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いぬの介護日記7

我が家には御年18歳になる老犬がいる。頭も体もヨレヨレだけれど、よく食べ、よく怒り、よく眠る。あとよく出す。健やかなるお犬さんである。


ここ最近、なかなかお犬さんのことを書けていなかった。忙しかったのもあったけれど、とにかく介護レベルがまたアップしたから。ほんの数日前までできていたことができなくなっている。


先日の事件は、深夜三時に起こった。
その日は、母親が犬の夜番で付き添って寝ていた。自室で寝ていたわたしは、絶叫にて起床。慌てて駆けつける。目の前に広がるのは、しゃがむ犬、祈るように手を差し伸べる母親。もはや宗教画の世界。聞けば、寝ぼけていたところにおしっこタイムが始まったとのことで、母親は無意識に手で受け止めようとしたらしい。いっそ清々しい気持ちで、顔をあわせてなはははと笑う。

でもこの時は、知らなかった。次の標的が自分になるなんて。
その日は、昼番だった。昼番となると、日がな一日、お犬さんと共に過ごすことになる。コーヒーを淹れ、作業をし始めた時だった。お犬さんがどっこいと立ち上がったかと思うと、なんとも滑らかな動作でしゃがみ、そのままおしっこをなさりはじめた。咄嗟にペットシーツを掴み、お犬さんのおしりの下に滑り込ませる。悲しいかな、わたしの努力が虚しく終わったことは、自分の手がキラキラと濡れているのを見て理解した。そのまま粛々とシーツと共に受け止める。しばらくすると、お犬さんは、晴れやかなご尊顔でキッチンへお歩きになられていった。

残ったのは、濡れた手と、ペットシーツ。そして、濡れた毛布と床。粛々と片づけを進める。洗濯機に放り込み、床を拭く。ようやく掃除を終え、すこし休んでいたところだった。いつのまにかキッチンから戻られたお犬さんは、座る場所を探してウロウロしている。もうどこでも座ってくれ、そんな気持ちでその様子を眺めていた。お犬さんの動きが止まり、ドカッと座った。その瞬間、お犬さんのおしりからペシャッとおしっこが飛び出した。今取り替えたばかりの床と毛布の上に。思わず、椅子から転がり落ち、床に伏す。「なんでえええ、今取り替えたばっかああああ」。椅子から転げ落ちるというのは、本当にあるらしい。もうなんだかおもしろくてたまらなかった。またもお取替えタイムである。くたびれたであろう洗濯機に「また頑張って」と、洗剤を投入し、スイッチを入れる。

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