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「地方から女性がいなくなる」をリアルに感じる私の過去と今

祖母が亡くなり、田舎の価値観が令和でも健在と知る

先日、父方の98歳の祖母が亡くなった。
まるで限界集落を思わせるような過疎地で電車で6時間、高速バスでも4〜5時間はかかる場所で子ども2人連れて行く、あるいは置いて出向くのも厳しく参列を諦めることにした。

98歳という高齢のため同年代の親戚や知人も亡くなっており、下の世代の参列者も近くて日帰りで来られる人以外は来なくて良いと断りこじんまりと執り行ったと聞いた。

父は長男で母は長男の嫁なわけだが、母から後日、長年母の介護をしていた父と母をサポートもしなかったような親戚があれこれ口を出して文句ばかりでうんざりしてしまった話を聞いた。

(幼い頃同居もした直系の孫である私が出向かなかったこともチクチク言われたかもね、ううっ…ごめん母。涙)

田舎特有の価値観や、嫁という存在への蔑視、村社会のしがらみ、家族の中の上下関係…

私が「絶対、この地に根を下ろすことはない」と意思を固めた理由の全てが、まだまだ息づいているリアルを感じる。

時代遅れな地方から女性がいなくなる

じきに100に届きそうな婆、その娘たちでさえ70付近の老年。その子達も中年なのに、「女は男より下」「家族を他人に任せるのはあり得ない」「女は男を引き立てるもの」「男は家族を養うもの」そうした価値観を上の世代が下の世代へと力強く垂れ流すとは。

田舎では「家」とか「血」のもたらすネットワークが強く、価値観も保持されがちなのかもしれない。

私は、最近放映された番組を思い出した。

「地方から女性たちが去っていく」…強烈なインパクトを持つタイトルの番組だ。

何を今更。そもそも地方から女性が去っていくのは感覚的に当然と子どもの頃から思っていた。私の子ども時代を過ごした自治体は全国より10年ほど進んで2000年頃から人口減少に転じている。

私自身が地方出身で、大学から一人暮らしで今や都内で生活をする当人だからよく分かる。

番組をリアルタイムでは見られなかったが、上のリンクから概要を読むと、そりゃそうだと頷く内容が連なっている。

つまり、地方から女性がいなくなるのは、仕事がないから、女性は子どもを産む役割しか期待されていないから、などと語られていたように見受けられた。それらは私が大学進学を機に家を出る高校卒業まで感じたこととかなり重なっている。

地方で私が感じた「自分の居場所はない」感

小学生の頃は、長男の嫁としての母の苦労話や愚痴を聞かされ、父の実家(かなり田舎)の不便さやその土地の人々の男尊女卑の話をナチュラルに聞かされた(聞かせている方は意地悪を言っているつもりはない)。自分が女で損だと思い始める。

中学生にもなれば地元では大学進学も就職も危ういと気づく。大学を出て職に就くとなれば医学部から医師になるとか、教職を取り先生になるとかしかなさそうに見えた。でも、そのような職に就くことは結婚をさらに困難にしそうに思えた。

それに高校生になると地元の進学校に進むが「女の子なら勉強より家の手伝いを」「勉強できても女の子は仕方ない」「あまり良い大学に行くと結婚相手が見つからない」などと大人たちには揶揄され、父親さえもせめて地元の大学ではだめなのかと繰り返し言うのでかえって「絶対、県外へ出よう」と覆せぬ意思が芽生えた。同時に、大学を出たら働く場は地元にはないとますます身に染みて思うようになる。

大学生のとき母方の祖母が亡くなった。親戚が集まると女の人たちは集まって台所でいそいそと働き、男性は畳の部屋に集まって語らっている。そこに弟もいる。

「風呂は男の人が先」「旦那衆のお茶の番」女たちは男たちのためにせっせと立ち働く。

就職すれば「結婚はいつか」と詰められる、あるいは陰で「大学なんか出ても孫の顔を見せられないとは」と貶められる。例え結婚することがあっても、この地に結婚相手となる男性は存在しないだろうなと強く思う。

