて信念の泉にたどり着く伏線になっている。
★ 感情たちについて
感情たちはその感情の性質を持っているとされていますが、インサイドヘッド2では、時にヨロコビやシンパイが泣いたり、イカリの「俺だっていつも怒っているわけではない」という台詞があったり、前作を通して感情たちが成長していることも感じられました。
感情たちが感情を思っており少し違和感に思えますが、感情たちは「その感情をライリーに与えることができる」だけで、キャラクター自体は性格を持っており、成長して他の感情を持つこともできるという解釈が良さそうです。
★ 新しく増えた感情たち
シンパイ(Anxiety)
ライリーの「不安」「心配」担当。いつ何が起こってもいいように用意周到のために荷物いっぱい持ってた登場が印象的。「不安」や「心配」はとても大切な感情ですが、不安や恐怖、緊張などが強くなると精神的なストレスで過呼吸を引き起こします。Anxietyはどちらかというと「不安」要素が強い単語のようです。イイナー(Envy)
とっても可愛いらしい容姿と名前ですが「妬み」担当です。憧れへの目標意識を高める効果があるけど、気に食わない相手は妬みます。ダリィ(Ennui)
思春期あるあるの「どうでもいい」「めんどくさい」担当です。親の話がどうでもよかったり、会話がめんどくさくてそっけない返事をしたり。親と距離を置いてるのはダリィが影響しているようです。ハズカシ(Embarrassment)
ライリーの「恥ずかしい」担当。その感情から繊細で疎外感を持っており、前作で同じ境遇だったカナシミと意気投合しています。ナツカシ(nostalgia)
見た目がおばあちゃんの「懐かしい」担当。
※突然ドアから司令部に入ってくることで、奥にまだ出てきていないだろう感情たちが控えていることも説明している。
★ ストーリー解説
重要そうな部分に絞って解説します。
ヨロコビはライリーにとって「良くない記憶」のみを選び、ライリー保護システムで記憶の外れへ飛ばしていました。
またライリーにとって「良い思い出」のみを選び、「信念の泉」へ持っていき「わたしはいい人」というライリーらしさを作り上げていました。
そこに新しい感情が増え、シンパイはライリーのためを想い、邪魔になったヨロコビたちを司令部から追い出してしまいます。
シンパイもまた「心配がもたらした思い出」のみを選び、「信念の泉」へ持っていき、どんどん「心配」から生まれた「信念」が増え、新しいライリーらしさを作り上げていきました。
信念が「心配」でいっぱいになると「私は全然ダメ」というライリーが出来上がってしまいます。
ファイアーフォークスに入団するため、どんな手段を使ってでも3点を取るというアイディアに、仲間にパスを回さず自分でゴールを取りに行き、仲間からボールを奪い、最後はファールをもらってしまいます。
退場になったことや、友達のグレイスと衝突してしまったことでさらにシンパイも焦り暴走し始め、ライリーは過呼吸を起こします。
ヨロコビたちは記憶の外れにあった「良くない思い出」と共に「信念の泉」にたどり着きますが、その「良くない思い出」が「信念」を作り出そうとしていました。
暴走するシンパイを止め、「わたしはいい人」という「自分らしさの花」を元に戻したのにライリーの過呼吸は収まりませんでした。
シンパイは「ごめんなさい。感情が "ライリーらしさ" を決めつけるなんてしたらいけない」の台詞に、ヨロコビも「良い思い出」と「良くない思い出」を選び、「ライリーらしさ」を勝手に作っていたことに気が付きます。
ヨロコビが作り出した「わたしはいい人」という「自分らしさの花」を壊し、「よくない思い出」が混ざった様々な信念から新しく生まれた「自分らしさの花」を感情たち全員が抱きしめるとライリーの過呼吸は収まります。
※重要①:感情たち作り出した思い出から信念ができ、自分らしさが出来上がり、感情たち全員がそのライリーらしさを "受け入れた" とき、ライリーは安心したように落ち着きました。
※重要②:感情たちは独立したキャラクターですが、あくまでライリーの内面を擬人化したものなので、どの感情たちも "ライリー自身" なのです。そのライリー自身が、自分らしさを "受け入れた" というシーンになってます。
今まで感情的に行動してしまっていたライリーが、自分自身を見つめ直し、友達に謝ることができました。「不安」や「心配」があってもいい、それも大切な感情でライリーの一部。
試合を再開したとき、そんなストレスから解放されたライリーはヨロコビを呼んだのでした。
★ テーマについて
感情たちが完璧な「ライリーらしさ」を作ろうとして暴走させてしまい、感情たちが作り出したすべての記憶と信念から作られた「ライリーらしさ」を感情たちが受け入れる話でした。
「自分自身を受け入れる」ってつまり何をすればいいのか?わかりやすい言葉に変換するなら「自分自身を許すこと」だと思います。
何をしてもうまく行かない、完璧にこなせない。そんな自分自身に怒っていませんか?自分自身を嫌っていませんか?そんな自分を許してあげてください。そんな自分を抱きしめてあげてください。
なぜ自分自身を受け入れること(自己受容)が必要なのか?
