雛子

はじめまして。 純文学(と思っている)小説、短歌の投稿をしていきたいです! 初心者な上、ITに弱いためnoteが使いこなせるか自信がありません笑。 好きな作家…谷崎潤一郎、三島由紀夫、太宰治、佐々木丸美、小池真理子、山本文緒、石田衣良 好きな画家…マグリット、ダリ

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はじめまして。 純文学(と思っている)小説、短歌の投稿をしていきたいです! 初心者な上、ITに弱いためnoteが使いこなせるか自信がありません笑。 好きな作家…谷崎潤一郎、三島由紀夫、太宰治、佐々木丸美、小池真理子、山本文緒、石田衣良 好きな画家…マグリット、ダリ

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ご祝儀 10 〜わたし以外のオンナは死んで〜 【10話完結】

 トイレを済ませ、鏡の前に立ち化粧ポーチを出した。華やかだが悪目立ちしないようにと美容師に注文しまとめてもらった髪は全く崩れていない。鼻とその周りに油が浮いている。ティッシュで優しく押さえた。振り袖に負けないよう多少濃いめの方が映えますよ、と美容師に勧められたことを思い出し、汗でにじんだアイラインを強めに引き直した。口紅は普段つけない深紅のものだ。派手な気がして落ち着かないが、姿見で全身を映してみるとなじんでいた。はたちの時のような弾ける若さはないが、その分色香と呼ばれるもの

    • ご祝儀 9 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

      「あのさ、さっきから思ってたんだけど、それ、もしかして……」  千賀はあかねの鎖骨の辺りに視線を泳がせた。 「俺が、プレゼントしたやつ?」  あかねは無言で頷いた。細い金の鎖には、ピンクトルマリンが光るハートのモチーフがついている。 「つけているとこ、初めて見た」  彼は顔をくしゃくしゃにして笑った。   おととしのバレンタイン、気まぐれにチョコレートをあげた。駅ビルで買った千円にも満たないものだ。千賀は目を輝かせて喜び、ホワイトデーにはこのネックレスが返ってきた。デパートの

      • ご祝儀 8 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

        「じゃあ、千賀の結婚に乾杯!」  千賀の先輩が高らかにジョッキを掲げた。 「乾杯!」  皆がそれに続いた。会社から少し歩いたところにある宮益坂のダイニングバーで、千賀ら親会社の男たちと、あかね、聡子、麻紀の八人で集まっていた。前祝いを兼ねての飲み会だ。 「ついに来週だな」  千賀の同期の男はビールを飲むと、陽気に千賀の肩を叩いた。 「いつ入籍するの?」    聡子がきゅうりをバーニャカウダのソースにつけながら、さして興味が無さそうに千賀に尋ねた。 「式の前日だよ」

        • ご祝儀  7 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

           退社時間に近づく頃、ユナからラインがきた。渋谷で買い物をしているのでお茶しないかとの誘いだった。ITベンチャーを退職して週三日のパートを始めた彼女は暇をもてあましているらしい。あまり気が乗らなかったが、少しだけならと返信した。その後指定された駅前のオーガニックカフェに向かった。彼女はソファ席に座っている。隣にはインテリアショップの紙袋が並んでいた。あかねは席につき、ブレンドされたハーブティーを頼んだ。 「あかねちゃん、二次会も出てくれるかと思ったのにな。会社の人たち、あかね

        • ご祝儀 10 〜わたし以外のオンナは死んで〜 【10話完結】

        • ご祝儀 9 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

        • ご祝儀 8 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

        • ご祝儀  7 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

          ご祝儀 6 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

           数日後に届いたクレジットカードの請求額を見て、あかねは靴を履いたまま狭い玄関に座り込んだ。七月の終わり頃に、夏のセールでバッグやら服やらを買ったことをすっかり忘れていた。また再来週結婚式に出なくてはならないのに、一体どうしたらよいのだろう。貯金など当然ない。実家の親に頼めば渋々くれるかも知れないが、今まで何度も借りているし、そんなに苦しいなら実家に戻れと言われかねない。会社に隠れて一時的にバイトでもしようか……。のろのろと立ち上がると膝から封書が二通こぼれ落ちた。明細書と一