育つ過程で地元に将来私の居場所はないと確信し続けた。

⚠️あくまで私の体験した話です。同じ土地でも、よその家庭や別の人はまた全く異なる可能性があります。

地元の同級生たちの行方

幼い頃住んだ父の実家は冒頭の通り、都内から半日かかって行く場所だ。コンビニすら車の距離。保育園まで1.5km、丘の上にある小学校までも1.5kmあったが歩いて通った。

オーソドックスな進路としては、女の子は地元で高卒あるいは短大で働き若くして子を設ける。進学とともに県外へ出る人はいるとは思うが、地元の人同士結婚しても都市部へ移る人もいる。女性の職業は、非正規やケア労働が多そうなイメージだった。(企業そのものがほとんどない)

その後引っ越したのは、地方でそこそこ人の集まる都市。県外に出ても地元で就職する人もちらほらいる。進学先は大学がほとんで専門学校がまれに混じるイメージ。都内へも特急でアクセスできて、中小企業もまだある方だからか、女性の職業は、会社員に、医師や看護師、公務員、教師に加えケア労働でも専門職が増えるイメージ。

ただし、大学進学を機に地元を離れる人も多いし、進学先が有名大学になる程地元に戻らない印象。

あれれ、都市に行くほど学歴が上がり、学歴が上がるほど地元に残らないのでは???大きな都市にしか、男女問わず活躍できそうな就職先がないから致し方ないように思う。

⚠️あくまで私の身の回りの動向からの想像です。実際は違うかも?

地方の男性たちも生きづらい?

女性が被害者であるかのように語ってしまったが、ひょっとすると男性たちも一言言いたい、かもしれない。

実は私の弟も家庭を築いていないし、いとこの男性たちを見ても未婚の人が多い。本人だけの問題ではない、と感じてしまう。

恋人ができて親に紹介しても、「嫁」の役割が期待されて相手が引いてしまう、実家の場所が田舎すぎて引いてしまう、田舎の価値観をどことなく引きずっている男性は結婚するには気が重いと感じられてしまうなどなど。

女性と同じように地方の男性もハンデを抱えていると考えられなくもない。

地元に戻る人たちは地元に居場所がある人かも

さはいえ、地元に戻る人もいる。

そういう人たちは、「地元が好き」「ここで子育てしたい」「親のそばにいたい」などとポジティブに地元を捉えている可能性が高い。

地元に幸せな過去があり、あるいは居場所があり、将来もその恩恵に授かりたいと思えるのだろう。加えて、家業を継ぐとか、土地も家もあるからとか、親や友達といたいからとか、地元に戻るモチベーションがあるのだろう。

そういうのもまた、いいなと思う。
私にはなかったから。

過去のこと、未来のこと

祖父母の生きた時代とは、戦中戦後。
父方の祖父はシベリア抑留を生き抜いた男。
母方の祖父はフィリピンから帰還した。その義兄は戦死している。男がお国のために命を捨て女は男の帰りを待つしかなかった。

その世代の人が生きている以上、簡単に女が男と対等とはいかない。

戦後は男の戦う場所が戦地から職場に変わっただけで女は家を守る係は変わらない。

その時代を生きた人たちのあらゆる言動はそういうものだと思うしかないし、その影響を受けて共に生きている子世代の価値観もまたそう簡単に変わらないだろう。

男が上で女は下、は過去のことのようでいて、まだ続いている。

だから私はその声が届かない場所に逃げてきてしまった。

上の世代には逃げることすらできない人もいた。

自分の子どもたちには、男女という枠に限らず「決めつけ」を廃して、自分のことを自分で決める力を持ってほしいと思う。

ある意味地方に見切りをつけ都心へ出てくる女性が増えたように、今後はひょっとして日本に見切りをつけて海外へ渡る人も増えるかもしれない。それは男女問わずだが。

自分の未来を自分で決める力が問われそうだ。

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