読書記録「きりこについて」
西加奈子さんの「きりこについて」を読みました。
なんだか、明るいような、切ないような小説で
久ぶりに心臓をぐっと掴まれた気がしました
「きりこはぶすである・・・」から始まるこの話は
黒猫ラムセス2世が語るきりこの数奇な人生の
話である。
赤ちゃんの頃からぶすだったきりこは、
パァパとマァマには可愛い、可愛いと言われて育ち、
自己肯定感も東京タワーなみに高く、
小学5年生で初恋の男の子から、
「ぶす」と言われるまで
自分がぶすであることを自覚せずに育つ。
小説の中できりこが、可愛いと言われている同級生と
自分の容姿を比較して、自分が何故「ぶす」
なのか自覚するという場面の描写と発想に圧倒された。
女性の美醜と心の部分に大きく焦点が
充てられた作品だと思う。
むしろ、この部分に私は痺れまくっている。
バランスの取れた容姿と心を持つ
女の子は一人も登場しない。
猫と話せてもぶすだったり、美しくてヤリマンでも
レイプで心に傷を負ったり、幸せな結婚をしたはずなのに
怪しい宗教の熱心な信者になってしまったり、
踏んだり蹴ったりな女性達が沢山登場している。
みんな、どこか偏っているけど、年齢を重ねて、傷ついて、
誰かに助けられているうちに自分が何者であるか、
自覚できるようになる。
こんな人間達の姿を猫の視点と嗅覚と時間軸で
語られるものだから、ページを捲る手を止められ
ない。