          ご祝儀 6 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

          ご祝儀 5 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

           新郎新婦がキャンドルサービスでそれぞれの席を回っている。 「久しぶりね」「ほんと」「元気してた?」「新しいヨガ教室通い出したわ」「私も行きたいなー」フリルが全面にあしらわれた水色のドレス姿の新婦を申しわけ程度にスマホカメラで撮影し、あかねたちの席は話に花を咲かせていた。 「みんな今日はありがとー」  新郎新婦が近づいてきた。清楚なデザインのドレスは彼女にはあまり似合っていなかった。会社の先輩だという新郎は、背が高いだけでこれと言って特徴のない顔をしている。「ユナちゃんおめで

          ご祝儀 5 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

          ご祝儀 4 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

           今日も朝から忙しかった。珠理奈はいつも通りネットに夢中になっていた。あかねは斜め向かいに座っている聡子を見た。彼女は目で合図を送るとパソコン越しに片手で珠理奈に書類を差し出した。 「ねえ、手が空いてるならこれ処理してくれない?」  声が尖っているのは夕刻の疲れだけではないだろう。 「はぁーい」  彼女は画面から目を離さず高い声で答えると、面倒くさそうに書類を受け取った。わざとなのか元々なのかよくわからないが、いわゆるアニメ声である。質の悪い水飴のように甘くて粘ついた声。前職

          ご祝儀 4 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

          【連載小説】ご祝儀  〜わたし以外のオンナは死んで〜 

          #私の作品紹介 はじめまして!雛子と申します。 長編小説を小分けにして毎日投稿したいと思います。 あらすじ 「28歳のOLのあかねは、美しく華やかな見た目とはうらはらに都内でギリギリの生活を送ってる。周りは結婚ラッシュで、近々後輩の量産型マウント女とヨガ仲間の下半身が緩い女の結婚式と披露宴にしがらみで参加する予定だ。だが、ご祝儀やらパーティードレスやらヘアセットやらにかかる費用を捻出できそうにない。かと言って、みすぼらしい服装で出席したくもない。あかねは葛藤しながらも費

          【連載小説】ご祝儀  〜わたし以外のオンナは死んで〜 

          ご祝儀 3 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

           二時間残業をし、急いで山手線に乗り新宿で降りた。汗でブラウスが湿っていた。西口を出て大ガードを直進する。あかねはスマホの画面に指を滑らせ地図を開く。小滝橋通りをしばらく歩き左折したところにその看板が見えた。かなり古くて暗い雰囲気のマンションである。躊躇しながら進むと入り口に「ここで小便をしないでください」と破れた紙が貼ってある。薄汚れた赤いトレーナーに目の覚めるような水色のズボンを履いたアジア系の女が、スマホに向かって甲高い声でまくし立てていた。無数のポストから大量のチラシ

          ご祝儀 3 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

          ご祝儀 2 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

           翌朝あかねが会社のトイレで化粧を直していると、背後から甘ったるいバニラのにおいがした。 「おはようございまぁす」  振り返る前から声の主はわかっていた。 「おはよう」  うなじの半分くらいまでかかる髪に熱がこもり、その部分を持ち上げタオルを当て汗をぬぐった。 「月曜日ってだるいですよねー」  藤堂珠理奈は隣に立つと、ヘアアイロンのコードを壁のコンセントに差し込んだ。熱くなるまで待ちながら、彼女はあかねの薄くストライプが入ったブラウスや、手首に巻かれた細いブレスレ

          ご祝儀 2 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

          ご祝儀 1 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】

           その男はあかねに三万円という値段をつけた。  渋谷のスクランブル交差点で青信号に変わるのを待っていると、茶髪にアロハシャツの、三十代後半くらいのいかにも怪しげな男が話しかけてきた。「めっちゃ、美人。可愛い。タイプなんだけど」信号が変わって歩き出してもしつこくついてくる。水商売のスカウトかと思ったらそうではないらしい。三万円払うからお願いと懇願され、あかねは振り切って走り出した。  待ち合わせの居酒屋で菜々はすでに飲んでいた。あかねは席につくなり、先日別れたばかりの男の話を

          ご祝儀 1 〜わたし以外のオンナは死んで〜【連載小説】