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電話の会話録音からわかった 高齢者詐欺の手口

「2023年を振り返る2 “押し買い”の被害の次は怪しい親戚出現?高齢者を狙う犯罪が多すぎる!!」のその後です。)

 私の母は2019年に認知症とわかり、2022年5月には要介護2となりましたが、介護サービスをフル活用して一人暮らしを続けています。
 2023年3~4月頃に、母は“押し買い”に遭い、貴金属を盗まれましたが、貴重品箱に貴金属が無いのは、しまう場所をまた変更したからだろう、と勝手に思い込み、私は被害に気づくのが遅れました。
 2023年12月には、20年以上連絡をとってなかった自称“母の従弟”から連絡があり、明日迎えに行くと母と約束、新しい記憶を保持できない母はどこに連れていかれるかもわかっていませんでした。デイサービスで母を預かってもらい、遭わないように手配しました。 

 押し買いの被害に遭った頃には、不審な電話がかかってきており、その電話を私がとったにもかかわらず、未然に防ぐことができなかったことを今でも後悔しています。高齢者を狙った詐欺は、まずは電話で連絡があり、電話から得た情報をもとに狙ってくる、というのが被害に遭ってみて、よくわかりました。
 警察からは固定電話の番号が犯罪集団に流れているので、固定電話をやめ、携帯電話にし、指定された人からの電話のみ着信できるようにしてはどうか、とアドバイスがありましたが、新しい機器の操作方法を覚え、母が対応するのは無理。また固定電話にはデイサービス、宅配弁当のスタッフ等の個人の携帯電話から連絡をもらうこともあり、お世話になっている方々の電話をすべて受信指定するのは困難です。

 このような状況の中、2024年1月からNTTの「特殊詐欺対策サービス」を利用し、受信・着信の電話の会話すべてを確認できるようにしました。サービス開始の2,3日後に早速怪しい着信があり、会話を再生。会話はこんな感じでした。(○○は母の姓名、△△は怪しい業者の氏名)

怪しい業者(以後「怪」):
「○○さん、お久しぶりです。1年前に○○さんのお宅に営業に伺った△△です。玄関先で〇〇さんとお話しました。あの時はお話を聞いてくれてありがとうございました。覚えてますか?(若い男性)」
母:「覚えてないわ。」
怪:「訪問した時に僕は新入社員で、それを話したら〇〇さん、大変だけど頑張ってね、って励ましてくれたんですよ。」
母:「あら、そうなの。(まんざらでもない様子。母は信用してしまっている。)」
怪:「あの後異動になって、先月またこちらに戻ってきたんです。」
母:「そうなのね。」
怪:「〇〇さんは日中はご自宅にいらっしゃるんですか?」
母:「週に3回は、デイサービスに行っているわよ。(実際は4回)」
怪:「ご主人は?」
母:「ずいぶん昔に亡くなったわ。」
怪:「お一人暮らしなんですか?」
母:「そうよ。娘が週に1回くらい来るけど。」
怪:「お嬢さんがいらっしゃるんですね。」
母:「そう」
怪:「お一人で頑張っていらっしゃるんですね。」
母:「(自慢げに)一人で何でもやってるのよ。」
怪:「今度うかがいますね。よろしくお願いします。」

 怪しい業者は若い男で、始終明るく、会話は馴れ馴れしいですが、母にとっては親近感が持てる、ほど良い加減。質問されるがままに、一人暮らしであること、家族は週1回訪れていること等々を巧みに聞き出すと、明るく爽やかに会話を切り上げ、電話は終了。
 この電話は050発信(IP電話)で、2時間前に別の050発信の電話がかかってきており、それは留守電にメッセージが入っていませんでした。母を狙って何度かかけてきていたようです。

 この会話を聞き、怪しい奴の質問にほいほいと個人情報をしゃべりまくる母に、私は怒りを抑えることができませんでした…。一緒に会話を聞いた母は、「この声は私じゃない」と言い出す始末。
 私は母に「怪しい奴にのせられて何しゃべってんのよ!一人暮らしとか、娘が週1回来るとか、なんで話すのよ!犯罪者に襲ってくれ、って言ってるようなもんじゃん!私が犯罪に遭わないように、いろいろやってるのに、のせられてベラベラしゃべって、犯罪を自分で招いてるじゃん!勘弁してよ!」、怒りが爆発しました。
 認知症患者にこんな怒りをぶつけちゃいけないんですよ…、でもね母が情けなくて…、病気だから仕方ないのですが(涙)。

 この電話の数日後に、別の会社名の「古物買取」の別の男が、実家を訪ねていたようで、名刺がリビングにありました。母はこれもまったく覚えていません。警察に知らない人が来たら、絶対に玄関のドアを開けないように、言われましたがいつものとおり、ドアを開けて対応したようです。実家にあった価値のありそうな貴金属類は私の家に移したので、あらためて被害があったか調べることはしませんでした。

 怪しい電話の電話番号をネットで検索すると、同じようなシナリオ(過去に玄関先で営業、新入社員等の設定)で若い女性から電話があったと書き込みがあり、怪しい営業と指摘する人多数。犯罪集団のマニュアルに沿ってかけてきた電話であることは、間違いないようです。失礼な電話に苦情の連絡をしたら、その後しつこくいたずら電話がかかってきた、と書き込んでいる人もおり、かなりタチの悪い集団のようです。
 電話番号は早速着信拒否にし、他にもあった050発信の電話もすべて着信拒否にしました。

 NTT「特殊詐欺対策サービス」を受けなくても、ナンバーディスプレイ対応の電話機であれば、受信・着信の会話を録音・再生できるものは多く、着信拒否対応もできます。
 母は怪しい業者に家のリフォームやエアコンクリーニングを発注したこともあるので、発信の会話も確認できるようになったのは助かります。身体は元気なので、まだまだ想定外のことを母はしでかします。事情がわからないまま、私がその尻拭いをしないとならなくなるのは恐怖でした。少し安心材料が増えました。

 実家を出る時、母は怒られたことはすっかり忘れ、「今日はありがとうね」と私を見送りました。


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