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子どもたちの変化を考える その12

コロナ禍における子どもたちの変化を書いてきた。しかし実態は分かりにくい。コロナ禍と様々な改革が同時に起こったからだ。私は愛知県の尾張地域に住んでいるので、地域限定の変更も含めて以下列記していく。定員割れ欄の数字は私の塾から距離が近い公立高校15校のうち、定員割れした学校数を示す。

【2020年度】
・コロナ休校(4~5月)
・小学校で探求学習スタート
・運動会が午前のみに→2024年度も継続中
・プール授業の中止(2021年まで)
・学芸会の廃止→現在も継続中
・通知表から遅刻・早退の欄が無くなる
・私立高校の減免制度が拡充される
・初めての共通テストが行われる
・定員割れ(5校217名分)

【2021年度】
・中学校で探求学習スタート
・通学時に体操服でもOKになる
・定員割れ(6校218名分)※偏差値50以上の高校1校を含む

【2022年度】
・高校で探求学習スタート
・卒業生の半数が大学進学を一般入試以外で決める
・愛知県の公立高校の受験回数が2回→1回、実施時期が3月中旬→2月下旬、面接試験が無くなり100%マークシートの試験となる
・置き勉制度が本格的に始まる
・中学の部活動が土日のいずれか、平日は1日が必ず休みとなる
・中学の部活動が全員参加ではなくなる
・小中学校の一部が宿題を廃止する
・小学校の運動会から選抜リレーが無くなるケース相次ぐ
・プール授業の外部化始まる
・学校からのお便りがほとんどアプリになる
・皆勤賞の廃止
・定員割れ(6校267名分)※偏差値50以上の高校2校を含む

【2023年度】
・卒業生の7割が大学進学を一般入試以外で決める
・自由進度学習という取り組みがいくつかの小学で始まる
・理科の実験が減少される(硫化水素やアンモニアなどの事故の影響)
・ラーケーション制度の導入(1年間に3日まで自由に休める制度)
・小学校の下校時間が20分ほど早くなる(教員の働き方改革)
・中学校の土曜の行事が減る(クラブチームに所属する生徒の増加)
・定員割れ(7校170名分)※偏差値50以上の高校2校を含む

【2024年度】
・中学の部活動の平日の休みが2日となる
・荒天時の登校見合わせ、前倒しの下校が増える(7月1日現在3回、大雨注意報はいずれも発令されない状態で)
・小学校で自己決定課題という宿題制度を導入するケースが増加
・席替えを生徒たちに自由にさせる、日替りで好きな席に座れる中学の増加

これは子どもを通わす当事者として相当の変化である。長男が小学校に入学した2017年当時はまだ私が思い描く「小学校」の側面が強かった。例えば低学年であれば本読みや計算カードがきちんとできないとダメという雰囲気が残っていた。しかしコロナ禍と同時に探求学習が導入されてどうも色々なタガが外れてしまった。教員の働き方改革の時期も重なって、ご覧のように学校はどんどん低負担、低圧力、低活動になっている。

そこに高校入試の易化が重なってくる。定員割れが常態化しているので制度上は内申がオール1で当日点が0点でも近所の公立高校に行ける。定員割れをしているのは教育困難校だけではない、この春に浪人生であるが東京大学を輩出した高校でさえ5年で3回の定員割れを起こしている。子どもの減少傾向ぶりが穏やかな愛知県北部でもこの惨状なのである。

なぜこんな現象が起こるかといえば皆が「楽をしたい」からだ。楽をしたいのは古今東西そうかもしれないが、現代のソレが異質なのは保護者が子どもの勉強や進路にも楽を望む点である。私立高校に入るのは公立高校よりも1か月早く合格が決定する。それでいて系列の大学やその他の大学に推薦や総合型を利用して何とか入れてくれようとする。公立高校の多くは学力を鍛えて一般入試で大学受験することを勧める。しかし今は大学がどんどん総合型の枠を増やして一般入試の枠を減らしている。また共通テストの負担が半端なくなっている。今年度からはさらに「情報」も増えて更に受験生は大変になっている。
これらを勘案すると私立高校の進学がローリスクミドルリターン、公立高校の進学がハイリスクローリターン状態になっている。真のトップ層しか今の公立高校は合わないのである。しかし真のトップ層を小中で生み出す土壌が無くなってチグハグなことになっているのだ。

以下はある尾張地区の公立高校と私立高校の進路実績を示す。この春の進路実績は以下のようになった。
【愛知県立A高校(偏差値53、内申点31)】
国公立大学 37名
早慶上理 0名
GMARCH 0名
関関同立 6名
【私立B高校(偏差値46‐58、内申点29)】
国公立大学 38名
早慶上理 9名
GMARCH 16名
関関同立 15名

国公立大学の合格がほぼ同数だったので比較対象にさせてもらった。こんな感じで私立高校の方が柔軟な進路指導をするので私大の実績が大きく変わってくる。これがA高校よりもB高校の生徒の方が努力しているのであれば道理が立つ。しかしどちらの学校も見てみると、A高校の子たちの方が勉強しているし行事はシンプルに行われているし、反対に修学旅行の豪華さはB高校が上である。実際の学力も高いのである。しかし現状のルールだとこのような結果になってしまうのだ。これだと真面目に勉強しようとする空気が地域に生まれにくい。何とかうまく乗り切ってやろう、ハックしてやろうとする空気が醸成されてしまう。

とにかく近年は教育制度が矢継ぎ早にどんどん変わっている。その大半が子どもの能力を低下させる方の変化である。そして低下しながらも「できるだけ楽に大きな成果を享受する」道を当然選びたがる。しかもその道が確かに存在する。というようなおかしなスパイラルに陥っている。次回「その13」でこのシリーズの最終回とする。今の子どもたちの恐るべき実態をいくつか書くことになる。しかしそうさせているのは今の社会だということを忘れてはいけないだろう。

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