他者からの評価や期待、他者との比較から解放され、自分らしくいられるようになる
ストレスや不安が軽減され心が平穏になる
満足度が向上し、幸福感を感じやすくなる
敗しても前向きにとらえることで成長へと繋がる
他者も受け入れられるようになり人間関係が良好になる
そもそも、完璧な人や人生常にうまくいってる人なんてこの世に存在しないです。何かしら悩みがあったり辛いこともあります。気にするだけ無駄!!と言いきってしまいたいのですが、家庭環境や過去の経験、社会的な影響から自分自身を受け入れることが難しい方がたくさんいるのが現状です。
少しでもこの映画がたくさんの人へ届きますようにと願います。
🌈✨感想
大号泣でした、素晴らしい。
前作のマイエレメントがピクサー最高傑作と言っていたんですが、これまた"ピクサーらしさ全開"の素晴らしい作品すぎて参りました。
★ 内面を描いているインサイドヘッドの強み
ティーンエイジャーという悩みが多い時期に焦点を当てる、これこそインサイドヘッドが最も得意とするテーマではないでしょうか。
自分自身を受け入れるには、まず自分を理解すること。
感情をキャラクターに置き換え、経験や思い出、信念が視覚的に表現され、自我が形成される過程、隠したい秘密の存在、心理的な部分と、自分自身を詳細に分解して理解できるような仕組みになっている。
シンパイが大きなテレビ画面に映し出され、将来起こりうる「心配」要素をアニメーターに描かせているシーンでは、何が不安なのか?何が心配なのか?何が怖いのか?という、事柄を洗い出している。自分自身を知るためにそれも明確に把握する必要のある工程だと思います。
「大人になるとヨロコビが少なくなる」この台詞にはハッとさせられました。不安や心配があることは当たり前のことですが、この台詞は心にとめておきたいと思いました。
インサイドヘッドを見て、自分はどの感情がメインなのか、感情のコントロール、自分はどれぐらい自分自身を理解しているのか考えるキッカケをもらいました。考えるのも楽しい。
自分の内面を理解することはとても大切だと思います。
★ ピクサーらしさ
ピクサーらしさって何?と聞かれたらたくさん思い浮かびはしますが、私はこれまでジョンラセター監督が仕込んでいた特徴をピクサーらしさと捉えていました。
ジョンラセターが退社し仕込まれていた特徴が無くなくなり、改めて気がついたのは素晴らしいアイデアや作品が生まれる最高の環境が整ってる、その環境がこそがピクサーらしさを生み出してるんじゃないかと思いました。
社員たちの意見や体験を大切にし、その体験や想いを作品の中へしっかりと落とし込む。ここにとても強くこだわりのある会社です。
ジョンラセターが退社する前からもちろん感じていたことですが退社してからの方が、より "多様性な" 方々が前面に出てきて体験談が語られるようになったと強く感じています。SparkShorts含め。
インサイドヘッド2がまさにピクサーらしいと感じるのは、自分自身を大切にするというテーマそのものが、それぞれ監督が作品に落とし込む想いや体験談そのもののこと。それがピクサーが大切にしてる "思想" だと感じました。ピクサーは社員ひとりひとりを尊重し、多様性を受け入れ、それを語ろうとする環境が整っています。
こういうところがピクサー大好きです。
★ 物足りない?何故こんなにヒットしているのか?
私はピクサーらしい作品と思っているので大満足してますが、物語の展開が読みやすかったり、公式の宣伝や公開前の監督のインタビューでテーマについて言及されていたことから、物足りなさを感じてる人はいるようです。
世界興行収入ランキングを見ても上位10位は、迫力があったり、壮大な世界観だったり、スーパーヒーローものでアクションがカッコよかったり、テンションが上がるものが多いです。
ピクサーは壮大な物語というよりも監督の体験談が元ネタなので、基本的にすごく小さな話が多いです。インサイドアウト2は、合宿の数日間ライリーの心を描いてるだけなので、そういう意味でも物足りないと感じる人はいそうです。
これは自論ですが、映画においてノンフィクションであればあるほど、いつも目に見えてる光景なので目新しさがなく面白くないと感じやすいです。(なので実話でも映画化される時は少しのフィクションを混ぜて作るのです)
それでもピクサーは他の映画には真似できないアイディアを盛り込んだり、共感させることに特化した演出等、そういった部分で勝負してることが多いと思っております。インサイドアウト2も発想やアイディアの部分はピクサーだから作れた映画だと思います。
何故、こんなにヒットしているのか?
インサイドアウト2は人間であればだれでも共感できるテーマなので、普段から映画を好んで見ている層以外、一般の層に愛されたんだと思います。
ネットが復旧し、SNS等で人との関わりが増え、多様性も理解されつつありますが、まだまだ批判的な意見は多い状況にあります。自分自身を受け入れ愛すこと、そいうったテーマが現代に響いたのではないかと思います。
インサイドアウト2がそこまで響いていないのであれば、既に自分自身を愛せている証拠かもしれません。それならむしろ良いことです!
あとは、続編は新規作品より見に行く人が多いのも一つの理由だと思います。前作のマイエレメントも世界的に好評だったので、今回も期待して映画館へ足を運んでいる人も多いのでしょう。
★ 背景に埋め込まれた表情
ピクサー作品は背景の表現がすごく好きなのですがインサイドヘッド2も背景に注目すると面白かったです。
合宿中は、ライリーはオレンジ色のユニホームになるので「シンパイ」の色になります。また練習している会場の椅子の色もオレンジでした。画面隅々までオレンジ色が広がるのです。
🌈✨最後に
前作も大好きだったんですが、今作でますますインサイドヘッドやピクサーが大好きになりました。やっぱりピクサーっていいですね。
同じ生きることがテーマのソウルフルワールドと合わせて大好きな映画でした。ソウルフルワールドもnote書いておりますので、もしよければ読んでやってください。
長い記事になってしまいましたが、読んでくださりありがとうございました。それではまた~
良かったら他の記事もよろしくお願いします。
以下インサイドヘッドに関する記事をまとめてます。