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【鑑賞】三つの“日の出”―「没後50年 福田平八郎」@大阪中之島美術館②―

*「没後50年 福田平八郎」展は、大分県立美術館で7/15まで開催中です。


こんばんは。
公認心理師×心理カウンセラーのまさこです。

前回の続きです。

作品数が多く、とても見応えのあった本展。
最後に、最も心に残った三つの「日の出」について…


宇佐神宮に奉納された《日の出》

この作品を描くために、作者は連日、日の出をスケッチしたそうです。
「全く心を奪われる美しい日の出」に出会えたのは、ほんの一瞬。

出来上がった作品は、黄色の地に朱赤の太陽が大きく描かれている。
ただ、それだけ。
もちろん単純な“日の丸”ではなく、
太陽の位置は中心より右、心持ち下にずらされていますが。

素人考えで叱られそうですが、
正直そこまでしなくても描けたんじゃないかな?
と思ってしまうぐらいのシンプルな画面です。
それなのに不思議と惹きつけられ、絵の前を去ることができません。

これだけを描くために、連日早起きしてスケッチに出かけ、
一瞬で消えてしまう美しい色を「頭の中にしまっておいた」という作者。
そのひたむきさ、純粋さ、写実に徹する心…
それが作品に宿っているから、
こんなにも強いエネルギーで人を惹きつける、美が生まれるんだろうな…
と、深く心に染み込みました。


画帖のなかの《日の出》

“写生狂”平八郎の本領発揮。
水平線から昇ってきた太陽が、空と海を染め上げています。

本格的な作品ではなく、あくまでも写生なのに美しすぎて。
芸術家の凄みを、まざまざと感じさせられました。
もしかしたら、これが全作品の中で一番心に残ったかもしれません。


日の出前の《日の出》

これから昇ってくる太陽が、海の中に描かれています。
さすがの着想。
太陽に照らされて、海の中も、ほの明るく…
朱、橙、紫…さまざまに混じり合った色彩が本当に美しく、
静かな海の中に座っているような、おだやかな気持ちになりました。


代表作《漣》をはじめ、おだやかさ、清らかさ、やすらぎに満ちた福田平八郎の世界。
大分で開催中の回顧展のほか、京都国立近代美術館にも多くのコレクションがあります

観る人の心をそっと吸い込んで、やすらがせてくれる珠玉の作品たち。
お近くにお越しの際には、どうぞ彼の作品に出会われてみてください。



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